シャクトリムシの種類別にみる生態と被害
シャクトリムシは日本に約800種類ほどいますが、その中でも特に多くの食害をもたらしている種類がいくつかあります。今回は特に害虫被害で挙げられる3種類をピックアップしてご紹介します。
ヨモギエダシャク
生態
ヨモギエダシャクの幼虫の姿は、黄緑色か茶色のものがほとんどです。発生頻度としては年に3〜4回で、5〜10月にかけて偏りなく発生します。発生後は枝に吐き出した糸でぶら下がり風に乗って、周辺の植物に分散します。
成虫
ヨモギエダシャクの成虫は、白色にベージュの模様の羽を持っています。また成虫になると、灯火に集まる習性があります。
被害
ヨモギエダシャクはさまざまな植物を食害する多食性の種類です。特に茶樹は樹高が低く幼虫があまり分散しないため、集団で食害をすることになり、被害が大きくなってしまいます。しかし他の植物の場合は、単独での食害のため、被害はあまり大きくなりにくいです。
ユウマダラエダシャク
生態
幼虫の姿は黒い色の地に黄色い模様がついています。初期の幼虫は集団で活動しますが、やがて分散して単体で動きます。発生頻度としては年に2回、特に5〜6月と9〜10月に多く発生します。冬は蛹の状態で越します。
成虫
成虫になると、黒い見た目から白い羽に灰色の斑点模様がある姿へと成長します。卵は葉脈や葉の縁などに1列に産み付けます。
被害
ユウマダラエダシャクはマサキでよく見られる食欲旺盛な種類です。初期の幼虫は集団で行動するため、幼虫が多発した場合は、葉が全て食べ尽くされることがあるので注意してください。しかしユウマダラエダシャクは多食性ではないため、マサキ、ツルマサキ、ニシキギの3種類以外ではあまり発生しません。
ウメエダシャク
生態
ウメエダシャクの幼虫は黒い色の地にオレンジの模様がついています。発生頻度としては年に1回で、時々多発する場合があります。冬は幼虫の姿のまま越して、その後葉の上で蛹となって5〜6月に羽化します。
成虫
ウメエダシャクの成虫は、黒いしま模様の羽を持っています。また一般的に蛾は夜行性ですが、ウメエダシャクの成虫は昼間に木々の間を飛び回ります。そしてまるで蝶々のように止まる姿がよく見られます。
被害
ウメエダシャクは多食性の種類で、ウメやモモ、サクラなどでよく見られます。もしもウメエダシャクが発生すると、果樹の新葉が食べられ果実のつきが悪くなったり、果実の表面を食害して品質を落としたりすることがあるので、注意してください。春の新芽が出始める時期には、集団で食害をし、大きな被害が出る恐れもあります。
シャクトリムシの駆除
続いてはシャクトリムシが実際に発生した場合の駆除の方法についてご紹介します。駆除の方法は「捕殺」と「殺虫剤」の2通りがあります。幼虫の成長段階や被害状況の大きさに合わせて対処しましょう。
捕殺
シャクトリムシは団体ではなく、単体で活動しているものがほとんどです。そのため被害が大きくなければ、基本的に割り箸などで捕まえて駆除することをおすすめします。
殺虫剤
薬剤は初期段階の幼虫には効果がありますが、大きくなればなるほど効果が薄くなってくるため注意が必要です。しかし大量発生を防いだり、初期の幼虫には効果が大きいため、薬剤を上手く活用してくださいね。ここからはシャクトリムシに効果のあるおすすめの薬剤をご紹介します。
①アファーム乳剤
【殺虫剤】アファーム乳剤 500ml
参考価格: 9,523円
こちらは食毒タイプの殺虫剤です。害虫には影響がありますが、効果は長く効かないため、露地栽培でも使用が可能です。しかし2回以上使用する場合は、2週間以上空けて使用してください。また目に対して刺激性が強いため注意して使用するようにしましょう。
②ノーモルト乳剤
殺虫剤 ノーモルト乳剤 500ml
参考価格: 5,515円
こちらはチョウ目の害虫に効果のある殺虫剤です。特に幼虫の脱皮を阻害する作用が主な効果です。効果が効き始めるのは遅いですが、効果の持続時間は長いです。しかしカイコや甲殻類、テントウムシやヒメハナカメムシの幼虫にも影響があるため、注意が必要です。
③フェニックス顆粒水和剤
殺虫剤 フェニックス顆粒水和剤 100g
参考価格: 2,420円
こちらはチョウ目に効果のある選択性殺虫剤です。そのため有用昆虫への影響は小さいですが、一部カイコなどには影響があるので注意してください。また目に対して刺激性が強いため注意して使用しましょう。
④マッチ乳剤
マッチ乳剤 500ml 殺虫剤
参考価格: 5,850円
こちらはチョウ目の害虫に対して効果のある殺虫剤です。特に幼虫の脱皮を阻害する作用が主な効果です。しかしカイコや甲殻類、テントウムシやヒメハナカメムシの幼虫にも影響があるため、注意が必要です。またかぶれやすい体質の人には刺激が強いため使用しないでください。
シャクトリムシの発生原因と対策
シャクトリムシの食害を防ぐために、まずは発生しにくい環境を作ることも大切です。そこで考えられるシャクトリムシの発生原因と日頃の対策についてご紹介します。
原因
落ち葉や枯れ枝などがそのままになっている
落ち葉や枯れ枝などを放置するということは、シャクトリムシの生育環境を整えることに繋がります。仮に落ち葉や枯れ枝、または雑草などにシャクトリムシが発生しても、なかなか気づくことは難しいでしょう。少しでもシャクトリムシの生育環境を作らないように注意しましょう。
湿っぽい環境である
日光が届かない湿っぽい環境は、植物の生育が悪く抵抗力を低下させます。そのため抵抗力の下がった植物にシャクトリムシが発生し、食害が広がってしまう可能性があります。
対策方法
草処理をする
シャクトリムシの対策として日頃のお手入れはとても大切です。雑草や落ち葉などの管理を怠っていると、シャクトリムシが発生しやすくなってしまいます。日頃から掃除をして周辺を清潔に保ちましょう。
薬品を散布する
栽培範囲が広い場合などは、シャクトリムシが発生し始める時期に適当な薬剤を散布するのも1つの方法です。薬剤は葉裏にもかかるよう全体に撒いてください。
まとめ
シャクトリムシは植物に大きな食害をもたらす害虫です。しかし害虫に対して素早く対処できれば、大きな被害にはなりません。そのためシャクトリムシの生態を理解し、日頃からしっかりと対策をしてくださいね。またそれでも発生した際にはきちんと駆除をして、植物をシャクトリムシの食害から守りましょう。
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