天使の名前を持つバラがある
バラは古くから人々に愛され、品種改良され続けてきた植物です。そのためバラの種類および園芸品種の多さは、世界に存在する植物のなかでも群を抜いています。一般に流通しているバラには、商品名として特定の名前がつけられます。名前の由来は、バラによってさまざまです。そのなかには実在の人物や地名、さらには天使や神話の登場人物といった架空の存在が由来のものがあります。
しかも複数の種類があって、シリーズ化されているんだ。「ヘブンシリーズ」と呼ばれているよ。
ヘブンシリーズとは
ヘブンシリーズとは、岐阜県揖斐郡大野町にある「河本(かわもと)バラ園」が育種・販売しているバラの品種群です。いろいろな種類のバラがありますが、旧約聖書の「創世記」を題材にしたキリスト教文学作品「失楽園」に登場する天使の名前をつけられている、または天使の特徴にちなんだ名前がつけられているという特徴があります。
「失楽園」は17世紀の英国詩人ジョン・ミルトンが著した叙事詩です。天地創造~アダムとイブのエデンの楽園追放までの歴史を描いています。
ヘブンシリーズの作出者は?
ヘブンシリーズを作出したのは、バラ育種家の河本純子氏です。「ブルーヘブン」「ミスティパープル」「ラ・マリエ」など、数多くの傑作バラを作出しています。河本氏のバラは気品ある雰囲気、繊細な花色、優美な香り、やわらかな花形が特徴です。毎年発表される最新品種はバラの愛好家だけでなく、国内外のバラ育種家からも注目されています。
ヘブンリーシリーズを選ぶときは大苗か鉢苗を
バラ苗は大きく分けると春に出回る新苗、秋に出回る大苗、春と秋の両方に出回る鉢苗の3種類があります。新苗は接ぎ木して時間があまり経過していない若い苗、大苗は新苗を育てて秋に掘り上げた苗、鉢苗は開花するまで育てた苗で「開花苗」とも呼ばれる充実した苗です。繊細で育てにくい品種が多いヘブンシリーズの場合は、新苗よりも充実している大苗や鉢苗がおすすめです。
大苗や鉢苗は値段は高いですが、充実しているぶん株が成熟するのも早いんですよ。
もちろん新苗にも「値段が安い」「早い時期に購入できる」「自分の理想通りの株姿に仕立てやすい」といったメリットがあるよ。
天使のバラ①ミカエル
バラ苗 ミカエル (HS赤)
参考価格: 3,980円
ミカエルは真紅の花色と、半剣弁高芯(はんけんべんこうしん)咲きの端正な花形が特徴の品種です。樹高は1m、バラの種類としてはブッシュ系に属するバラで、2008年に作出されました。香りは弱めですが、真紅の大輪の花が優雅に咲く姿は非常に魅力的です。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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名前の由来
ミカエルはガブリエル、ラファエル、ウリエルとともに「四大天使」と呼ばれる偉大な天使です。天使のなかでも特に神に近い存在とされており、悪魔との戦いでは最前列で指揮を執るといわれています。「失楽園」ではアダムをエデンの楽園から追放する役目を担いました。
ミカエルの育て方
ミカエルは、耐陰性がやや低い品種です。鉢植えも地植えも、日当たりがよい場所で栽培しましょう。耐寒性も低く、暖地以外の地域では鉢植え栽培がおすすめです。黒点病とうどんこ病にかかりやすいため、定期的な薬剤散布などの病害虫対策は丁寧に行いましょう。
天使のバラ②ガブリエル
【ガブリエル (FL) 中輪 四季咲き】
参考価格: 5,432円
