河内晩柑(カワチバンカン)とは
河内晩柑は、熊本県河内町で発見された、晩春から夏にかけて旬を迎える柑橘類です。耐寒性が弱く、栽培には温暖な気候が必要ですが、鉢植えで室内管理すれば寒冷地でも栽培が楽しめます。果実には多くの水分とビタミンCをはじめとする栄養素が含まれており、暑い夏にぴったりのフルーツです。
基本情報
科目 | ミカン科ミカン属 |
分類 | 果樹 |
原産地 | 日本 |
樹高 | 2m以上 |
花の色 | 白 |
耐暑性 | 強い |
耐寒性 | 弱い |
別名 | 夏文旦、愛南ゴールドなど |
特徴
河内晩柑は重さが500gほどあり、柑橘類のなかでも大きい部類です。皮は美しい黄色をしていて、丸い見た目から「和製グレープフルーツ」と呼ばれることもあります。柑橘類は未熟なうちに収穫して酸味を抜くことがほとんどですが、河内晩柑は出荷するギリギリまで木に実らせたまま栽培するのが特徴的です。
名前の由来
河内晩柑は、柑橘類のなかでも収穫時期が遅い「晩成」だったことが名前の由来とされています。そこに、おもな産地である河内の地名をつけて、河内晩柑という名になりました。
ボタニ子
河内晩柑は、文旦の種から生まれた突然変異の品種といわれています。これは、偶発実生(ぐうはつみしょう)と呼ばれる現象です。
河内晩柑の肥料の与え方
河内晩柑に与える肥料は、有機質のものを使います。木が弱っている場合には、速効性の化学肥料もおすすめです。肥料を施す時期は、生育期を迎える3月と、収穫が終わった後の10月頃です。鉢植え栽培には6月にも同じ肥料を与えましょう。手に入るならば、カキやホタテの殻を利用するのも有効です。
なぜカキやホタテの殻がよいのか?
河内晩柑は、おもに石灰岩を原料にした石灰肥料を用いりますが、カキやホタテの殻には、石灰岩よりもミネラルやカルシウムが多く含まれており、海由来の成分が河内晩柑の生育によいとされています。ゆっくりと効果があらわれるため、果樹への負担も少なく土も固くなりにくいといわれています。
河内晩柑の剪定方法
河内晩柑の剪定は、冬を迎えてから新芽が出るまでの間に行います。徒長していたり、混みあったりしている枝を剪定してください。生育期にあたる春~夏に枝を切ると木が弱ってしまう可能性があるので避けましょう。剪定は、風通しをよくするだけでなく、果実の実つきをよくする目的もあります。
剪定のポイント
剪定のポイントは、苗木の栽培年数によって異なります。1~3年の苗木は、前の年の秋に伸びた枝や育ちが悪い枝、病気になってしまった枝を樹形を整えるように剪定してください。このとき、側枝が開くように整えるのがポイントです。日の当たり方がよくなりますよ。4年目以降は、樹形が崩れないように気をつけて、間引き程度に剪定を行いましょう。
河内晩柑の育て方
河内晩柑は暑さに強い一方、冬の寒さが苦手なので、雪が降るような地域では栽培が難しいといわれていますが、鉢植えで室内管理をすれば栽培は可能です。収穫時期によって味や食感が違う河内晩柑を、自分の手で育てて味わってみましょう。
栽培カレンダー
育て方①栽培環境
河内晩柑は、日当たりと風通しのよい場所で栽培してください。しかし、河内晩柑を含む柑橘類は風に弱い性質があり、とくに強い風が当たりやすい場所では、果実が落ちたり枝が折れたりする可能性があります。栽培予定地の風当たりなどを確認してから植え付けましょう。
育て方②植え付け
河内晩柑は、接ぎ木の苗が秋~翌年の春にかけて出回りますが、お住まいの地域によっては秋植えは難しいので、春植えがおすすめです。植え付けは、直径と深さが50cmの穴を掘って、根鉢を崩し、根を広げるようにします。苗のつなぎ目が埋まらないように気をつけてください。掘り上げた土は、用土づくりに使うので、捨てずにとっておきましょう。
