テンナンショウとは
テンナンショウとは、サトイモ科テンナンショウ属の多年草です。その呼び名は、和名の天南星(てんなんしょう)からきています。主に温帯地域に分布していて、樹木の下や山地の湿った場所に多く見られ、日本でも全国各地に自生しています。花を包む仏炎苞(ぶつえんほう)はラッパ状に真上に伸びた特徴的な形をしていて、その姿はパッと目にとまる何とも不思議な植物です。
基本情報
植物名 | テンナンショウ(和名:天南星) |
学名 | Arisaema |
科名・属名 | サトイモ科テンナンショウ属 |
別名 | ヘビノダイハチ、ヤマゴンニャク |
園芸分類 | 観葉植物 |
原産地 | 東南アジア |
開花時期 | 4〜5月のものが多い |
テンナンショウの花言葉
テンナンショウ属全体の花言葉は「壮大な美」「壮大」です。独特な見た目のイメージとは違いますが、これは天南星の由来とされる竜骨座のカノープス(南極老人星)から連想されたのではないかとされています。テンナンショウは6月1日・6月6日の誕生花です。
テンナンショウの種類
テンナンショウは、世界で約150種類の仲間が発見されている植物です。日本でも約30種類が全国各地で自生しています。基本的には湿気の多い樹林下などに自生していることが多いですが、中には河川敷などで見られるものもあります。
種類①マムシグサ
毒があるといわれる種類として、マムシグサがあります。斑点模様が見えることからマムシのようだとされ、この名前がつけられたといわれています。かなり強い毒を持っているため、触ったり口に入れたりすることはやめておきましょう。最悪の場合、命を落とすこともあるため、発見しても見るだけにしておいてください。
種類②ミミガタテンナンショウ
ミミガタテンナンショウはその名のとおり、耳のような形の仏炎苞が特徴です。ほかの種類と比べると多少は毒性が低く、動物が食べることもあります。しかし、人が食べるには向いていないので注意しましょう。
種類③ウラシマソウ
ウラシマソウには一部、細長いものがついています。糸状の付属物は浦島太郎が使う釣り竿の糸に似ているとされ、「ウラシマソウ」という和名がつけられました。
テンナンショウの特徴
テンナンショウは、花を包む仏炎苞が円筒状に上に伸びた珍しい形状が特徴です。一見その独特な見た目は不気味な雰囲気がありますが、形状や模様は種類によってさまざまでなんとも興味深い植物です。特徴を知っておけば観賞もよりいっそう楽しめるでしょう。
特徴①葉
葉は三出複葉や鳥足状複葉で、ぱっと手のひら状に開いた形状のものが多く見られます。小葉は2~3枚程度しか育たないものもあれば、20枚程度まで育つものもあります。また、仏炎苞よりも低い位置につくものから、仏炎苞よりかなり高い位置まで伸びるものまでさまざまです。葉柄の下部は、茎の根元に円筒状に巻きつき、その形が茎のように見えることから、偽茎と呼ばれています。
特徴②花
テンナンショウ属の花は、縦に長く伸びるのが特徴です。肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる柄のない小さな花が密集している周りに仏炎苞という大きな包みがあり、これがテンナンショウ属の花かどうかを見分ける大きな特徴となっています。見た目は印象深いですが、毒があるものも多いので触らないようにしましょう。
特徴③実
花が咲いた後、秋頃になると肉穂花序の部分に実ができ始めます。できた実は、小さいトウモロコシがむき出しになったような形状で、一見すると食べられそうなほどです。しかし、実には毒があるため、誤って口にしないようにしましょう。鳥などが食べている光景を見ることもありますが、人は食べられません。
特徴④性別が変化する
テンナンショウは栄養分の有無で性別が変化する植物です。そのため、育て方次第で雌雄のどちらにするかコントロールできます。自然界では、雄と雌がちょうどよく育ちますが、自分で育てるなら肥料の有無を計算しておかなければ、種を取ることができない可能性もあるので注意しましょう。
テンナンショウと似た植物との見分け方
テンナンショウは植物の中でもかなり変わった形状をしているので、ほかの植物と比べると判別しやすいでしょう。中には、テンナンショウに似た特徴的な形状の花や実を持った植物もいくつか存在します。
似た植物①カラスビシャク
サトイモ科ハンゲ属に分類されるカラスビシャクは、糸状の細長い付属体がテンナンショウ属のウラシマソウによく似ています。しかし、よく見るとウラシマソウは付属体が垂れ下がっているのにたいして、カラスビシャクは垂れ下がらず上に伸びています。自生場所にも違いがあり、カラスビシャクは日当たりのよい道端や畑などでも見られます。
似た植物②オオハンゲ
オオハンゲもサトイモ科ハンゲ属の多年草で、ウラシマソウに似た姿をしています。カラスビシャクと同様、細長い付属体は垂れ下がらず上に伸びていきます。テンナンショウと似て、湿気の多い樹林下などに自生しています。葉は、テンナンショウよりも大きめでしっかりとした印象です。付属体から仏炎苞まで全体的に鮮やかな緑色をしているのも、見分けるポイントになりますね。
似た植物③マルミノヤマゴボウ
ヤマゴボウ科のマルミノヤマゴボウは、関東以西~九州地方で見られる多年草です。花の状態ではテンナンショウとは全く別の植物に見えますが、成長して丸い実がなると似た姿になります。よく見るとテンナンショウとは違い、一つひとつの花から実が膨らんでいるのがわかります。果実には毒があるので、注意しましょう。
テンナンショウの利用方法
テンナンショウ属の植物は、程度は違いますが毒を持っています。しかし、毒も使い方によって薬になるため、医療用として使われることもあります。
漢方薬
毒性が強いテンナンショウ属の植物は、正しく使えば漢方薬として役立てることがわかっています。薬の名前はテンナンショウとされており、主に痛み、痙攣を抑えるために使われます。また、根を細かくすりつぶして塗ることで、肩こりや神経痛にも効くとされていますが、かぶれやすいため注意が必要です。
素人が使わないこと
薬として使われているテンナンショウですが、これはあくまで薬学に通じている人が使う場合です。そのため、素人が道端に自生しているテンナンショウ属の植物を使うのはやめておきましょう。誤って花や実を触ったり食べたりする事例はいくつか報告されており、最悪の場合死に至ることもあるため、注意が必要です。
テンナンショウは不思議な植物!
とても不思議で神秘的な見た目を持つテンナンショウ。意外と身近に自生している植物のため興味本位で触ってしまう人もいますが、危ないので遠くから見るだけにとどめておきましょう。見るだけなら魅力的な植物であり、育てたものが展示されていることもあるので、ぜひ観賞して楽しんでみてくださいね。