ヨシとは
水辺の至るところに見られるヨシは、繁殖力が強くどんどん広がって大きなヨシ原をつくり、休耕田などにも繁殖しやすいため、厄介者の印象が強い植物です。しかし、ヨシは昔から日本の生活には欠かせない重要な植物です。そんな、ヨシについてくわしく見ていくことにしましょう。
基本情報
和名 | ヨシまたはアシ(葦) |
別名 | ヨシまたはアシ(芦、蘆、葭) 浪速草(ナニワグサ) 浜荻(ハマオギ) |
学名 | Phragmites australis |
英名 | Common reed |
科名 | イネ科 Poaceae |
属名 | ヨシ属 Phragmites |
形態 | 多年草 |
名前の由来
日本の在来植物ヨシはアシとも呼ばれ、同じ植物を指します。本来はアシと呼ばれていましたが、「悪し」に通じることを嫌がって「ヨシ」(良し)と呼ぶようになりました。万葉集では日本の別名として、豊かにヨシ原が茂り、毎秋にイネが穂を実らせる国という意味をもつ「豊葦原千五百秋瑞穂国(とよあしはらのちいほあきのみずほのくに)」と記されます。
植物としての特徴
ヨシは川辺、湖畔、湿地などに群生し、緑色の茎は直立して高さは1~5mになり、硬く中が空間の円柱形で枝分かれはありません。葉は長さ約50cm、幅約5cmの細長い形で笹の葉に似ています。8~9月にススキに似た花穂をつけ、紫~紫褐色の花をつけます。地下の根茎が泥中を横に這うように成長し繁殖します。
ヨシの生育カレンダー
ヨシの管理
ヨシ刈り
ヨシがすっかり枯れてしまったら年に1回収穫します。地上部は抜けがらのようなものなので、切り取ってしまっても問題はありません。むしろ刈り取りことで翌年には立派なヨシが成長するといわれ、ヨシ刈りをしないとヨシ原が荒れてしまうことが多いのです。
火入れ
ヨシ刈りの後に雑草を敷き詰め乾燥させたら火をつけてヨシの根元の部分を焼きます。この火入れの作業を施すことで雑草の種子や病気の原因になるものを焼いてしまいます。ヨシの地下茎は土中を這うので火の影響を受けることなく、春になれば地上に新しい芽を出します。
ヨシの種類
ヨシは水面から50cm前後に多く水辺に大群落を作ります。ヨシの他の種類は、河川に多いツルヨシ、水辺より高い所にはえるセイコノヨシで、琵琶湖にはこの3種類が確認されています。ツルヨシは琵琶湖で見られることは少なく、セイコノヨシが日本北部に生息しないことが大きな特徴です。
ヨシの働き
茎が柔軟なヨシは風が吹いて倒れても、折れることなく起き上がって、やがて上に向かってのび、広がって大きなヨシ群落をつくります。多くの魚や鳥が住むヨシ群落が環境に及ぼす影響や働きなどを詳しく見ていきましょう。
水を浄化する
ヨシが水を浄化する働きについては、次の3つがあげられます。
1.ヨシが生えていることによって水の流れが弱まり、水中の汚れを沈める
2.水中のヨシの茎につく微生物、土中の微生物による汚れを分解する
3.水中の窒素やリン酸をヨシが養分として吸い取る
魚の隠れ家
ヨシの群落には魚の卵が多く産み付けられ、小魚たちは敵から身を守るための隠れ家としてヨシを利用して育ちます。さらにコイやゲンゴロウブナの魚や貝、カニなど多くの生物が餌場としてヨシの周りに住んでいるのです。
鳥のねぐら
野鳥の中にもヨシ群落を利用するものがいます。ヨシに隠れるように卵を産み、ヒナを育て、敵から身を隠し、エサを採り、ねぐらなどとして利用します。ヨシ群落はカイツブリやカルガモが産卵しヒナを育てる場所であり、スズメやツバメには安心して眠れる宿なのです。
次のページでは、ヨシの利用法と花言葉をご紹介します。
出典:筆者作成