フォーカリアについて
南アフリカ原産のフォーカリアは、昔からさかんに栽培されている多肉植物の仲間です。葉の縁に、のこぎりの歯のような棘がたくさんあるのが特徴です。過酷な環境を生きのびられるように、肉厚な葉に水分をため込んでいます。多肉植物の中でも育てやすく、初心者にもおすすめの種類です。
基本情報
科名 | ハマミズナ科 |
属名 | フォーカリア属 |
原産地 | 南アフリカ |
形態 | 多年草 |
耐寒性 | やや強い |
耐暑性 | やや弱い |
開花期 | 秋~冬 |
花色 | おもに黄色 |
生育期
フォーカリアは、冬に成長する「冬型」の多肉植物です。地域にもよりますが、10~5月ごろが生育期で、6~9月ごろは休眠します。多肉植物の多くは暖かい時期に生育するので、同じように管理してしまうと、調子を崩してしまいます。生育期と休眠期のサイクルを把握することが、うまく育てるコツです。
フォーカリアの育て方
フォーカリアは、多肉植物の中でも育てやすい種類です。耐寒性があるので、冬越しは容易な反面、夏越しには少しコツがいります。正しい育て方のコツを押さえて、上手にフォーカリアを育てましょう。
育て方①用土
フォーカリアは、多湿な環境を嫌い、蒸れに弱い植物です。そのため、水はけがよい用土が基本ですが、初心者には市販の多肉植物用の用土をおすすめします。市販の用土であれば、細かい調整など必要なく、そのまま使用できるので、手軽に栽培を始められます。
自分で配合する場合
用土を自分で配合する場合は、赤玉土:鹿沼土:軽石を2:2:1で混ぜたものをベースにし、自宅の環境や、栽培スタイルにあわせて配合しましょう。排水性を高めたい場合は、軽石を増やしたり、川砂を追加したりします。保水性を高める場合は、赤玉土を増やしたり、バーミキュライトを追加したりしてください。
育て方②植え替え
フォーカリアの植え替えは、生育期初期の秋が適しています。春に植え替えると、休眠するまでに十分に発根しない恐れもあるからです。調子を崩してしまったときなどを除いては、なるべく避けましょう。
植え替え方法
植え替えるときは、株を鉢から抜いて傷んだ根を取り除き、ハサミで1/3ほどに切り詰めます。鉢に軽石などの鉢底石を入れ、用土を半分まで入れます。フォーカリアを仮置きしたら、周りに用土を足して固定しましょう。最後に鉢をトントンと叩くと、根の隙間に用土が行き渡り安定しやすくなります。
育て方③置き場所
秋〜春の置き場所
生育期間中のフォーカリアは、日当たりと風通しのよい場所に置きましょう。屋内であれば、南向きの部屋の窓際、屋外であれば陽の差し込む軒下などが適しています。生育期にしっかりと陽を当てることで健康に育ち、夏越しが容易になります。
夏の置き場所
休眠中のフォーカリアは、直射日光を避けて、涼しい場所に置いてください。屋内であれば、カーテン越しに柔らかい陽が当たる場所、屋外であれば半日陰の軒下が適しています。適した場所がない場合は、市販の遮光ネットで人工的に日陰をつくってあげましょう。
育て方④水やり
秋~春の水やり
生育期の水やりは、1週間に1回、たっぷりと行いましょう。たっぷりの水やりをすることで、鉢の隅々に新鮮な水と酸素が行き渡り、根腐れを防げます。また、生育期といえど、真冬の朝晩に水やりをしてしまうと、鉢の中で水分が凍ってしまうことがあります。なるべく暖かい日中に水を与えましょう。
夏の水やり
休眠期間中である夏は一般的な水やりはせず、1カ月に1回程度、霧吹きで葉水を与えます。休眠中は根っこからほとんど水分を吸わないので、水やりをするといつまでも鉢の中に水が残ってしまいます。気温も高いので蒸れやすく、根腐れやフォーカリアの本体が腐ってしまうことがあるので注意してください。
フォーカリアの増やし方
フォーカリアは株分けと実生で増やせます。株分けは簡単ですが、1度に増やせる数が限られます。一方の実生は少し難しいですが、1度にたくさん増やせるのが魅力です。
株分け
フォーカリアは、順調に生育すると、1年に1株ずつ分頭して増えていきます。分頭した株を分けると、新たに増やすことが可能です。失敗の少ない増やし方で、初心者の方にもおすすめですよ。
株分けの準備
フォーカリアの株分けをする前は、あらかじめ1週間ほど水やりを控えておきます。株を鉢から抜いたら用土を払い、細い根を指で引っ張って取り除きます。双方に軸と主根が残るように、ハサミで切り分けてください。古い下葉が残っている場合は同時に取り除きましょう。
植え付け方法
株分けしたフォーカリアの植え付け方は、基本の植え付け方と同じです。切り口から雑菌の混入を防ぐために、植え付け後1週間ほどは水やりを控えてください。また根が少ない場合はグラつきやすいので、ワイヤーなどで固定すると安定して根付きやすくなります。
実生
種から育てる「実生」は、1度にたくさん増やしたい方におすすめです。フォーカリアの種子は、一般の園芸店では入手が難しいですが、インターネットで購入できます。また、複数の株を栽培していれば、人工授粉させて採種することも可能です。種が入手できればぜひチャレンジしてください。
種まきの方法
フォーカリアの種をまくときは、市販の種まき用土か、赤玉土の細粒を使います。鉢に用土を入れたら、あらかじめ水やりをして湿らせておきます。種子が重なりあわないように注意してまいたら、ラップでおおって保湿しましょう。水を張った容器に鉢ごと入れる「腰水」で管理すると、水やりの手間が省けるのでおすすめです。
種まき後の管理
種をまいた後は、直射日光を避け、柔らかい光の場所で発芽を待ちます。1週間ほどして発芽したら、ラップを外します。その後は、保湿のために、毎日霧吹きをしてください。数cmに育ってフォーカリアの特徴が出てきたら、腰水をやめて親株と同じように管理をしましょう。
フォーカリアの種類
フォーカリアの原種は30種類ほどですが、交配が容易で、昔からさかんに園芸品種が作り出されてきました。正確な品種数は不明です。今回はその中から代表的な種類を紹介します。
怒涛
四海波は、フォーカリアの中でも流通量の多い種類です。葉の縁には、まるで肉食動物やサメの歯のようなするどい棘が並びます。丈夫な性質で、初めてフォーカリアを育てる方にもおすすめです。秋になると黄色い花を咲かせます。
四海波
怒涛は、日本で作出された品種で、ボコボコとした葉が特徴です。フォーカリアの中でも特に人気のある種類です。葉のうねり具合によって「狂瀾怒涛」と呼ばれるものや、葉が赤く染まる「紅怒涛」と呼ばれるものがあります。
銀海波
銀海波はほかのフォーカリアよりやや細めの葉で、棘もあまりありません。かわいらしい草姿から、女性からの人気が高い種類です。秋になると、タンポポに似た黄色い花を咲かせます。
まとめ
今回は、フォーカリアの育て方についてご紹介しました。フォーカリアをうまく育てるコツは、夏越しです。夏をうまく越せば、そのほかの季節の管理はそれほど難しくありません。フォーカリアは種類が多く、コレクションをしてそれぞれの違いを楽しむのもおすすめです。ぜひ、フォーカリアの栽培にチャレンジしてみてください。
出典:筆者撮影