ひっつき虫とは?
ひっつき虫(くっつき虫)は虫?
動物や人間の衣服につく植物の種
ひっつき虫は「くっつき虫」ともいわれ、動物や毛や人間の衣服にくっついて運ばれる植物の種子や果実のことです。このような植物の種子の広め方は「動物散布」といいます。日本には約50種類のひっつき虫があり、その形やひっつき方法も植物の種類によってさまざまです。
ひっつき虫(くっつき虫)の呼び方
地方によっていろいろな呼び方がある
ひっつき虫の呼び方は、くっつき虫の他にも「ばか」や「どろぼう」とも呼ばれています。また日本全国で見られるひっつき虫は、地方によっても呼び方に違いがあり「あばづぎ」「イジクサレ」「ひっつきぼう」「ひっつきもっつき」「だっこんび」などがあります。
ひっつき虫(くっつき虫)のひっつく理由
子孫を残すための大事な手段
動物とは違い移動することができない植物たちはたくさんの子孫を広い範囲で残せるように、風に乗せたり果肉を鳥や動物に食べさせて種子を遠くへ運ばせたりとさまざまな工夫をしています。そしてひっつき虫も動物にくっつき、種子を広く撒いて子孫を多く残すための方法なのです。
ひっつき虫(くっつき虫)のくっつき方法
カギ型の毛やトゲ、または粘液を出す
ひっつき虫は、植物の種類よってそのひっつき方もさまざまです。種子や果実の表面にカギ型に曲がった毛がびっしりと生えている種類や、果実の表面に針のようなトゲが逆さについている種類の植物は、衣服の繊維や動物の毛にひっかかってくっつき、果実に生える腺毛から粘液を出す種類の植物はネバネバとした液で粘着します。
ひっつき虫の種類
ひっつき虫のひっつき方は大きく分けると3種類に分けることができます。ここではひっつき方の異なる種類ごとに身近でよく見かける代表的な植物を解説していきます。
かぎ型の毛をもつ種類
楕円形の果実のまわりにカギ型の腺毛が生える「オナモミ」
オナモミは、キク科の一年草でオナモミの仲間は世界中で見られます。楕円形の果実は種子が2個入っており、果実のまわりは果苞(かほう)と呼ばれる総苞片で包まれています。果苞の大きさは約1cmほどで、先端には約1.5mmの2本の突起と、表面にはにカギ型になった太い腺毛が生えています。熟してくると色が緑から灰褐色に変わり、固くなります。
メガネのような形の果実の表面にカギ型の毛がある「ヌスビトハギ」
マメ科の植物であるヌスビトハギの果実は1個の種子ごとに節で分けらており2節からなります。平べったく半円の形をした節と節の間がくびれているため眼鏡のような形をしています。表面には細かな毛がびっしりと生えており、毛の先がカギ型に曲がっています。
円錐型の果実にカギ状の毛がたくさん生える「キンミズヒキ」
キンミズヒキは、バラ科の多年草で日本全国に分布しています。枝分かれした茎の先から細長い花茎をのばし柄のある小さい花を均等につけます。黄色い花びらは5枚で丸みがあります。果実は円錐型(えんすいがた)で長さ約3mmほどのカギ状になった毛がたくさんあります。
トゲがある種類
冠毛と呼ばれる針のような毛にトゲがある「センダングサ」
センダングサはキク科の一年草で、身近でよく見かける繁殖力の強い雑草です。果実は熟すと薄い果皮が黒く乾いて固くなります。長さは約2cmほどで細長い形をしており、先端には「冠毛」と呼ばれる針のような毛が3~4本ついています。冠毛にはさらに逆さに生えるトゲがあり、一度ひっつくとなかなか取れないようになっています。
センダングサの仲間「タコウギ」
タコウギは、センダングサの仲間でキク科の一年草です。センダングサの仲間は世界に240種類あるといわれており、そのうちの数種類が日本で自生しています。タコウギはセンダングサのように黄色い頭花をつけますが花びらはなく、頭花の付け根に長い総苞片を5~6枚つけます。果実は平べったく幅があり、先端につく針のようにとがった冠毛は2本つきます。
果実に2本のトゲ状の苞葉がある「イノコヅチ」
イノコヅチは、在来種でヒユ科の多年草です。日陰に生えるヒカゲイノコヅチと、日向に生えるヒナタイノコヅチがあります。茎の上部から出る葉の付け根から花茎をのばし花穂をつけます。果実は鳥のくちばしのような形をしており、5枚のがくに覆われています。果実の付け根には外側に反り返るトゲ状の苞葉があります。
粘液を出す種類
果実に生える毛から粘液を出す「ノブキ」
ノブキは、日本原産の植物でキク科の多年草です。花茎の先端に小さい花がまとまって咲きます。内側に雌花を数個つけ、その周りの外側に雄花を数個つけます。花が咲き終わると、雄花が膨らんで約5mmほどの小さな棒のような果実をつけます。果実の先には毛が生えており、その毛からねばねばとした粘液を出します。
細長い果実の先から粘液を出す「ヤブタバコ」
ヤブタバコは、キク科の越年草で日本全国の民家や林などで見られます。茎は約50cmくらいの高さになると成長が止まり、数本の枝を横に伸ばします。上部の茎の葉の付け根に黄色の頭花をつけます。果実は臭気があり、熟すと乾いて固くなります。長さは約3mmの細長い円柱形で果実の先から粘液を出します。
果実につく長いノギから粘液を出す「チヂミザサ」
チヂミザサは、イネ科の一年草で日本全国の森林の木陰に群生して生えます。花茎の上部に短い枝をまばらに出し、それぞれの枝に小穂(しょうすい)と呼ばれる花の配列方法で花をつけます。小穂とは、複数の小さい花をうろこ状につけることです。小穂の外側には苞穎(ほうえい)と呼ばれる葉が3枚あり、その苞穎からのびる長い針のような毛(ノギ)がから粘液を出します。
出典:写真AC