鏡餅の飾り方【準備編】
鏡餅をいつから飾るのかについては地域の風習によって違います。一度飾った鏡餅は一定期間飾ったままの状態にしておかなければいけません。しかも鏡餅は1年の福を授けてくれる神様に関係するものなので、決められたものを正しく準備することが大切です。そこで鏡餅を実際に飾る前に用意するものを紹介します。
準備はいつから始める?
鏡餅の準備は、飾りつけをする当日までに決められた道具・飾り・品物が集められればいつから始めてもOKです。ただし鏡餅は神様へのお供えなので、鮮度に変化が起きる物はできるだけぎりぎりのタイミングでお供えしたほうが神様は喜びます。いつからという決まりはありませんが、早すぎるのは避けましょう。
道具・飾りの準備
鏡餅を飾る際に必要な道具・飾りには、三方・四方紅・御幣の3つが必要です。三方は鏡餅を盛り付ける台で、立場が上の人に対して品物を献上する際に使うため鏡餅にも使います。四方紅と御幣は鏡餅の飾りとして使うものですが、大切な鏡餅のアイテムなので忘れずに準備しましょう。
三方とは?
三方には大きさには違いはありますが、一般的には高足台の三方を使います。三方は神様へのお供えを盛り付けますが、お供えするときは三方の正面を確認してください。三方の縁には1カ所だけつなぎ目がありますが、つなぎ目側が裏側です。そのため三方を神様にお供えするときは、つなぎ目を必ず自分側に向けましょう。
四方紅とは?
四方紅は、鏡餅を三方に載せるときに下敷きにする紙で、四方を紅色で縁取っていることが名前の由来です。紅色は「祝いの色」というだけでなく「邪悪なものを払う色」でもあります。神様に備える鏡餅を邪悪なものから守るため、四方紅を使うのがしきたりです。
御幣とは?
御幣とは、神社の鳥居やしめ縄につけられている四手(しで)の鏡餅バージョンです。四手は神域の結界を表すため穢れのない白い紙が使われますが、鏡餅の御幣は五穀豊穣を祝う意味も含むため紅白の四手を使います。御幣は自分で作れますが、年末になると近所のスーパーやホームセンターでも販売します。
お供え物の準備
鏡餅のお供え物の準備は、飾りつけをする日を決めて逆算してそろえていくのがポイントです。一般的な鏡餅でお供えする品物は、丸い餅(大小各1個)・裏白・橙の3種類です。地域によっては干し柿や昆布・海老などを追加で飾ることもあります。
裏白とは?
裏白(うらじろ)はシダ植物の仲間で、葉の裏側が白いことが名前の由来です。日本の神様の世界で白は潔白・無・浄化の意味があるため、鏡餅には裏白を飾りとして使います。なお裏白には純潔という意味のほかに「葉が白い=長寿の象徴」「左右対称に葉をつける=夫婦円満」という縁起のよい意味もあります。
橙とは?
鏡餅に載せてお供えするのは、ミカンではなく橙(だいだい)です。橙はミカンの仲間ですが、完熟すると自然に落下するミカンに対して、橙は完熟しても枝についたまま落下しません。そのため橙は、長寿祈願と子孫繁栄を願ってお供えします。橙が手に入らない場合はミカンを代用することもあります。
鏡餅の飾り方【実践編】
鏡餅を飾るのに必要なものがすべて準備できたら、日取りを決めて鏡餅を飾りましょう。実際の作業は、鏡餅を飾る前に置き場所の掃除(お清め)を済ませなければいけません。この章ではすでに掃除が終わっていることを前提にし、「いつから飾る?」「飾る順番は?」を詳しく解説します。
いつから飾るべき?
