スベリヒユとは
スベリヒユの基本情報
和名 | 滑莧(すべりひゆ)五行草 【漢方名:馬歯莧(ばしけん)】 |
植物分類 | スベリヒユ科スベリヒユ属 |
園芸分類 | 非耐寒性多年草(一年草扱い) |
分布 | 温帯~熱帯地域 |
草丈 | 5cm(茎の長さ:30cm) |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:弱い |
スベリヒユをご存じですか?
雑草としてあちらこちらで見かけるスベリヒユ。畑仕事やガーデニングをしたことがある人ならば当然ご存じのことでしょう。肉厚な茎と葉は水分を蓄えて見た目以上に重たく、真夏の乾燥にもびくともしません。多肉植物でもあるスベリヒユは、日本全土だけでなく世界中の温暖~熱帯地域に分布しています。名前の「スベリ」は茹でた葉や茎を押しつぶした際に、ぬめりがあるところからきています。
唯一の弱点は日かげ
日光が大好きなスベリヒユは、日の当たらない所では間延びしてしまい、うまく育つことができません。スベリヒユは形状からもお分かりのように乾燥に強い性質を持っています。これは「CAM型光合成」と呼ばれ、砂漠の植物にもみられる特別な光合成の方法をとっているためといわれています。
スベリヒユの活用法
漢方としてのスベリヒユ
五行草 ごぎょうそう 馬歯莧 ばしけん 100g 薬膳 生薬 回生薬局 漢方未病ラボ
参考価格: 2,450円
雑草扱いされていますがスベリヒユに毒性はありません。それどころか漢方としての薬効成分に優れた植物です。漢方においては「馬歯莧」(ばしけん)と呼ばれ、人々の暮らしに役立ってきました。利尿作用や膀胱炎、肝臓病などに効能があり。生の絞り汁は解毒や虫刺されに効くとされています。健康食品としてはオメガ3脂肪酸に富んでいるという利点もあります。
また漢方では五行草茶という名前で販売されていることもあります。これはスベリヒユが茎の赤、葉の緑、花の黄、根の白、種の黒という五色から成り立っていることに由来しています。
山形の郷土料理「ひょう干し」
山形ではスベリヒユを「ひょう」と呼び、昔から好んで食用としてきました。「ひょう」をゆでて干したものは「ひょう干し」と呼ばれ、雑草でありながらも冬の間の保存食として食べる貴重な野菜となりました。
山形では「ひょう干し」は今も『道の駅』などの店頭で売られていますが、様々な食品が流通している近年においては、食べる機会も少なくなっているようです。また沖縄では「ニンブトゥカー」と呼ばれ、夏場の貴重な葉野菜として食べられています。
世界中で食用とされるスベリヒユ
食べることのできる雑草として、山形の郷土料理の「ひょう」を前述しましたが、スベリヒユは日本だけでなく世界中で食用として食べられています。そしてその料理方法もさまざまで国際色豊かです。下記の記事で食用としてのスベリヒユをご紹介していますので、ぜひご一読ください。
スベリヒユの特徴と生態
スベリヒユの花
朝だけに咲く小さな黄花
一見すると花が咲かないのがスベリヒユと思われがちですが、午前中の短い時間だけ小さな黄色い花を咲かせてすぐにしぼんでしまうため、そんな印象をもたれているのかもしれません。スベリヒユの花期は7~9月ごろ。花の大きさは7mmほどで花弁は5枚です。花後には蓋が付いたような実をつけます。
スベリヒユの茎と葉
特徴的な肉厚の茎と葉
スベリヒユの特徴は、なんといってもその肉厚の茎と葉の形状でしょう。葉はへら状くさび型といわれるもので、茎に対して互生しており非常に多肉質です。また日光のない夜間には葉は閉じられてしまいます。茎は丸みのある円柱形で赤紫色をしており、匍匐して放射状に分岐した茎は、細い根を地面に下ろして次々に陣地を広げていきます。
スベリヒユの種
帽子つきのカプセルに入った極小の黒い種
