食べられる野草には何がある?
食べられる野草というと、山に分け入ったり、遠い場所に出かけたりするなどと採集が難しいイメージがあるかもしれません。じつは公園や道端、野原や土手など、身近な場所で採集できる野草もあるのです。野草は生命力が強いため、栄養成分が豊富な特徴があります。なかには薬草とされるほど、高い健康効果をもつものもあるほどです。
食用野草をとる際の注意点
毒草に注意!
野草採集の際の注意点で、真っ先にあげられるのは毒草との見分け方です。野草には食用可能な草もあれば、毒がある草もあります。毒草のなかには、見た目が食べられる野草に似ているものもあるので注意が必要です。実際にあやまって毒草を食べてしまう事故が、頻繁に起こっています。
毒草には食べられる野草もある
毒草のなかには、処理方法によっては薬草や食用草になるものもあります。これは毒抜きが可能、もしくは扱い方次第では薬になる種類があるからです。たとえばイヌホオズキという有毒植物は漢方薬になります。イヌホオズキの生薬名は「龍葵(りゅうき)」といい、解熱や利尿の効能があるとされているのです。毒草のイヌホオズキを食用草として利用している地域もあります。
衛生面にも注意!
雑草は身近な場所で見かけられます。しかし、場所によっては衛生上の問題があります。その場合は採集しないほうがよいでしょう。食用可能な雑草のなかには、山菜として市販されているものがあります。衛生面の安全を考えるなら、市販品の利用がおすすめです。
雑草が生えている場所の近くに、田畑があるなら農薬がかかっている恐れがあるし、道端や公園は犬や猫の糞尿がかかっている可能性があるんだよね。
食用可能な雑草の採集は、毒草との見分けだけではなく、衛生面も考えて行いましょう。
春の食べられる野草7選
イタドリ
開花時期 | 7月~10月 |
旬の時期 | 4月~5月 |
イタドリ(虎杖、痛取)は東アジアを原産とするタデ科の多年草です。日本では北海道西部以南の山野や道端に群生する雑草として扱われています。開花時期は季節でいえば夏ですが、おもに若芽の部分を食用とするため、旬の季節は春です。昔はイタドリの若い葉っぱを傷薬にしていたことから「(傷の)痛み取り」がなまって「イタドリ」になったといわれています。
イタドリは、古くからある日本の野草として知られています。平安時代初期に著された薬物辞典「本草和名」にも、イタドリの名前があるんですよ。
イタドリは生命力や繁殖力が、とても強いんだ。だから欧米では「既存の植物をおびやかす雑草」として危険視されているよ。
イタドリのおいしい食べ方
イタドリの皮は繊維質が多く、身は有機質やシュウ酸を多く含んでいます。そのため、調理前には皮を剥いてアクを抜く下処理が必要です。下処理後は汁物の具材や煮物に仕上げるとおいしいですよ。油との相性もよいので、炒め物もおすすめです。実際にイタドリの出荷量全国一を誇る高知県では、春になるとイタドリの油炒めや炒め煮といった料理がよく食べられています。
カラスノエンドウ
開花時期 | 3月~5月 |
旬の時期 | 4月~5月 |
カラスノエンドウ(烏野豌豆)はマメ科の雑草です。正式名称は「ヤハズエンドウ(矢筈豌豆)」といいますが、一般にはカラスノエンドウという名前が定着しています。本州~四国、九州、沖縄の道端や空き地などの身近な場所でよく見られます。温暖な気候を好むため、北海道などの寒冷地ではあまり見かけられません。現在は雑草扱いですが、昔は食用草として栽培されていました。
カラスノエンドウには、便を柔らかくするとされるクエルシトリンや、炭水化物の代謝を助けるビタミンB1などといった成分が含まれているんだよ。
これらの成分の働きから、カラスノエンドウは整腸や利尿の効能も期待されています。
カラスノエンドウのおいしい食べ方
カラスノエンドウは春の季節に収穫する新芽のほか、若い葉っぱ、花、若いサヤ、熟した実など、ほとんどの部分が食べられます。おすすめは天ぷらです。天ぷら特有のカリッとした風味がよくあいますよ。熟した実は炒って食べるとおいしいです。このほか、おひたしや和え物にしても、おいしく食べられます。
ギシギシ
開花時期 | 6月~8月 |
旬の時期 | 11月~4月 |
ギシギシはタデ科の植物で、北海道~九州の田のあぜ道や水辺、やや湿った野原や土手など、湿地帯で見られる雑草です。根に便秘の緩下や消炎の効能があるため、漢方では便秘や皮膚病の薬として用いられていました。生薬名は「羊蹄(ようてい)」または「羊蹄根(ようていこん)」といいます。ギシギシの開花時期は初夏~夏ですが、食用としては柔らかい新芽を用いるため、春が旬の季節です。
ギシギシのおいしい食べ方
ギシギシは早春に収穫できる新芽を食用とします。ギシギシの新芽には、成長した葉っぱにはない透明なヌメリがあるのが特徴です。このヌメリと食感が山菜のジュンサイに似ているため「オカジュンサイ」とも呼ばれています。ギシギシの食べ方としては、独特の食感を活かしたおひたしや和え物が一般的です。味にクセがあるため、酢の物や味噌漬けにして食べることもあります。
