やつがしらとは
やつがしらは、親芋と小芋が一体化した里芋の一種です。大きなものでは直径10cm以上にも成長します。地下茎や地上茎の見た目が特徴的で、栄養素も豊富に含まれています。やつがしらと呼ばれる理由や選び方など詳しく知ることで、よりやつがしらに対する興味が増すでしょう。
基本情報
科・属名 | サトイモ科サトイモ属 |
園芸分類 | 根菜類 |
形態 | 宿根草 |
樹高 | 80cm~150cm |
花の色 | 黄色 |
産地 | 千葉県・茨城県 |
耐寒性 | 弱い |
耐暑性 | 強い |
耐陰性 | あり |
旬の時期 | 12月~1月 |
やつがしらは、サトイモ科の根菜類野菜です。冬の時期になれば地上部は枯れ、地下茎が肥大した「塊茎」を春に植えることで増やせます。花はめったに咲きませんが、高温・多湿・多雨の条件が重なればまれに黄色い花を咲かせることがあります。
名前の由来
やつがしらは親芋と小芋が一体化し同程度に大きくなります。まるで八つの頭があるように見えることからこの名前が付けられました。もともと里芋は小芋がたくさんできることから「子孫繁栄」の意味合いがあります。さらにやつがしらの八は「末広がり」、頭は「人の頭に立つ(出世する)」という意味を込めて、正月の縁起物として料理に使われています。
やつがしらの特徴
地下茎
市場によく出回っている里芋の多くは、親芋の周りに小芋が単独でつきます。しかし、やつがしらは小芋と親芋が一体化し、見た目が大きくごつごつとしています。大きなものでは重さが500gを超えるものもあるほどです。
丸系やつがしら
通常のやつがしらは皮がむきにくく廃棄量が多いデメリットがあります。より扱いやすくするために、埼玉県農業技術研究センターにて選抜されてできたのが丸系やつがしらです。埼玉県オリジナルの特産品として平成26年に商標登録され、深谷市・杉戸町・熊谷市などで生産・販売されています。
地上茎
里芋の地上茎は「ずいき(素材名:ダツ)」と呼ばれ、種類は「赤ずいき」「青ずいき」「白ずいき」があります。やつがしらの地上茎は「赤ずいき」といい、淡いピンク色です。その色合いから和え物や酢の物にすると美しく食卓を彩ります。三重県紀北町の郷土料理で、赤ずいきに塩と赤シソで漬けこんだ「くき漬け」は地域の特産品として知られています。
葉
葉形は三角状だ円形で、表面は水を弾きます。里芋の葉は東南アジアではよく使われる食材です。フィリピンではココナッツミルクと煮る「ライング」、インドでは葉にベサンと呼ばれるひよこ豆の粉やレッドチリペッパー、コリアンダーパウダーなどを挟んで蒸した「クロケシア」という料理に使用されます。
やつがしらの栄養価
可食部100gあたり
やつがしら | さといも(土垂・石川早生など) | |
カロリー | 97kcal | 58kcal |
炭水化物 | 20.5g | 13.1g |
たんぱく質 | 3.0g | 1.5g |
脂質 | 0.7g | 0.1g |
食物繊維 | 2.8g | 2.3g |
カリウム | 630mg | 640mg |
カルシウム | 39mg | 10mg |
亜鉛 | 1.4mg | 0.3mg |
マグネシウム | 42mg | 19mg |
単糖当量 | 20.2g | 11.2g |
やつがしらは、土垂や石川早生などの小芋を食べる品種と比べてカロリーが高めです。また、三大栄養素の「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」や、腸内環境の正常化に期待できる「食物繊維」、骨を強くするといわれる「カルシウム」「亜鉛」「マグネシウム」などが豊富に含まれています。
やつがしらとほかの里芋との違い
見た目
土垂や石川早生などの小芋を食べる里芋は、親芋の周りに小さい小芋が独立してたくさんついています。やつがしらはほかの里芋とは違い、親芋と小芋が同じぐらいの大きさで一体化し、ごつごつとした見た目です。
味や食感
一般的な里芋は、水溶性食物繊維「ガラクタン」「ムチン」によるぬめりがありますが、やつがしらにはぬめりが少ないです。食べたときの食感もホクホクしており、肉質もしっかりしているため煮崩れしにくく甘みもあります。
食べる部位
品種名 | |