鏡餅の飾り方では「鏡餅はいつから飾るべきか?」という質問が多く見られますが、特に決まりはありません。吉日にこだわって飾るなら、末広がりの「八」がつく12月28日がおすすめです。地域によっては「ふ(2)く(9)が重なる」として12月29日がよいという説もあります。
「いつから飾る?」にはタブーもある
鏡餅は12月13日以降であればいつからでも飾れますが、松の内であっても12月31日に飾るのはタブーとされます。昔は、日没が日付の変わるタイミングだったので、12月31日に飾ると一夜限りの正月飾り(実際にはわずか数時間)となってしまいます。そのため12月31日に鏡餅を飾るのは避けたほうがよいでしょう。
飾り方の順番
鏡餅のきれいな飾り方のコツは、準備した道具・飾り・品物を飾り付ける順番に並べておくことです。(地域特有の飾りなどを除くと)鏡餅の飾り方は、下から順に「三方→四方紅→裏白→ゆずり葉→御幣→餅→橙→末広」です。基本的な飾り方でもこれだけの品数が必要なので、面倒でも順番に並べるのがコツといえます。
鏡餅の飾り方【処分編】
鏡餅は1回限りの正月飾りなので、飾る期間が終われば適切に処分することになります。処分する物の中には餅のほかに四方紅や裏白、三方などの道具の片付けもあります。しかもすべてのアイテムが神様と関係するものなので、よい1年をスタートさせるためにも正しく鏡餅を処分しましょう。
いつまで飾るべき?
鏡餅をいつまで飾るべきなのかに関する考え方は、宗教や地域の風習によっても変わります。一般的には鏡餅などの正月飾りは松の内までは飾ることになっているので、松の内が明ける1月11日までとすることが多いです。
「いつまで」の解釈は地域によって違う
鏡餅に関する風習は、日本の宗教である神道と密接に関係します。日本の神様は農業に関する神様が多く、地域の風習は農作業のスケジュールによって決められてきた歴史があるのです。その名残から地域によって「いつまで」の答えが違います。ちなみに京都地域では1月7日までですが、京都以外の関西地方は1月15日までです。
真空パックならいつまで飾っていてもよい?
近年は真空パックされた切り餅を詰めた簡易的な鏡餅が多く、このような鏡餅に対して「賞味期限内ならいつまでも(数年またぐ期間)飾っても大丈夫なのでは?」という意見があります。これは食の安全性だけなら、賞味期限内であればOKです。ただし鏡餅の意味から考えれば、「松の内を過ぎたら食べて処分」が正しいでしょう。
餅の処分
鏡餅のメインである餅は、飾り終えたら家族で食べるのが正しいやり方です。餅を食べることで神様に1年間災厄から守ってもらうので、食べずに捨てると加護が授かりません。なお餅の食べ方に決まりはありません。昔は雑煮にする食べ方が一般的でしたが、ぜんざいなど甘味にする食べ方もOKです。
食べ方の注意
鏡餅の食べ方で注意しなければいけないのは、切り分けるときに包丁を使わないことです。このような注意がある理由は、鏡餅が神様の依り代であることに由来します。「ぬるま湯にしばらく浸す」「水につけたあと電子レンジで加熱する」などの方法は、包丁を使わない鏡餅の食べ方としておすすめです。
飾り物・道具の処分
鏡餅の飾り物の処分方法は、「ごみとして処分」「神社でお焚き上げしてもらう」などがおすすめです。燃えるゴミに出す場合はほかのごみと一緒にせず、個別の袋に入れ上から塩で清めてからごみに出します。三方などの道具も塩で清め、清酒を含ませた布で軽く拭いたら乾いた布でから拭きして箱にしまいましょう。
まとめ
正月飾りとして鏡餅を飾る風習は、現代の日本各地に残ります。鏡餅をいつからいつまで飾るのかなど、身近な風習だからこそ知らないこともたくさんあるでしょう。そんな鏡餅も近年ではライフスタイルにあわせて自己流にアレンジする人も増えています。正しい意味を知りつつ自分らしく飾ってみてはいかがですか?
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