ギシギシのジュンサイに似た食感は、いろいろな料理に使えるよ。汁物の具材や炒め物、天ぷらもOKなんだ。
タンポポ
開花時期 | 3月~5月 |
旬の時期 | 3月~4月 |
タンポポ(蒲公英)は、日本の春の野草の代表格として有名な草花です。北海道~沖縄まで、日本中どこでも見かけられます。ただし、身近な場所で見かけるタンポポの多くは、外来種のセイヨウタンポポです。日本の野草である在来種のニホンタンポポは、都市化による環境の激変などが原因で、近年減少の傾向にあります。
セイヨウタンポポは、繁殖力がとても強い雑草なんだ。以前はニホンタンポポの減少の原因といわれていたほどだよ。
近年の調査で、ニホンタンポポの減少は、都市化など環境の変化が大きいということが明らかにされました。
タンポポのおいしい食べ方
セイヨウタンポポの葉っぱは、古くからヨーロッパで食用とされていました。おもにサラダ料理に使用しています。タンポポの葉っぱには少し苦味がありますが、スロベニアでは人気の料理です。また、タンポポの根はコーヒーの代用品として知られています。乾燥させた根を炒ったもので作ります。カフェインを含まないため、胃に優しく妊婦でも飲用できるのが魅力です。
タンポポは薬にもなります。健胃・利尿の効能があるとされ、漢方でも健胃薬などに用いられていました。
全草を乾燥したものは「蒲公英」、また秋から冬に採取し乾燥した根も「蒲公英根」と呼ばれる生薬で、漢方処方の「蒲公英湯(ほこうえいとう)」の主薬として配合され、産後の乳汁分泌が良くないときに用いられます。これらの生薬は共に健胃、解毒、強壮、消炎、発汗、利尿、利胆などに用いられます。
ツクシ
開花時期 | 3月~4月 |
旬の時期 | 3月~4月 |
ツクシ(土筆)はタンポポと同じく、春の野草の代表格とされている植物です。北海道~九州と、ほぼ全国に分布しています。独特の草姿が印象的なツクシですが、じつはスギナ(杉菜)という植物の胞子茎です。そのためツクシは早春に成長し、胞子を飛ばし終わったら枯れてしまいます。
ツクシのおいしい食べ方
ツクシの節についている「ハカマ」と呼ばれる部分は食べられないため、調理前に除去します。また、アクが強いのでアク抜きも必要です。これらの処理が済んだ後に調理します。ツクシの定番料理は卵とじ、佃煮、天ぷらです。天ぷらは季節感を出すために、ほかの山菜の天ぷらとの盛り合わせもおすすめですよ。茶わん蒸しや魚のムニエル、パスタなどの添え物にしてもおいしく食べられます。
春が旬の魚やパスタの具材にツクシを添えると、季節感が強調されて、料理がよりおいしく見えるよ。
ヨモギ
開花時期 | 8月~10月 |
旬の時期 | 3月~5月 |
ヨモギ(蓬)はキク科ヨモギ属の野草です。「モチグサ(餅草)」「ヤイトグサ」「サシモグサ」など、別名が多いことも知られています。春の季節に葉っぱが生い茂ることや、秋に咲く花が目立たないことから季節的には「春の野草」というイメージが強い植物でもあります。早春に新芽が食用になるほか、成長した葉っぱが漢方薬やお灸に使うもぐさになるなど、非常に役立つ野草として有名です。
ヨモギの葉っぱから作る生薬は「艾葉(がいよう)」というんだ。漢方では止血や鎮痛の効能があるとされているよ。
ヨモギの葉っぱは入浴剤にもなります。ヨモギの入浴剤は、あせもや冷え性、肩こりやリウマチに効能があるといわれていますよ。
生薬「ガイヨウ」は本種の葉及び枝先で、1,8シネオール(モノテルペノイド)などの成分を含み、止血、抗菌、抗炎症などの作用があります。
ヨモギのおいしい食べ方
ヨモギを食用とする場合は、早春の時期に収穫できる新芽を使います。定番は天ぷらやおひたし、和え物です。餅に入れて蓬餅(草餅)や団子にする食べ方も有名ですね。別名の餅草の由来にもなっています。近年は新芽をペースト状にしたものを、生クリームやオリーブ油と混ぜてソースにする方法も使われるようになりました。ヨモギの緑色が料理によく映えますよ。
ヨメナ
開花時期 | 8月~10月 |
旬の時期 | 3月~6月 |
ヨメナ(嫁菜)は西日本を中心に分布している野菊の一種です。道端など身近な場所でよく見かけられますが、山間部でも見られます。ヨメナは「万葉集」にも登場するなど、日本の野草として古くから親しまれてきました。食用にする際は新芽を収穫します。成長した葉っぱは硬くて食べられません。このため、開花時期でいうと夏~秋の季節の野草ですが、旬の時期でいえば春の季節の野草です。
ヨメナのおいしい食べ方
ヨメナを使った料理は「ヨメナご飯」が有名です。茹でたヨメナを細かく刻み、ご飯に混ぜて炊きます。ヨメナの独特の香りとご飯の甘味が感じられる素朴な料理です。季節感も感じられるでしょう。天ぷらやおひたしにしても、おいしいですよ。
次ページは「夏の食べられる野草9選」です。
アフリカのケニアに住むキクユ族は、イヌホオズキの全草を煮て食べているんだよ。