山わさびの特徴
日本で根わさびとして食される山わさびは、海外でホースラディッシュと呼ばれる西洋わさびの仲間です。見た目は白い「ごぼう」のようですが、北海道では本わさびと区別するため「蝦夷わさび」とも呼ばれ、調味料やご飯のお供として親しまれる食材です。山わさびの育て方は簡単なので、栽培方法や増やし方・害虫対策ついて詳しくご紹介します。
山わさびの栽培地域
山わさびの原産国はフィンランドや東ヨーロッパです。アブラナ科の多年草でセイヨウワサビ属に分類され、北海道など冷涼な気候を好み、日本では岩手県や島根県などで栽培されています。本わさびのように清流ではなく、山の明るい日陰で育ち、栽培年数も3年は要する本わさびより短い期間(約1年ほど)で収穫可能です。
山わさびと本わさびとの違い
山わさびは太くなりにくい
山わさびは本わさびと比べると、少し細い印象があります。太くならない理由は、本わさび・山わさびのどちらにも含まれる殺菌成分(アリルイソチオシアネート)の量の違いです。本わさびはこの成分が水に流れ出るため根が太くなるのですが、土で栽培される山わさびは根に残るため太くならない特徴が現れます。
山わさびの方が味や香りも強い
山わさびと本わさびは見た目だけでなく、味と香りも違います。山わさびの辛さは本わさびの1.5倍あり、刻んでいる時点から涙が止まらなくなるほどです。本わさびは甘さと辛さがあるのに比べ、山わさびは舌が痺れる辛さが強く、香りは「大根わさび」という別名通り大根に近いです。
山わさびの育て方
山わさびの栽培方法としては、ホームセンターなどで販売されている種苗が始めやすいでしょう。または、スーパーなどで食材として販売されている山わさびの一部を利用しても栽培できます。
山わさびの上手な育て方(用土)
西洋わさびである山わさびは、土で育てることができます。用土は水はけがよいようにバーミキュライトなどを加え、酸性を嫌うので中和させるために苦土石灰や籾穀くん炭などを混ぜ込みましょう。
山わさびの上手な育て方(植え付け時期)
山わさびは耐寒性があるので、植え付けに適している時期は9月から翌年の4月まであります。冬越しも植えたままで大丈夫ですが、一番安定している植え付け時期としては3月から4月です。
植え付け方法
山わさびを植えつける1週間前に土壌を中和させるため、1立方あたり100グラムの苦土石灰を混ぜ込んでおきます。露地に植える場合は30センチから45センチと深めに堀り、種苗は30センチの間隔で植えましょう。プランターの場合は深さのあるものを用意して、2株植えるときは長さ60センチほど必要です。土は種苗が隠れるくらいに被せます。
注意点
日本の夏は高温多湿になるため、できるかぎり風通りのよい半日陰となる場所に置くことが必要です。葉もあまり茂りすぎていると蒸れるので、外葉を整理して風が通るようにします。北海道などの冷涼な気温を好む山わさびは、夏の管理が重要になります。
水の管理
水はけのよい土壌に植えているので、水は乾いたらたっぷりと与えます。水が足りずに葉が萎れると栄養を送れず、山わさびの根が太くなりません。また、水が不足すると根が固くなるので要注意です。
山わさびの上手な育て方(肥料)
北海道の山に自生するほど強い生命力を持つ山わさびには、特別な肥料は必要ありません。与えるとすれば腐葉土や野菜用として販売されている肥料を適宜施せば十分です。
肥料の与え方
山わさびの肥料はまず植えた1週間後に、種苗から離れた場所に肥料を入れます。その後、3週間から4週間ごとに根を太らせるために追い肥を与えます。このとき、山わさびの根が土から出ていないか確認して、土寄せをしましょう。収穫するまで、肥料と土寄せを繰り返していきます。
山わさびの増やし方
山わさびの増やし方には株分けや、収穫した根わさびを切り分けて芽を出させる方法があります。はじめて山わさびを栽培するならば、種苗を購入して増やす方法がおすすめです。もしもすでに栽培しているならば、根わさびを収穫したあと株分けも簡単に行なえます。
株分けで増やす方法
1本の根から株が分かれて芽が出ていたら、株分けができます。株分けする場合は、出ている葉と一緒に立ち上がっている根の一部(2から3センチ)を切って植えます。株分けできるようになるのは、大体2年目以降の種球です。
根伏せで増やす方法
根伏せは山わさびの収穫した根を、2センチほどに切って増やす方法です。直接土に植えても大丈夫ですが、水を張った皿やペットボトルで芽と根が出た状態で植え付けた方が、上下を間違えないので安心です。水は傷むので1日に1回は取り替えましょう。
種で増やす方法
山わさび(西洋わさび)は種ができ難い性質のため、種を蒔く増やし方は適していません。山わさびはアブラナ科なので、春になると白い花を咲かせます。ですが、花を咲かせるとエネルギーを消費し根を太らせることができないので、必要がなければ蕾のときに取りましょう。
山わさびの害虫対策
山わさびの栽培で注意しなくてはいけないのが、害虫による食害です。特にモンシロチョウや蛾などの芋虫に葉を食べられて、無残な姿となる危険があります。気温が温かくなったら、こまめな害虫駆除が必要となります。
害虫の種類
山わさびの葉を食べる害虫には、モンシロチョウやアゲハチョウ・コナガなどがあります。モンシロチョウなどが飛来しているのを見かけたときは、葉の裏を見て卵がないか芋虫がいないかを確認しましょう。発見が難しいのがヨトウ虫で、これは昼は土の中に隠れていて夜になると這い出て葉を食い荒らします。
害虫対策
山わさびを害虫から守るためには、人の手で卵や芋虫を排除していくのが確実です。害虫を寄せ付けないようにするには、市販されている薬剤を使ったり、木酢液を薄めて散布することで効果がみられるでしょう。アブラムシには、光を反射するアルミホイルを茎に巻きつけておくと寄り付きません。
山わさびの収穫
山わさびは別名ホースラディッシュとも呼ばれ、根の部分を収穫し食します。根わさびとも呼ばれる山わさびの収穫時期や、折らずに収穫する方法を習得しましょう。
山わさびの収穫時期
山わさびの収穫時期は10月下旬から11月です。それまで青々としていた葉が黄色くなってきたら、収穫の目安とします。
収穫の仕方
山わさびを収穫するとき、まずは茎を少し残して葉を刈り取ります。つぎに根から少し離れた場所に移植ゴテを入れ、ゆっくりと持ち上げて根わさびが土と一緒に持ち上がってきたら、折れないように注意しながら引き抜きましょう。プランターは根の周辺を耕し、柔らかくなった所で引き抜きます。
太くならない時の対処方法
何本か山わさびを植えた場合は、1本を残して太い根わさびを翌年収穫する方法もあります。山わさびの2年目の太さは「ごぼう」ほどですが、収穫をせずに2年3年と植えておくと太くなります。北海道では大根ほどの太さの山わさびが販売されるそうですので、太い山わさびにしたければ試してみるとよいかもしれません。
まとめ
日本で食されている「山わさび」は、さまざまな料理に利用される辛みソースのホースラディッシュのことでした。しかもその山わさびは、自分で育てて収穫することができます。育て方は夏の高温と害虫に注意すれば、あとは放っておいても育ってくれます。スーパーでは販売されない葉も食べられるので、山わさびを育てみてはいかがですか。
出典:写真AC