はじめに
セリ科と聞くと、どのような植物や野菜を思い浮かべるでしょうか。私たちが日ごろ食卓でよく目にするニンジンもセリ科の仲間になります。この記事ではそんなセリ科の植物や野菜の特徴をご紹介していきます。
セリ科植物の特徴
まずはセリ科植物全般に共通する特徴を説明していきましょう。セリ科に属する植物は、400属3700種もの種類が分類されています。セリ科の植物は、花の形や香りなど他の科の植物にはないポイントが存在します。
特徴①傘型の小さな花
真っすぐ空に向かって伸びた茎の先端に花を付けます。小さな白い花が複数ついた傘型の姿をしています。ガーデニングでも人気の「レースフラワー」もセリ科の仲間です。かわいらしい姿をしていることがよくわかります。
特徴②香りが強い
煮込み料理や魚料理などの匂い消しなどにも使われる、特徴的な香りを持つ「セロリ」もセリ科の仲間です。鍋料理やおひたしにも使われる「芹(せり)」もその名の通り、セリ科です。あの芹の特徴的な香りはセリ科ならではの香りといえるでしょう。後述しますが、その他にもハーブが多くセリ科に分類されています。
特徴③葉が向かい合ってつく
セリ科は葉の付き方も特徴的です。茎のある1点から2~3枚の葉がつきます。また、葉は細い針が集まったような形をしていて、こちらも大変特徴的な形をしています。コスモスの葉を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。ちなみにコスモスはキク科の植物になります。
代表的なセリ科の野菜
セリ科の野菜①ニンジン
植物分類 | セリ科ニンジン属 |
葉の形 | 針状・羽のような形 |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
冒頭でご説明したように、ニンジンもセリ科の仲間になります。育ててみるとよくわかりますが、葉の形と花の形がセリ科らしい姿をしています。現在、スーパーなどで「ニンジン」として出回っているもののほとんどは、「西洋ニンジン」といって西洋種のニンジンを日本で栽培しやすいように品種改良されたものとなります。
セリ科の野菜②セロリ
植物分類 | セリ科オランダミツバ属 |
葉の形 | 画像参照 |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
子どもの苦手な野菜の代表格とされるセロリですが、その嫌われてしまう原因のひとつがこの特徴的な香りでしょう。胸がスッキリするようなさわやかな香りが好きな人にはたまりません。そんなセロリもセリ科の仲間です。私たちが目にするセロリをそのまま育て続けると、やがてセリ科に特徴的な白い小さな傘型の花をつけます。
セリ科の野菜③ミツバ
植物分類 | セリ科ミツバ属 |
葉の形 | 画像参照 |
花の色・姿 | 白い小さな花が先端につく |
香りが強い、和食に使用されることの多い野菜といえば、ミツバを思い浮かべる方も多いことでしょう。お吸い物や鍋、おひたしなど、その上品な香りが和食に好まれます。葉の形は細く針のような形にはなっていませんが、イタリアンパセリなどの葉の形とよく似ています。
次ページでは、代表的なセリ科のハーブ、園芸草花、雑草についてご紹介します。
代表的なセリ科のハーブ
セリ科のハーブ①パクチー
植物分類 | セリ科コエンドロ属 |
葉の形 | 最初は針状・羽のような形がつくが、成長に伴いミツバに似た形の葉が出てくる |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
日本でのタイ料理、エスニックブームを受けて、すっかり定番のハーブとなったパクチーもセリ科の仲間です。中国では香草(ツァンツァイ)、タイ語ではパクチー、英語ではコリアンダーなどと呼ばれています。パクチーも他のセリ科植物同様、白い小さな花が集まった形で花をつけます。そのあとにできる種は「コリアンダーシード」といって、こちらもスパイスとして多用されます。
セリ科のハーブ②パセリ
植物分類 | セリ科オランダセリ属 |
