クララとは
クララは本州、四国、九州などの草原や山野、道端、土手などに自生する薬草です。とくに日当たりのよい環境で大株になって育ちます。近年ではクララの自生地が減少傾向にあり、一部の一域では絶滅危惧種となっています。
基本情報
園芸部類 | 薬草 |
形態 | 多年草 |
樹高・草丈 | 約50~150cm |
花の色 | 淡黄~淡緑色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 |
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栽培の可否 | 可 |
名前の由来
クララという和名は、根をかむとクラクラするほどの苦みを感じることに由来します。女性の名前と間違われそうですが、クララは日本在来の薬草であり、眩草と書いてクララと読み、れっきとした和名です。本来ならクララグサ (眩草)と読むところですが、クララグサが転じてクララになったといわれます。
クサエンジュなどの別名
クララは同じマメ科の樹木であるエンジュ(槐)に似ていることからクサエンジュ(草槐)という別名をもちます。クサエンジュ以外にもクララは別名を多くもつ植物です。地方によっては、ヒロハクララ (広葉眩草)、キツネノササゲ(狐の大角豆)、マイリグサ(末比里久佐)とも呼ばれます。
エンジュとの共通点と違い
クララによく似たエンジュ(槐)は同じマメ科クララ属ですが、クララは多年草、エンジュは落葉低木であるというのが大きな違いです。草本と樹木という違いはありますが、葉や花、果実の形が似ている、花、つぼみ、莢(サヤ)などに薬効をもつなどの共通点があります。この違いと共通点がクララがクサエンジュと呼ばれる理由です。
花言葉
クララの花言葉は「個性的な」です。そのユニークな名前からこのような花言葉が与えられました。名前だけではなく健康に有効な薬効と中毒性をもつことが、花言葉「個性的な」の理由かもしれません。
クララの特徴
特徴①花
クララの開花時期は6月です。マメ科の花によく見られる蝶のような形の花を穂状につけます。淡黄~淡緑色の5枚の花びらをもち、花のつけ根に蜜腺があります。クララの花にはオオルリシジミなどの昆虫が蜜を求めてやってきます。オオルリシジミはクララだけを食草とする昆虫なので、クララがなければ生きていけません。
特徴②葉
クララは15~25cmほどの葉軸に長さ2~3cmの長い楕円形の小葉を互い違いにつけます。
特徴③実
クララの果実はマメ科の植物らしく莢(さや)状です。莢は円柱形でいくつかのくびれがあり、先端が長くのびて尖ります。中には数個の種子がはいります。
特徴④根
クララの根は周皮を取り除いて乾燥させると生薬クジン(苦参)になります。根にはとくに強い苦みがあるのが特徴です。薬用として使われますが、毒性が強いため民間の薬用としての使用は避けてください。
特徴⑤有毒性
クララは全草に毒性をもつので取り扱いには注意が必要です。とくに根の部分は毒性が強いため専門知識がない場合は摂取しないでください。多量に摂取すると中毒症状がでやすいといわれます。有毒性のため食用としての使用はできません。
クララの効果・効能
効果・効能①胃の働きを整える
クジンは胃の働きを整える健胃作用が認められています。胃薬や止瀉薬(下痢止め)として煎じ液を服用する際は副作用に注意が必要です。多量に飲みすぎると中毒症状につながることがあるので、民間薬としての服用は避けてください。
効果・効能②デトックス作用
クジンには利尿作用が認められています。尿とともに毒素を体外に排出するため、デトックス作用が期待できます。
効果・効能③解熱作用
クジンは体温を下げる解熱作用をもつといわれます。病気を治す作用ではありませんが、一時的に熱を下げることで症状を和らげ、体の回復をうながす働きが期待されます。口が乾く、手足がほてるなどの症状にもクジンは効果的です。
効果・効能④抗炎症作用
炎症や痛みを軽減する抗炎症作用もクジンの薬効のひとつです。クジンは炎症による腫れもののほか、急性胃炎、膀胱炎などの炎症をおさえるための治療薬に用いられています。
効果・効能⑤かゆみ改善
クジンは激しいかゆみにも効果が認められています。炎症性の腫れのほか、あせも、たむし、水虫、ただれなどの皮膚疾患に煎じ液を外用します。入浴剤として使用するのもおすすめです。漢方薬では苦参湯(クジントウ)、蛇床子湯(ジャショウシトウ)、消風散(ショウフウサン)などに配合されます。
効果・効能⑥殺虫作用
クララの特徴的な用途は殺虫剤です。クララは農作物の殺虫、家畜の皮膚につく寄生虫の駆除剤として使用されます。全草約300gを水5Lで約40分煎じた液を農業用の殺虫剤として用います。
クララの自生地を守る活動を!
強い苦み、多くの薬効と毒性をあわせもつ個性的な薬草クララですが、地域によっては絶滅危惧種に指定されるほど数が減っているのが現状です。クララを食草とするオオルリシジミも同じように数を減らしているので、種子の採取や株分けによって自生地を守る活動も行われています。
出典:写真AC