小芋用品種 | 石川早生・土垂 |
親芋用品種 | 京芋 |
親子兼用品種 | やつがしら・セレベス・えび芋 |
ずいき用品種 | はす芋 |
やつがしらは小芋・孫芋だけではなく親芋も食べられます。一般的な里芋には地下茎の部分のみを煮物で食す使い方がありますが、やつがしらは地下茎だけではなく「赤ずいき」といわれる地上茎も食べられます。酢の物や和え物にぴったりです。赤ずいきには保存食としての使い方もあり、乾燥させた「いもがら」は太陽に当てることで日持ちします。
旬の時期
小芋を食べる品種である土垂は、10月~11月が旬の時期です。一方、やつがしらは11月ごろから収穫が始まり、12月~1月が旬です。ちょうどおせち料理の材料として需要が高まる年末年始に最盛期を迎えます。
やつがしらのおいしい食べ方
調理前の下ごしらえ
やつがしらを調理する前には下ごしらえをしましょう。
- やつがしらを小さくカット(凸凹部分にあわせて切り離すようにするのがコツ)
- 表皮をきれいにむく
- 鍋に水、もしくは米のとぎ汁・酢を少しいれた水をたっぷり入れる
- 鍋にやつがしらを入れて火をかける。沸騰したら弱火にして2~3分ゆでて完成
レシピ①煮物
やつがしらを使う食べ方のなかでも人気なのが「煮物」です。正月のおせちやお雑煮の具材として使われる地域もあります。切り方は四つ切りが一般的ですが、ハレの日には「六角切り」を用います。見た目も美しく煮崩れしにくいですよ。
材料(2人分)
- やつがしら:適量
- だし:300mL
- 薄口しょうゆ:大さじ1.5
- てんさい糖(上白糖でもよい):大さじ1
- みりん:大さじ1
- 料理酒:大さじ1
作り方
- だし、薄口しょうゆ、砂糖、みりん、料理酒を鍋に入れて火にかける
- 下ごしらえしたやつがしらを1に入れて柔らかくなるまで煮る
レシピ②コロッケ
材料(10個分)
- やつがしら:500g
- 塩:適量
- こしょう:適量
- 溶き卵:適量
- 小麦粉:適量
- パン粉:適量
作り方
- 下ごしらえしたやつがしらを、蒸し器もしくは水で柔らかくなるまで煮る
- 熱いうちにマッシャーなどでつぶす
- 塩こしょうで味付けをし、冷ましてから形を形成する
- 小麦粉→溶き卵→パン粉→溶き卵→パン粉の順で衣を付ける
- 冷蔵庫で30分以上冷やす
- 180℃の油でキツネ色になるまで揚げる
作り方のポイント
コロッケも人気レシピの一つです。揚げるときに破裂しないように、形を形成する前後に冷蔵庫で冷やして表面の水分を蒸発させましょう。中がまだ冷たい場合は、600Wの電子レンジで1分~1分半、1500Wのトースターで2分~3分温めます。中はホクホクで外はカリカリに仕上がりますよ。
レシピ③赤ずいきのごまみそ和え
下ごしらえ
やつがしらの地上茎は「ずいき」として調理できます。生の場合、表面の皮を剥いてからたっぷりの水に酢を少し入れて下ゆでしましょう。乾燥させた「いもがら」の場合は、水で数回洗ってから2~3回ゆでこぼします。
作り方
- 炒りごまをすり鉢ですり、みそ・砂糖を適量入れて混ぜる
- 米酢または穀物酢を少し入れてのばす
- ゆでた赤ずいきを食べやすい大きさに切り、2と和える
やつがしらの選び方と保存方法
やつがしらの選び方で大切なのは、触ったときに硬く、土付きであるということです。保存するときには、発泡スチロールの箱に入れ、土は落とさずに新聞紙などの紙に包んでからもみ殻をかぶせると日持ちします。保存場所は、直接冷気に当たらない暗い場所を選びましょう。一度収穫した後に、深く掘った土の中で保存する方法もあります。
ボタニ子
やわらかいものは古かったり、腐っていたりするから気をつけてね!乾燥しているやつがしらは、中がぱさぱさしているかも!
やつがしらをおいしく食べよう!
やつがしらは、小芋と親芋が一体化しているため見た目も大きく、ほかの里芋とは見た目が異なります。里芋と比べると希少価値があり高価ですが、ぬめりが少ないため扱いやすく、ほくほくとした食感や煮崩れしにくい点が魅力です。使い方として、地下茎がおせちの煮しめ、地上茎が赤ずいきの漬物や和え物などがあげられます。それらの調理方法を用いて、やつがしらのおいしさを味わってみてはいかがでしょうか。
出典:筆者撮影