葉の形 | イタリアンパセリ:三つ葉に似た形 カーリーパセリ:画像参照 |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
リゾットやパスタ、スープなどに一振りするだけで食欲をさそう香りが広まる「パセリ」もセリ科です。最も世界で古くから食用されているハーブともいわれています。乾燥パセリがハーブとしては有名ですが、生のパセリもすっきりとした素晴らしい香りを持ちます。縮れている葉を持つカーリーパセリと、葉が縮れていないイタリアンパセリがあります。特にイタリアンパセリはセリ科に特徴的な葉の形をしているのがよくわかります。
セリ科のハーブ③ディル
植物分類 | セリ科イノンドル属 |
葉の形 | 針状・羽のような形 |
花の色・姿 | 黄色い小さな花が傘型につく |
サーモンやホタテのカルパッチョの上にそっとのせられている小さな葉が「ディル」と呼ばれるハーブで、こちらもセリ科の仲間です。主に生魚の臭み消しに使われることが多く、葉の形はまさにセリ科といえる羽のような形をしています。白い花をつけるセリ科植物が多いですが、こちらは黄色の花をつけます。
セリ科のハーブ④フェンネル
植物分類 | セリ科ウイキョウ属 |
葉の形 | 針状・羽のような形 |
花の色・姿 | 黄色い小さな花が傘型につく |
ハーブとして見聞きすることも多いフェンネルもセリ科の仲間です。先述したディルと非常に似た見た目をしており、ディル同様に葉を魚の臭み消しとして使用することが多いハーブです。ディルとの違いですが、フェンネルのほうが甘みが強く、フェンネルは茎も食材として使用されます。こちらも花の色は黄色です。
代表的なセリ科の園芸草花
セリ科の園芸草花①レースフラワー
植物分類 | セリ科ドクゼリモドキ属 |
葉の形 | 針状・羽のような形 |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
先述したように、ガーデニングや寄せ植えで人気のレースフラワーもセリ科です。「レース」と名に冠するように白い小さな花が寄せ集まった姿は可憐で、まさに美しいレースのようです。押し花にして花材に使用する人も多い人気の園芸草花です。
セリ科の草花②フランネルフラワー
植物分類 | セリ科 アクチノータス属 |
葉の形 | 画像参照 |
花の色・姿 | 菊のような白い花が先端につく |
フランネルフラワーは、茎や葉が産毛のような細かい毛に覆われているので、全体的にシルバーがかって見えます。キク科のような複数の花びらに囲まれた白い花をつけます。ここまでご紹介してきたセリ科の花の形とは違いますが、葉の形はセリ科特有の姿をしています。
代表的なセリ科の雑草
セリ科の雑草①ヤブジラミ
植物分類 | セリ科 ヤブジラミ属 |
葉の形 | 画像参照 |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
ヤブジラミという名前からも、あまり人に好まれていない雑草であることがよくわかります。セリ科に特徴的な葉の形を持ち、花の付き方も白い小花が集まったものです。茂みなどに入ると服に大量の種がついてしまう、いわゆる「くっつき虫」のひとつです。日本全土に分布しています。
セリ科の雑草②シャク
植物分類 | セリ科 シャク属 |
葉の形 | 画像参照 |
花の色・姿 | 白い小さな花が傘型につく |
別名ヤマニンジンやワイルドチャービルと呼ばれるシャクも、ヤブジラミ同様、雑草として日本全土に分布しています。シャクの根は山菜として食用が可能ですが、有毒植物である「ムラサキケマン」と姿が非常に似通っており、ひと目で判断することは困難といわれています。誤食すると食中毒の危険もありますので、注意が必要です。
まとめ
セリ科植物の特徴と、代表的なものを11種ご紹介しました。11種並べて見てみると、確かにセリ科にある特徴「葉の形」「花の姿」「香り(食用のもの)」が共通していることがよくおわかりいただけたことでしょう。何気なく過ごす暮らしの中でも、「この植物は何の仲間だろう」と疑問を持ってみると、「ただの野菜」や「ただの雑草」から1つ踏み込んだ新しい発見があるかもしれませんね。
出典:写真AC