身近な食べもの「ソバ」
毎年10月頃に「新そば」の季節を迎え、お蕎麦屋さんの店先にも「新そば」という文字を見かけるようになります。「ざる」や「せいろ」に盛られた「蕎麦」は見るのに、「蕎麦の実」や「蕎麦の花」はあまり目にする機会がありません。蕎麦の花が咲く季節、見頃はいつ頃なのか。また、蕎麦の花と実の特徴など、ここでご紹介させていただきます。
そばの花について
夏も終わりになろうかという季節。蕎麦の畑は、一面白いじゅうたんを広げたような光景になります。蕎麦の花の1つ1つはとても小さな白い花です。ですが、見頃を迎えた花が集まると、まわりの景色は一変します。その白い花には、蜂や蝶といった虫たちも集まってきます。花には芳しい香りや、甘い密がたっぷりとあるのでしょうか。先ずは、花の特徴から解説します。
花の特徴
これが蕎麦の花です。花と表現しましたが、正しくはガクになります。花経は6ミリほどしかありません。見頃を迎えた蕎麦畑では、スプレー状にたくさん咲きほこります。かすみ草の花を思い浮かべてみてください。蕎麦の花の見頃には畑一面が、まさにかすみ草のフラワーブーケのようになります。
花の色
蕎麦の花の色は白色が一般的です。ですが中には、赤い花を咲かせるそばもあるのです。赤そばと呼ばれている「高嶺ルビー」(”たかね・るびー”と読みます)。この種類が赤い花をつけます。ピンク色の小さな花は、寒くなれば寒くなるほど、花の色が濃い赤色に変わっていきます。
花の香り
蕎麦の花はどのような香りをしているかご存じですか?花姿から想像するに、甘くいい香りと想像する方が多いのではないでしょうか。ところが!蕎麦の花の香りを嗅いだことがある人の多くは、「臭い!」という感想を抱いてしまいます。例えるなら、畑にまく肥料。他にも、肥溜め・くさや・昔の汲み取り式のトイレの臭い…なんて表現される方もいます。可憐な花からは想像もつかない香りですよね。
そばの花言葉
チューリップ・バラ・コスモスなど、その花々には「花言葉」というものがあります。もちろん、「蕎麦の花」にも「花言葉」はあります。蕎麦の花言葉は、というと、とてもロマンチックなものです。
花言葉
蕎麦の花言葉には「なつかしい思い出」、「喜びと悲しみ」、「あなたを救う」という言葉があります。どの花言葉も、蕎麦の可憐で清楚な花姿にぴったりな花言葉だと思いませんか。11月1日の誕生花でもある、蕎麦の花。お誕生日のプレゼントとして贈ってみるのも、いいかもしれませんね。
そばの種類
ところで、蕎麦はタデ科ソバ属の一年草です。タデ科には800種類もの植物が属していますが、ほとんどが雑草で、食用として栽培されている蕎麦は珍しい植物のようです。種をまいてから、およそ30日で花が咲きます。さらに30日くらいで収穫時期を迎えます。種をまいてから収穫までは、およそ60日くらい。とても成長が早いことがわかりませんか?
普通種
私たち日本人が主に「蕎麦」といって食べている種類。それが、「普通種」になります。日本人のみならず、世界各国の人が食用として食べている種類になります。
ダッタン種
「韃靼種」。これで「ダッタンシュ」と読みます。主な栽培地は、シベリア・中央アジア・中国の西部・ヒマラヤです。このダッタン種は苦味がとても強いため、「苦そば」とも呼ばれています。生活習慣病の予防に効果があると言われている、「ルチン」が多く含まれています。
宿根種
漢方薬としても利用されている「宿根種」。「シュッコンシュ」と読みます。「普通種」「ダッタン種」とは違い、茎が太く、冬になっても土の中の根は枯れず、春にはまた芽を出します。また、「普通種」とは違い、種をまく必要がない種類です。
赤そばについて
蕎麦の花と言えば、先ほど紹介したように小さな白い花が特徴的ではあります。ですが、赤そばと呼ばれている種類もあるのです。真っ赤な花を咲かせる赤そば。その赤そばである「高嶺ルビー」についての紹介です。
高嶺ルビー
ヒマラヤ原産である、赤そば。標高3800メートルの地から、日本へ入って来ました。持ち込まれた当初の赤そばは、赤い花を咲かせることはありませんでした。日本の気候とヒマラヤの気候の違いが、大きな要因となり、その後改良に改良を重ね、赤い花を咲かせることに成功しました。それが「高嶺ルビー」です。2011年には、より赤い花を咲かせる「高嶺ルビー2011」が誕生しました。
そばの花の観賞地
きれいな蕎麦の花を見ることで、心は満たされるでしょう。けれども、おいしい蕎麦を食べて、お腹を満たすと、さらに花も楽しめるのではないでしょうか。そんな経験ができる、絶好の蕎麦の花の観賞地を花の見頃とともにご紹介します。
ちちぶ花見の里
埼玉県秩父市荒川にある「ちちぶ花見の里」。蕎麦の花の開花季節には、真っ白な花があふれんばかりに咲きほこります。水はけも良いことから、蕎麦の栽培がとても盛んな秩父市荒川。盆地の特徴である、朝・晩の一日の気温差であったり、周りの山により空気が乾燥していることなど、蕎麦の栽培にはとても適した土地であるといえます。
