鏡餅はなぜ飾る?
日本では年末になると丸い餅を重ねた鏡餅を家に置き、正月飾りにする風習があります。餅を正月に飾る風習は日本独自のものですが、その理由は意外に知られていません。実は鏡餅を飾る理由は鏡餅の飾り方にも深く関係しているため、正しく理由を知っておくと飾り方も理解しやすくなります。
歳徳神へのお供え物
鏡餅を飾る理由として広く知られているのが、「歳徳神へのお供えとして飾る」という説です。歳徳神は五穀豊穣の神様として知られています。農業で生計を立てていた時代は五穀豊穣の神様にお供えをし加護を授かるのが習わしでした。なお餅は米で作られるため、豊作を感謝し五穀豊穣を祈願する祭事ではよく使われます。
年神様を家に招く依り代
鏡餅は、正月に各戸へやってきて福を授ける年神様の依り代(よりしろ)として飾る説もあります。年神様に限らず日本の神様は穢れ(けがれ)を嫌います。依り代と呼ばれる神様専用の居場所を作らないと人間の世界にやってきません。そのため鏡餅を依り代にすることで、歳神様を自宅に招きます。
鏡餅の意味とは?
鏡餅は日本のお正月に欠かせないものですが、飾る日や置く場所、飾る意味など意外に知らないことも多いです。さらに鏡餅には飾り方や飾った後に食べる風習にも意味があり、知ってみると「そういう意味があったのか」ということがたくさんあります。
飾り方
鏡餅の飾り方には地域によって多少違いがありますが、三方に丸い餅を重ね、餅の上に橙を載せるのが基本的な飾り方です。このような飾り方には「三方=供物台」「丸い餅=八咫鏡(やたのかがみ)」「橙=八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」の意味があり、すべてをまとめて三種の神器を表します。
干し柿の意味
地域によっては、丸い餅と橙に串に刺した干し柿を使うことがあります。ここでの干し柿には、三種の神器の1つである天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を表します。これは「丸い餅(鏡)・橙(玉)・干し柿(剣)の3つをそろえて三種の神器とする」という考えが原点です。
置く場所
鏡餅を置く場所で比較的多いのが床の間です。神様を上座にお迎えするように、床の間など玄関から離れた場所に飾るのがよいとされたことがその理由です。ただし鏡餅をお供えする意味には諸説あるので、神様へお供えする場合も、床の間ではなく仏壇や神棚の場合もあります。なお玄関先に置く場合は依り代の意味が強いです。
複数カ所に置く意味
鏡餅は家の中の数カ所に置くことがあります。これは家の中にいる神様それぞれに鏡餅をお供えするという意味です。家の中を守る神様はたくさんいます。中でも台所(竈神・荒神)・寝室(納戸)・トイレ(厠神)は家を守る大事な神様といわれ、すべての場所に鏡餅をお供えすることもあります。
飾る日と飾る期間
鏡餅は飾る日と飾る期間の目安がありますが、ここにも鏡餅をお供えする意味の違いで解釈が少し変わります。鏡餅をお供えとする場合は「正月期間にお供えを下げると失礼になる」、依り代とする場合は「神様がとどまる場所がなくなる(帰ってしまう)」という意味があるため、飾る期間にずれがあります。
食べ方
鏡餅は正月期間が終わると家族みんなで食べますが、これこそが鏡餅の重要な意味です。日本では神様へのお供え物を共食すると、力をもらえるといわれています。
お雑煮に餅を使うのも意味がある
近年の日本のお正月では、元旦(または正月三が日)に餅を入れたお雑煮を食べることが多いです。もともとお雑煮の餅は、鏡開きした餅を食べるのが一般的でした。その理由は、鏡餅を食べて神様の加護を授けてもらうことに由来します。また鏡餅をいれたお雑煮は、特別な形をした祝箸で食べるのが正しい作法です。