ハタケニラ(畑韮)とは?
名前 | ハタケニラ |
和名 | 畑韮 |
学名 | Nothoscordum gracile |
分類 | ネギ亜科:ステゴビル属 |
高さ | 30cm~60cm |
開花時期 | 5月~6月 |
園芸用として北アメリカから渡来した植物
ハタケニラ(和名:畑韮)は北アメリカ原産の植物で、日本への渡来は明治中期になります。園芸用としてもたらされましたが、野生化が進み帰化植物に認定されています。日本では畑や道端などに自生し、知らないうちに花壇へ種が運ばれ成長していることもあります。
ニラ臭はしない
植物の姿がニラに似ているだけで、ハタケニラの葉や茎からニラ臭はしません。またニラ臭だけでなく球根は玉ねぎやニンニクに似ていますが、これらも同じように臭いはありません。
学名の意味
ハタケニラの学名は「Nothoscordum gracile(ノソスコルドムグラァサァル)」で、ギリシア語の「nothos=偽:scordum =ニンニク」と、「gracile=細長い」という意味をもちます。
ハタケニラの特徴
特徴①球根
鱗形と呼ばれる塊状の球根
球根の大きさは1cm~1.5cmほどで色は白く、根っこの一種「鱗形(リンケイ)」と呼ばれる塊状になっています。球根は親となる球根のまわりに子供の球根(ニンニクに近い形のもの)がたくさんつき、親と子どちらの球根からも根が生えてきます。
「鱗形」とは玉ねぎのように複数の葉「鱗状葉(リンジョウヨウ)」を重ねてできている地下茎のことです。
特徴②葉
30cmほどの長さに伸びる葉
葉の色は緑色で枯れはじめると黄色や茶色に変色し、葉の表面にうっすらと複数の縦筋が入ります。長さは30cmほど細長く伸び、しなやかで柔らかいのが特徴です。茎から数枚の葉が生じます。
特徴③花
花茎の先に白い花を咲かせるハタケニラ
葉とは違って硬さのある花茎は50cmほどの長さに伸びます。先端から柄を数本伸ばしてうす桃色のつぼみをつけ、そのごうす桃色の筋をもつ直径1.5cmほどの白い花を咲かせます。花は6枚の花びらをもち、中心に1本の雌しべ、雌しべを囲むように6本の雄しべが並び、花が終わるとガクが種子を包む形になります。
夏前に咲く花
花の季節は5月~6月です。先に咲いた花柄のあいだから別の花柄が伸び、つぎつぎに花を咲かせていきます。
特徴④種子
黒くツヤとシワがある種子
乾燥したガクは3つに裂け、なかの種子がむきだしになり、1つのガクの中におよそ9粒ほどの種子をもちます。種子は黒くツヤとシワがあり、大きさは約2mm~3mmほど、わずかに先を尖らせたしずくのような形をしています。
ハタケニラの花言葉
花言葉は「素直なこころ」
ハタケニラは「素直なこころ」という花言葉をもっています。まっすぐに伸びる茎や、ニラのように特有の臭いをもたない癖のなさが花言葉にあらわれています。
つぎのページでは、ハタケニラの駆除について解説していきます!
ハタケニラの駆除
球根と種子で増えるハタケニラ
ハタケニラは球根と種子で繁殖していく植物で、球根も種子も数が多いことから繁殖地を大きく広げる傾向にあります。そのため日本固有植物への影響が懸念され、とくに農地での繁殖が問題になっています。
増えたら駆除が必要
庭や農地に生えたハタケニラをそのままにしておくと、土の栄養分がたくさん吸収されて痩せた土になり、ほかの植物へ栄養がまわらなくなります。またハタケニラはウイルスを寄せる宿主になりやすく、増える前の予防駆除が大切になります。
以下、詳しい駆除の方法3つを見ていきましょう。
駆除方法①引き抜く
株全体を引き抜く方法は、ハタケニラが増えるのを抑えるもっとも有効な方法です。ただし土のなかに子球根を残してしまうとそこから芽をだしてくるので、親球根だけでなく子球根もしっかり土のなかから掘りだしましょう。
引き抜く際の注意点
ガクが乾燥しているときやガクが開いて中の種子が外へでているときに引き抜くと、種子がこぼれ落ち繁殖を広げることになるので、株の引き抜きはハタケニラが大きく成長する前に済ませます。
駆除方法②刈り取る
種子ができる前に刈り取り、種子から増えるのを防ぎます。ハタケニラの種子の数は1株あたり数十~数百とかなり多いため、種子ができる前に刈り取ることで繁殖範囲を抑えることができます。
駆除方法③除草剤をまく
雑草用の除草剤を使って茎や葉を枯らし繁殖を防ぎます。除草剤も種子からの繁殖に効果的ですが、球根には効き目がなく、翌年球根から発芽するので、除草剤と株の引き抜き作業を合わせることをおすすめします。
ハタケニラに似た植物①ニラ
名前 | ニラ |
和名 | 韮 |
学名 | Allium tuberosum |
分類 | ヒガンバナ科:ネギ属 |
高さ | 20cm~30cm |
開花時期 | 8月~10月 |
弥生時代に日本へ渡来したニラ
ニラ玉やレバニラなど、さまざまな料理に使われているニラ(和名:韮)は多年草の植物です。中国原産のニラが日本へ渡ってきたのは弥生時代と古く、栄養や食物繊維が豊富なニラは健康によい野菜として親しまれています。また育てやすい野菜でもあり、多年草のため翌年も同じ場所から新芽をだして成長します。
ハタケニラとニラの違い
ハタケニラとニラは葉や花のようすがよく似ていますが、観察すると少しづつ違うのが分かります。ニラのような臭いがしないことも違いのひとつで、そのほかにハタケニラの葉には筋があり、そこからVの字型に折れ曲がっていますが、ニラの葉は平たく筋も目立ちません。ハタケニラの葉は食用にならないという違いもあります。
花の違い
ニラのほうがハタケニラより花のサイズが小さめで、ハタケニラの花は花びらが開ききらないのに対し、ニラの花は花びらが開ききって咲きます。
ハタケニラに似た植物②ステゴビル
名前 | ステゴビル |
和名 | 捨小蒜 |
学名 | Caloscordum inutile |
分類 | ネギ科:ネギ属 |
高さ | 15cm~30cm |
開花時期 | 9月~10月 |
在来種のステゴビル
ユリ科のステゴビル(和名:捨小蒜)は日本固有の植物です。古くは日本各地の山野や野原に自生していましたが、環境の変化やハタケニラのような帰化植物の影響によって数が激減し、今では限られた地域でしか見ることができません。そのためステゴビルは特定の自生地で天然記念物に指定され、複数の県で絶滅認定もされています。
和名の由来
ステゴビルも葉は食べられず、ニラ臭もありません。そのため食用になるニラやノビルと比べて、「役に立たない」「捨てててもかまわない」などのイメージがつき、そういったイメージが和名の由来になっています。
ハタケニラとステゴビルの違い
花色はどちらも白ですが、ステゴビルの花びらは細めでハタケニラのように花びらに桃色の筋はなく、花びらの開き方もハタケニラよりすこし大きく開きます。
まとめ
ハタケニラは園芸用として渡来した理由も納得の、可憐で美しい花を咲かせます。植物や作物を守るために庭や農地での駆除もときに必要ですが、適度な繁殖防止にとどめ、本来の園芸用・観賞用の植物として親しんでいきたい植物です。
出典:写真AC