ハクサンチドリの育て方
ハクサンチドリは、寒冷地の湿気のある場所を好む山野草のため、暑さに弱く家庭で育てることは難しい植物です。特に暖かな平地では生育期間が短くなってしまい、地下茎が十分に育ちません。園芸店ではハクサンチドリが蕾の状態で売られています。植え付けの場所や水やりに十分注意して育てましょう。
育て方①植え付け・用土
植え付けは冬の休眠期間に行います。日当たりがよく水はけのよい場所が適しています。鉢植えの場合は、細粒の鹿沼土に水ごけの粉末を1割混ぜた用土がおすすめです。地植えの場合は鹿沼土か、腐葉土に火山レキと赤玉土を混ぜて植えましょう。
育て方②置き場所
春から秋は日当りのよい場所、夏は直射日光を避けて半日陰に置きましょう。特に夏の高温多湿に弱いため、風通しのよい涼しい場所に置きます。また、花や葉を傷めないように雨の当たらない場所がおすすめです。
育て方③水やり
ハクサンチドリの育て方のなかでも重要な点が、水やりです。寒冷地の湿原や、高山の湿気のある場所に自生する植物のため、生育期間は湿度を保つ必要があります。水やりは花や葉、茎に水がかからないように控えめに与えましょう。葉の付け根に水が溜まると茎が傷み倒れてしまいます。また、休眠期間も完全に乾かないように、土を少し湿らす程度の水を与えます。
ボタニ子
葉や花を傷つけないように、注ぎ口の小さいじょうろで水やりをしましょう。
ボタ爺
土を湿らすように水やりをするのがポイントじゃ!
育て方④肥料
春になり芽が出たときに、油かすなど有機肥料を置き肥します。また、山野草用に液体肥料を1000倍に薄めて1週間~10日おきに与えましょう。夏の開花時期は肥料を与えません。
育て方⑤株分け
ハクサンチドリは、株分けしても株の寿命が短いため、増やして育てることは難しいです。鉢が窮屈になり株分けが必要な場合は、2~3月のまだ芽が出る前に、根を傷つけないように丁寧に植え替えるとよいでしょう。ハクサンチドリの植え替えには素焼きの山野草鉢がおすすめです。山野草鉢は水分を鉢が吸い込み、土を乾きにくくしてくれるため、湿度を保つ必要のあるハクサンチドリに向いています。
ハクサンチドリに似た花
ハクサンチドリのように湿気のある涼しい場所に咲く野生のランには、チドリと名前の付くよく似た花があります。花や葉の形が少しずつ異なっていますが、一見すると見分けがつきません。そこで、ハクサンチドリとの違いと見分けるポイントを解説します。
ウズラバハクサンチドリ(鶉葉白山千鳥)
ウズラバハクサンチドリは、高山の草原に咲く多年草です。花の色と形はハクサンチドリと同じですが、葉が大きな楕円形で暗紫色の斑点があることが特徴です。この斑点がウズラの卵に似ていることから名付けられました。東北地方と北海道のみで見られます。
テガタチドリ(手形千鳥)
テガタチドリは別名を「チドリソウ」と呼び、日本だけではなくヨーロッパの高山にも多く生息している植物です。花期はハクサンチドリより遅く7~8月で、1cmほどの小さい花を穂状にして咲かせます。背丈が20~60cmと長く、茎の先に薄い紅紫色の花を咲かせ、細長い葉が縦二つに折れるように付いています。
ノビネチドリ(延根千鳥)
ノビネチドリは湿り気のある草原に生える植物です。北海道では人里の草地や海岸でも見かけられます。ハクサンチドリと見分けるポイントは「葉の縁が波打つように縮れる形状か」です。ハクサンチドリの葉の縁は縮れていません。また、ノビネチドリの葉は、丸みのある楕円形で縦じわがあり、茎を抱くように重なり合っていることも特徴です。
まとめ
ハクサンチドリは、高山の湿り気のある場所に生息する山野草です。冷涼な場所を好むため、暖かな平地で育てるのは難しい植物です。しかし、日当たりや用土、水やりなど育て方に気をつければ、千鳥が飛んでいるような紅紫の花を家庭でも楽しめます。一つひとつの蕾がゆっくりと開花する様子をじっくり観察してみてはいかがでしょうか?
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出典:写真AC