アキニレとは
アキニレという樹木をご存知でしょうか。あまり耳にしたことがない方も多いのではないでしょうか。ハルニレとは違うのでしょうか。アキニレはニレ科ニレ属の落葉広葉樹です。河原などに自生し、街路樹や公園樹として植えられている高さのある樹木です。アキニレの特徴や用途、ハルニレとの違いや見分け方をご説明します。
アキニレの基本情報
分類 | ニレ科ニレ属 落葉樹 |
学名 | Ulmus parvifolia |
別名 | 石ゲヤキ、河原ケヤキ |
分布 | 中国、朝鮮半島、西日本、台湾 |
成長 | やや遅い |
樹高 | 15mくらい |
開花時期 | 9月ごろ |
用途 | 公園樹、街路樹、盆栽(ニレゲヤキ) |
アキニレの別名
アキニレの別名「イシケヤキ」とは木材として、石のように硬いからと言われています。また「カワラケヤキ」とは河原に自生していることが多いからと言われています。葉っぱが小さいことと、樹皮の模様の美しさから盆栽木として扱われ、盆栽では「ケヤキ」に似ているため「ニレゲヤキ」と呼ばれています。
アキニレの特徴
アキニレは西日本の山地や河原に自生する落葉高木です。同じニレ科のハルニレの開花時期が春なのに対し、開花時期が秋なので「アキニレ」と呼ばれます。高木にしては成長が少し遅く、河原など他の樹種が少ないところで育つ丈夫さがあります。病気や害虫にも強いため公園樹や街路樹に選択されることが多い樹木です。葉や樹皮が「ケヤキ」に似ています。
アキニレの葉っぱ
葉っぱの大きさは3cm程度です。樹高が15mになる樹種としては小さめです。parvifoliaという学名は「小さい葉っぱ」と言う意味です。薄い緑色で少し厚みがあり、表面にやや光沢があります。葉の輪郭にはギザギザの切れ込みがあります。春先、柔らかい新緑が美しく、秋には赤〜黄色に紅葉します。
アキニレの花
アキニレを漢字で書くと「秋楡」です。これは開花時期が秋であることから名付けられました。開花時期の9月になると枝の葉腋に4〜6個の花がまとまって付きます。ガクが茶色っぽく、花弁は小さく、花としては目立ちません。
アキニレの種
アキニレは10〜11月には結実します。実は風散布型で翼果が付くタイプです。果実の周りに羽のようなものが付いていて、葉っぱのようにも見えます。果実の中に種が2つ入っています。
種子の散布時期は落葉後になります。真冬に風が吹くと枝から離れていきます。成長が遅いため、河原など他の植物があまり育たない場所で芽を出し成長します。街路樹から溢れた種が、縁石の隙間のような土の少ない場所で発芽しているのが見られることもあります。
アキニレの枝と冬芽
アキニレの冬芽はとても小さく少し丸みを帯びた形をしています。色は枝と同じような赤みがかった茶色です。そのため目立ちません。冬芽が帽子に見立てられ、葉っぱが落ちたあとが顔のように見え、可愛らしいと人気があります。冬芽の形や葉痕の顔の違いでいろいろな表情が楽しめます。
アキニレの幹
木材は硬く、そこからイシ(石)ケヤキの別名を持つようになりました。樹齢が古くなると樹皮がうろこ状になり剥がれ落ち、独特の模様を表すようになります。枝は細くよく茂り、短い枝が冬には棘のように見えることがあります。
アキニレに集まる生き物たち
虫
上の画像はクワガタムシです。アキニレは河原に自生していることの多い樹種です。高さがないアキニレは、枝と葉っぱがたくさん出るためこんもりとした藪のように見えます。そのような場所の枝や幹の樹液の出ているところに、クワガタムシなどが集まります。
上の画像はアキニレハフクロフシという虫こぶです。虫こぶとは、葉についた実にように見えますが、実ではありません。さまざまな虫が植物の葉や根、枝、樹皮などに寄生して、その一部を「こぶ」のように発達させてできたものです。アキニレの葉にも「アキニレヨスジワタムシ」の幼虫がこぶを作ります。秋になると、こぶに穴を開けて外に出て行きます。
鳥
上の画像はベニマシコのオスです。ベニマシコは平野の藪や河原で見られる鳥です。オスは赤、メスは茶色い体をしています。鳴き声にも特徴があり、かわいらしいと人気があります。
上の画像はカワラヒワです。カワラヒワは関東以西の冬の渡り鳥で、河原で見られることが多いです。アキニレは落葉してから、種が散布される時期まで2ヶ月ほど間が空きます。落葉後、冬芽のついた高さのある枝に、野鳥たちが種を食べに集まってきます。
アキニレを見に行く
五蔵岳森林公園
長崎県佐世保市吉井町の五蔵岳森林公園にはアキニレの群生地があります。市の天然記念物に指定されています。あたりは普段は湿地ですが、大雨が降った後にだけ、「幻の池」と呼ばれる五蔵池が現れます。池の中に群生する幻想的なアキニレの林を見ることができます。
出典:写真AC