ボタニ子
鉢植え栽培は、6~10号サイズの植木鉢を用意してください。
苗の選び方
苗は幹が太くて葉が充実しているもの、色つやがよいものを選びます。芽が大きくてかたいものもよい苗のしるしです。皮がめくれていたり、こぶができていたりするものは病気や害虫の被害にあっている可能性が考えられるので避けてください。
育て方③種まき
河内晩柑は、栽培環境が限定されていて種まきは難しいといわれています。冬は雪などの影響を受ける可能性があるので、種まきに挑戦する場合は、春にまくとよいでしょう。種まきから発芽まで10年近くかかるといわれていますが、気長に待ってあげてくださいね。
育て方④用土
用土は、地植え鉢植えともに赤玉土と腐葉土を混ぜ合わせます。地植えの場合は、これに掘り上げた時の土とたい肥を加えてください。鉢植えの場合は、果樹用の培養土も便利でおすすめです。
育て方⑤水やり
苗を植え付けてから根が定着するまでは、1日1回水やりをしてください。その後、地植えは降雨のみで大丈夫ですが、何日も日照りが続く場合は水やりをしましょう。鉢植えは土の表面が乾燥してきたら、鉢底からあふれ出るくらいたっぷり水やりします。とくに春と夏は水切れを起こさないように気をつけましょう。
水分が足りないとどうなるのか?
生育期でもある春~夏に水分が不足すると、葉が落ちたり枯れたりする原因になります。果実が落ちてしまう可能性もあるので、この期間は水切れを起こさないように気をつけるのが管理のコツです。
水やりで気をつけることは?
春~夏にかけては水切れに気をつけますが、秋~冬のあいだはやや乾燥気味に管理します。そうすることで、甘みが増して色つやのよい果実の収穫が期待できます。
育て方⑥収穫
河内晩柑は、5~8月頃に収穫期を迎えます。しかし開花してからすぐに収穫できるというわけではなく、1年かけて成熟させたものが収穫可能になるのです。5月に収穫した果実は、果肉がやわらかいですが酸味が強い傾向があり、8月になると甘みが増して、さわやかな口当たりが味わえます。
皮が緑色になってしまった、なぜ?
鮮やかな黄色の皮が特徴的な河内晩柑ですが、収穫時期を8月などに遅らせると、気温上昇の影響もうけて、緑色に変色することがあります。これは、河内晩柑に含まれる栄養素が原因です。見た目が悪いためB級品扱いになりますが、味に問題はありません。
人工授粉は必要?
河内晩柑は、1本の木だけで結実できる力を持っているため、人工授粉はしなくても大丈夫です。室内で管理している場合は、風や虫などの影響を受けにくいので、人工授粉をすることで結実率を高めることができるでしょう。
育て方⑦病気対策
河内晩柑は病気に強いですが、長雨に当たると表面に黒いポツポツができる「黒点病」を発症することがあります。これは人間が口にしても影響がないものですが、見た目が悪く品質価値も落ちます。適切な剪定で風通しをよくするほか、事前に薬剤をまいて病気の発症をおさえましょう。
育て方⑧害虫対策
河内晩柑は、アブラムシやカイガラムシ、ハモグリバエやアゲハチョウの幼虫がつきやすいです。アブラムシやカイガラムシは病気を媒介しやすく、ハモグリバエやアゲハチョウの幼虫は葉を食べて木の成長を妨害します。放っておくと木が弱る恐れがあるので、発見次第、早めに退治しましょう。
河内晩柑を育ててみましょう!
河内晩柑は栽培環境が限られていることから、日本各地での栽培が難しい植物ですが、気をつけて管理を行えば初心者にも育てられます。寒冷地にお住いの人も室内管理で河内晩柑が楽しめるので、ぜひ栽培に挑戦してみてください。
出展:写真AC