花の開花時期
「ちちぶ花見の里」の花の季節は、6月上旬~6月中旬頃と9月中旬~9月下旬頃の年2回です。どちらの開花時期も、蕎麦の花が美しく観賞できます。その美しい蕎麦の花を愛でながら食べる蕎麦は、花の季節ならではの楽しみの1つです。とても格別なものですよ。
赤そばの里
長野県上伊那郡箕輪町にある「赤そばの里」。毎年蕎麦の花の開花時期に合わせ、9月中旬頃から10月上旬頃にオープンしています。上記でも紹介した「高嶺ルビー」を見れる場所です!信州伊那高原の澄んだ空気の中、花の見頃には赤色の蕎麦の花が色鮮やかに風に揺れています。
花の開花時期
「赤そばの里」の花の見頃は、9月下旬~10月上旬くらいです。東京ドームほどもある広大な蕎麦の畑が真っ赤に染まり、一面赤じゅうたんのようになります。この時期には【赤そば花まつり】も催され、地元の農産物の販売や、通常の白い蕎麦の他に赤い蕎麦も食べられる、臨時のそば処もあります。
そばの実について
さいごに、蕎麦の実についてご紹介します。そばの実は栄養価も高く、近年ではダイエット効果の面でも注目されているんです。
そばの実とは
「蕎麦の実」とは、殻がついた状態のいわゆる「種」の状態のことをいいます。実から殻を脱穀し、挽いたものを「蕎麦粉」といいます。この蕎麦粉で打ち上げたものが「蕎麦」となります。
そばの実の特徴
蕎麦の実は、形に特徴があります。写真を見てもお分かり頂けるように、実は三角形をしています。昔は「物の角が尖っている」ことを「稜(ソバ)」といっていました。蕎麦の実には「稜(ソバ)」(角のことです)があります。そこから「ソバ」と呼ばれるようになりました。この「稜(ソバ)」と「麦(ムギ)」を合わせた言葉。「稜麦」で蕎麦のことを「ソバムギ」と呼んでいましたが、これは小麦などと区別するためでした。
そばの実の栄養
蕎麦の実には、たんぱく質がとても多く含まれています。このたんぱく質がとても極上のものなのです。名前は「レジスタントプロテイン」。体内の消化酵素でも分解されにくいたんぱく質です。このたんぱく質をもった食物はとても少なく、蕎麦の他には高野豆腐や酒かすに含まれています。その他にも、食物繊維やビタミンB群、そしてルチンも含まれているのです。この中でも注目したいのが、食物繊維とルチンです。
食物繊維
食物繊維には、水溶性のものと不溶性のものとあるのはご存知ですか?水溶性食物繊維といえば、わかめ・昆布・こんにゃくなどです。不溶性食物繊維といえば、豆類やきのこ類です。この水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を持ち合わせたのが、蕎麦なのです。蕎麦を食べることにより、便秘解消やデトックス効果が望めます。
ルチン
ルチンはポリフェノールの一種です。強い抗酸化作用を持ち、血管の強化や糖尿病や認知症の予防にも効果があります。また、ビタミンCの吸収を促進させ、お肌の老化予防にも効果があります。ルチンは1日に30g~50gの摂取がよいとされていますが、蕎麦には100gあたり10g~20gも含れています。お蕎麦屋さんでざるそば1枚を食べると、1日の摂取量がとれる計算になります。
ダイエット効果も!?そばの実の効果
たんぱく質の「レジスタントプロテイン」ですが、体内の消化酵素では分解されにくいため、小腸でコレステロールや分解されなかった脂を吸収し、体外に排出してくれます。これにより腸内環境は改善され、老廃物の除去といったデトックス効果があるのです。また、低GI食品としても注目さている蕎麦。血糖値の上昇がご飯や他の麺類などより少ないため、ダイエットに効果があると話題になっています。
気をつけて!!そばアレルギー
とても体にいいとご紹介した蕎麦ですが、そばアレルギーの方は摂取してはいけない食材です。アレルギーを持った人はもちろんですが、アレルギーのない人でも、蕎麦の実を触っている内に症状が出てしまう場合もあります。症状としては軽い頭痛から嘔吐など、重症となる場合もあります。過去に蕎麦を食べてこのような症状を起こした方は、アナフィラキシーショックを起こすこともありますので、そのような方は十分な注意が必要です。
まとめ
そばの花について理解を深められたでしょうか。すてきな花言葉があるのに、特徴的な香りを持つ花。白い花だけでなく、赤い花が咲く種類があること。昔からおいしく食べられてきた「蕎麦」ですが、おいしいだけではなく、たくさんの栄養効果もありましたね。
ぜひ、蕎麦の花の季節には、蕎麦どころの地を訪れて、実際に蕎麦の可憐な花と特徴的な花の香りを体験してみて下さい。そして、おいしいお蕎麦を食べてみて下さいね。
出典:BOTANICA