オオバナサイカクとは
オオバナサイカクの基本情報
名称 | オオバナサイカク |
和名 | 大花犀角 |
学名 | Stapelia grandiflora Masson |
植物分類 | ガガイモ科(キョウチクトウ科)・スタぺリア属 |
原産地 | 南アフリカ |
オオバナサイカク(大花犀角)は、属名をとって「スタペリア」や「悪魔の花」と呼ばれたりしています。オオバナサイカクはガガイモ科(キョウチクトウ科)・スタペリア属に分類される多肉植物の仲間ではありますが、トゲはなく、サボテンではありません。スタペリア属には現在、50種類ほどの種が分類されています。
新分類法によってキョウチクトウ科に再分類された
オオバナサイカクをはじめとした「ガガイモ科」は独立した科でしたが、DNA解析データをもとにする新分類法(1998年~)により「キョウチクトウ科」に含まれるようになりました。ガガイモ科は特徴的な見た目の花を咲かせる種が多いため、「キョウチクトウ科」となった今でも愛好家たちからはそのまま「ガガイモ」と総称されています。
ボタニ子
「悪魔の花」と呼ばれる理由
オオバナサイカクが「悪魔の花」と呼ばれる理由は、強烈な臭いとグロテスクな見た目にあります。チョウやハチといった虫ではなく「ハエ」を花粉媒介に利用することで競争相手を減らし、過酷な自然界を生き抜いてきました。
理由①臭い
オオバナサイカクの花が開くと、あたり一面に動物の死肉が腐ったような腐肉臭が漂います。森を訪れた人がオオバナサイカクの花から漂う死肉のような臭いを嗅ぎ、その強烈な臭いから「悪魔の花」と呼ぶようになりました。オオバナサイカクの出す腐肉臭と似た臭いをもつほかの植物としては、「ラフレシア」や「ザゼンソウ」があげられます。
腐肉臭でキンバエを誘引する
オオバナサイカクはキンバエを誘引するために、花から腐敗臭を漂わせるようになりました。キンバエが動物の死肉を食べる習性を利用しているのです。キンバエの成虫により産みつけられた卵はやがて孵化し、幼虫のウジムシが花の中を動き回って花粉を媒介します。
②見た目
オオバナサイカクの花期は9~10月です。色は赤紫色で直径15cmほどですが、中には40cmになる品種もあります。花弁の先端になるほど細長くなり、ツノのようにみえるため、「犀角(サイのツノ)」という漢字がつきました。ほかにも花弁が広がった形が、海辺のヒトデにもたとえられます。さらに花弁には波状の模様がつき、大量の毛が密生している姿はまさに「悪魔の花」のようです。
見た目でもキンバエを誘引
オオバナサイカクの花の色や花びらについた波の模様は、死肉に似せているという説があり、ハエが死肉を好む習性を利用しているのでしょう。また、花弁についている無数の毛は、卵や孵化したウジムシが花の中にとどまりやすいようにする構造になっています。オオバナサイカクは臭いでハエをおびき寄せるだけでなく、見た目でもハエをおびき寄せ、受粉に利用してきたのです。
花は一日で枯れてしまう
これほど存在感あるオオバナサイカクの花ですが、開花後はどんどんと花弁が反り返っていき、一日ほどで枯れてしまいます。オオバナサイカクの臭いと見た目におびき寄せられたハエたちは、受粉に利用された後は食べるものもなく死にます。
ボタニ子
インパクトある見た目と強烈な臭いから「悪魔の花」と呼ばれるようになったんですね。ほかにはどんな特徴があるのかみてみましょう。
オオバナサイカクの特徴
オオバナサイカクは、花の見た目や臭い以外にもさまざまな特徴があります。サボテンのような茎やつぼみの形、花弁の触感など、ほかの植物にはない魅力があるといえるでしょう。
特徴①四角柱の形をしたサボテンのような茎
オオバナサイカクの茎は四角柱のような形状をしており、何本もの茎がサボテンのように上へ向かって伸びます。いかにもトゲを持つような見た目ですが、トゲはありません。このことからサボテンではなく多肉植物であることがわかります。
サボテンと間違って購入してしまう人も
茎だけの状態をみたオオバナサイカクの苗をサボテンと間違って購入し、花が咲いて悪臭に驚く人もいます。オオバナサイカクは花が咲かない限りは悪臭がないからです。
特徴②紙風船のようなつぼみ
オオバナサイカクのつぼみは紙風船のような形をしており、キキョウのつぼみを見たことがある人は想像しやすいかもしれません。開花後の姿は特徴的ですが、大きな花が開く前の大きく膨らんだつぼみも非常に特徴的といえます。開花がはじまると、割れたつぼみの隙間から無数の毛がみられ、「悪魔の花」の片りんを感じさせられるでしょう。
特徴③花弁は皮膚のような触感
オオバナサイカクの花びらは厚みがあり、触った感覚は「皮膚」のようだともいわれます。直径15cmにもなる大きな花びらが皮膚のようなずっしりとした質感をもち、毛もびっしりと生えているとなるとかなりの存在感です。
個性的で精巧な花の造形にファンも多い
オオバナサイカクをはじめとしたガガイモ科に分類される多肉植物の花は、どれも個性的で非常に精巧な造形をしています。「悪魔の花」と呼ばれる一方で、見れば見るほど不思議な姿に魅了される人も多いふしぎな植物です。
オオバナサイカクが見られる場所
オオバナサイカクは、日本の植物園などで観察できます。臭いや花の姿を実際にみてみたい人は訪れてみましょう。命に限りある植物なので、オオバナサイカクを目的に訪れる際には元気に生育しているか、花はみられるのかなど事前に確かめてからおでかけするのがおすすめです。
①とちぎ花センター
とちぎ花センターの発信によって、オオバナサイカクが知られるところとなりました。とちぎ花センター内の「とちはなちゃんドーム砂漠室」では、毎年オオバナサイカクが開花しており、開花の様子はブログでも発信されています。ほかにもめずらしい植物が多く、企画展や体験コーナーも充実しているため、植物好きには見ごたえある施設でしょう。
とちぎ花センターの所在地
②名古屋市立東山植物園
名古屋市立東山植物園の温室で、オオバナサイカクが栽培されています。名古屋市立東山植物園は古い歴史をもち、中でも温室の「前館」は国の重要文化財に指定されているほどです。植物園だけではなく、建築物としても楽しめるでしょう。動物園と併設されているため、一日楽しめる魅力的なスポットです。
名古屋市立東山植物園の所在地
③ときわミュージアム
山口県宇部市の「ときわ公園」内にある「ときわミュージアム」の温室内では、オオバナサイカクをはじめとした世界の珍しい多肉植物や熱帯植物が栽培されています。ほかにもときわ公園内には野外彫刻が常時展示されており、ゆったりとした時間の中で芸術と自然の両方を楽しめるでしょう。
ときわミュージアムの所在地
生存競争を勝ち抜く悪魔の花オオバサイカク!
オオバナサイカクは、一度目にすると忘れられないような見た目と強烈な腐敗臭をもつ植物です。死肉を思わせるグロテスクな見た目や不快な臭いも、次世代へ命をつなぐための生存戦略であることがよくわかりました。自分で動くことのできない植物たちは、実にさまざまな生存戦略をとって厳しい自然を生き抜いてきたのでしょう。自宅での栽培もできるので、挑戦してみてはいかがですか。
キョウチクトウ科で有名な「夾竹桃」の記事はこちらです。夾竹桃も魅力的で個性的な植物ですよ。