ガブリエルは2008年に作出されたヘブンシリーズの代表品種です。バラの種類としては、シュラブ系に分類されます。純白の花の中央に淡い紫色が入る絶妙な花色、フリルのような花びらが幾重にも重なる花形、「上品でエレガント」と評される強い香り、繊細ではかない雰囲気が多くのバラ愛好家を魅了しました。ヘブンシリーズのなかでも特に高い人気を持つバラです。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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ガブリエルは樹高1mというコンパクトさと、繊細な性質で少し管理が難しいことから、鉢植え向きの品種とされています。
ガブリエルは栽培管理が少し難しいから、上級者向けの品種ともいわれているんだ。でも花の美しさから、初心者でも買う人が多いそうだよ。
名前の由来
ガブリエルは「四大天使」にもあげられる有名な天使です。神の言葉や意思を人間に伝えるという重要な役目を担っています。キリスト教の有名な場面である「受胎告知」で、聖母マリアにキリストの受胎を告げる天使もガブリエルです。「失楽園」では、エデンの楽園を統治する天使として登場しました。
ガブリエルの育て方
ガブリエルは樹勢が弱いことから、株が成熟する3年~5年までは刺激を与えず、葉を落とさないように管理するのが基本です。強剪定は枯れ込む原因になるため避けましょう。冬剪定も枝先を切って軽く整える程度にとどめます。耐陰性も低いので日当たりのよい場所で育てましょう。栽培方法は鉢植え栽培がおすすめです。こまめな株の観察と定期的な薬剤散布で、病害虫もしっかり予防します。
病気や害虫の発生は葉を落とし、株を衰弱させてしまいます。ガブリエルが枯れる原因にもなるので、しっかり予防しましょう。
ガブリエルの栽培方法は鉢植え栽培が基本だよ。樹勢が弱くて水やりの管理が少し難しいから、地植えだと枯れてしまう可能性が高いんだ。
水やりの管理と摘蕾も重要ポイント
ガブリエルは水の吸い上げ力が弱い品種です。水やりの際は土の表面を見るだけでなく、指で2cm~3cmほど掘って土の状態を確認しましょう。表面が乾いていても、土が湿っている場合があるからです。土の表面だけではなく、その下の土がある程度乾いてから水を与えましょう。また、ガブリエルは株が成熟しないうちに花を咲かせていると株が弱ってしまうため、摘蕾作業も必要です。
ガブリエルは植え付け後3年~5年までは、株を肥やして枝数を増やすことを優先しましょう。花は摘蕾で年に数輪程度にとどめます。
摘蕾とはつぼみ(蕾)が小さいうちに摘み取る作業のことだよ。開花を抑えたぶんのエネルギーを、株を太らせる方向に回すんだ。
天使のバラ③ラファエル
【バラ苗】 ラファエル 大苗 木立バラ
参考価格: 5,361円
ラファエルは2008年に作出された、樹高1m~1.5mのシュラブ系品種です。半つる性のしなやかな枝、明るい濃ピンクの花色、花びらをギュッとつめた花形が特徴です。香りは強くありませんが花つきがよく、満開時はとても華やかな印象を与えます。
おすすめ度 | ★★★☆☆ |
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名前の由来
ラファエルは四大天使の一人です。癒しを司る温和な性格の天使と伝わっています。失明した人の目を癒したり、ヘブライ人の族長ヤコブが天使と格闘した際、外してしまった関節を戻したりしたという話が有名です。「失楽園」では、アダムとイブにサタン(悪魔)の誘惑について警告する天使として登場しました。
ラファエルの育て方
ラファエルは繊細な品種が多いヘブンシリーズのなかでは比較的丈夫で、初心者でも育てやすい種類のバラです。基本的な手入れをしっかり行えば問題なく育ちます。花つきがよく、あまり大きくならないため鉢植えにすると、とても見栄えがよい鉢バラになるでしょう。シュラブ系特有のしなやかな枝を活かし、オベリスク仕立ての鉢植えにするのもおすすめです。
ボタニ子
次は「天使のバラ④ウリエル」だよ。
じつは、天使の名前を由来とするバラが日本にあるんですよ。