上の画像の中央をご覧ください。肌色のカプセルのような殻に包まれた黒いたくさんの種が見えます。その右上に帽子をかぶったどんぐりのような実があるのがお分かりでしょうか。この帽子が外れると、中央の種の見える状態になります。こうした形状は蓋果(がいか)と呼ばれ、実が完熟すると横に裂け、上部のふたの部分が取れて中身がこぼれる仕組みになっています。これは同属のマツバボタンなどにもみられます。種の大きさは0.8mm。一つのカプセルに100粒ほどの種が入っています。
スベリヒユとポーチュラカ
ポーチュラカの基本情報
和名 | ハナスベリヒユ |
植物分類 | スベリヒユ科スベリヒユ属 |
園芸分類 | 非耐寒性多年草(一年草扱い) |
分布 | 温帯~熱帯地域 |
草丈 | 5cm |
耐寒暑性 | 耐暑性:弱い 耐寒性:強い |
ポーチュラカの特徴
ポーチュラカの別名はハナスベリヒユ。これは当然「花の咲くスベリヒユ」という特徴からきているのでしょう。同じスベリヒユ科であるポーチュラカは、大きく鮮やかな花が咲かなければスベリヒユと見分けがつきません。ポーチュラカは品種によっては種で増やすことがむずかしく、挿し芽で増やすのが一般的です。またポーチュラカは花期も長くグランドカバーとしても活躍してくれます。
品種改良されたポーチュラカ
ポーチュラカもスベリヒユ科の植物ですから日光が大好きです。以前ではスベリヒユ同様午前中だけの花でしたが、上の画像のように品種改良によって日が落ちるまで咲き続ける「ゆうびポーチュラカ・園シリーズ」という品種が作られています。この品種は冬場に暖かい室内に取り込むことによって冬越しすることも可能です。
スベリヒユとポーチュラカの見分け方
見分けるポイントは唯一の特徴の違い
さて、ここまでご説明してきたスベリヒユとポーチュラカですが、両者の見分け方はもうお分かりのことと思います。それはやはり花の違いでしょう。朝にしか咲かない小さく地味な黄花をつけるスベリヒユと、長期にわたって大きく鮮やかな花を咲かせ続けるポーチュラカ。それと若干葉の幅が広めなのがスベリヒユでしょうか。ただ、つぼみもつかないような時期は見分けるのが難しいかもしれませんね。
スベリヒユの育て方
スタートは苗?挿し芽?種?
こぼれ種でどんどん増える生命力
苗を購入するまでもなく、こぼれ種から簡単に栽培できるスベリヒユですが、挿し芽で増やすこともできます。前年度に採取しておいた種をまくのなら、春から初夏にかけて気温が20℃を越えるようになってからでよいでしょう。育て方で特に難しいことはありませんが、芽が出てからある程度成長するまでは土が乾かないようにしてあげましょう。
強健な性質
過保護は厳禁
スベリヒユを育てる上では病害虫の心配もありません。栽培の注意点を強いていうなら、水のやりすぎで根腐れを起こしたり徒長してしまうことぐらいでしょうか。やせ地でも育つ植物ですから肥料過多にならないように気をつけましょう。早くたくさん収穫したい場合は挿し芽で増やすとよいですね。それではスベリヒユの栽培ポイントです。
スベリヒユの育て方のポイント
- 種のまき時は4月上旬から5月。気温が20ぐらいになってからがよいでしょう。
- ある程度成長するまでは水を与えますが、その後は水のやりすぎに注意しましょう。地植えなら必要ありません。
- 過度な肥料は必要ありません
- 日光が大好きです。一日中日の当たる場所で育てるとよいでしょう
まとめ
雑草だと思っていたスベリヒユは栄養豊富な野菜として食べることができ、漢方としての効能もあったとは驚きですね。ただ、道端でのスベリヒユを採種する際には排気ガスやペットのマーキングなどで汚れている場合もあります。安全に食べるのでしたら、育て方も簡単ですのでスベリヒユをぜひ庭で育ててみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC