ニワウルシ(庭漆)とは?別名「シンジュ」と呼ばれる木の概要を解説!

ニワウルシ(庭漆)とは?別名「シンジュ」と呼ばれる木の概要を解説!

ニワウルシという木をごぞんじでしょうか?ニワウルシは、その葉の形がウルシに似ているところからつけられた名前ですが、そのほかにも名前にまつわる複雑な話があります。ニワウルシが複数の名前を持つことになった経緯とともに、植物としての生態の概要をご説明していきます。

記事の目次

  1. 1.ニワウルシ(庭漆)ってどんな木?
  2. 2.シンジュサンにまつわる話
  3. 3.ニワウルシの生態
  4. 4.繁殖を続けるニワウルシ
  5. 5.特定外来種としてのニワウルシ
  6. 6.まとめ

ニワウルシ(庭漆)ってどんな木?

落葉広葉樹ニワウルシ

Photo by Mary Gillham Archive Project

ニワウルシは中国を原産とする外来種の落葉広葉樹で、二ガキ科ニワウルシ属に属します。大変大きくなる木で成長も非常に早く、高いものでは樹高20mを越えることもある高木です。性質は強健で大気汚染に強く、病害虫の心配もありません。現在では人為的に植えられるよりも、河川敷や空き地などに野生化して群生しているのが見受けられます。

ニワウルシ【庭漆】とよばれる理由

Photo byumehanayuuki

写真:漆塗のお椀

漆塗りといえば、その美しい工芸品もさることながら、子供の頃に知らずに樹液に触れてかぶれた経験をした方もいらっしゃることでしょう。ニワウルシ【庭漆】の由来は、ウルシに似ている葉をもちながらも樹液にかぶれる心配がなく、庭に安心して植えられることからきています。葉軸に対して葉が並んでついているようすなどは確かによく似ていますね。

別名シンジュ【神樹】とよばれる理由

Photo by USDAgov

ニワウルシが別名シンジュ『神樹』と呼ばれるようになったのは、欧州で『Tree of heaven』と呼ばれていたことが発端になります。英語をそのまま直訳したようですが、あくまでも非常に成長が早く、天にも届いてしまいそうな高木のイメージであり、神に捧げる、神聖な、というような意味合いはふくまれていないようです。

シンジュサンにまつわる話

シンジュサン【神樹蚕】

Photo by RobinDiary

ニワウルシにはシンジュサン【神樹蚕】の食樹とされた歴史があります。神樹蚕(ヤママユガ)がニワウルシの葉を好んで食べたことから、食樹としてニワウルシが栽培されるようになったたわけです。それまでのいきさつを時系列でご説明しますと

  1. 明治時代にニワウルシが輸入される
  2. 海外での『Tree of heaven』を直訳してニワウルシが【神樹】と呼ばれるようになる
  3. 古くは『ミツキムシ』と呼ばれていた『ヤママユガ』がニワウルシ【神樹】を食樹とする
  4. ヤママユガが【神樹】を食樹とする蚕、シンジュサン【神樹蚕】と呼ばれるようになる
  5. 養蚕を目的として【神樹】がさかんに栽培されるようになる

  • ニワウルシ=Tree of heaven=【神樹】
  • ミツキムシ=ヤママユガ=【神樹蚕】
ということになります。

太平洋戦争と神樹蚕

Photo by Gary Lee Todd, Ph.D.

太平洋戦争の際に、日本では兵士たちの衣服やパラシュートを作るための生糸を必要としていました。そのために養蚕が盛んに行われ、シンジュサンの餌となるニワウルシが栽培されるようになりました。『神』という言葉を含むシンジュサンの糸で作られた衣服を身に纏い、ゼロ戦に搭乗した兵士たちが向かった結末を考えると、なんとも切ない気持ちにさせられますね。

ニワウルシの生態

ニワウルシの花

Photo by wlcutler

どちらかというと地味な印象ですが、ニワウルシの花は6~8月に開花します。雌雄異株の植物で、雄の木には雄花が、雌の木には雄花と雌花の両方が咲きます。雄花には5つの花弁と10本の雄しべがあり雌しべは退化しています。そして雌花には退化した雄しべと柱頭があります。どちらも枝の先端の花穂に乳緑色の小花を咲かせます。

ニワウルシの葉

Photo by andrey_zharkikh

写真:ウルシの葉

Photo by anro0002

写真:ニワウルシの葉

名前の由来となった葉ですが、ウルシの葉に似ているというよりはウルシの葉を若干大きくしたイメージでしょうか。確かにつくりはどちらも同じ互生(*1)の奇数羽状複葉(*2)ですが、見分け方のポイントは、ニワウルシは10対以上の子葉をつけるというところです。葉の全体的な長さは1mを越えるものもあります。そしてニワウルシの葉にはゴマ油のような独特な匂いがあります。

  • (*1)互生:葉軸に対して向かい合った葉が互い違いについていること
  • (*2)奇数羽状複葉:葉軸の先端に葉が一枚つき、小さな葉が葉軸の左右に羽のように並んでついていること

ニワウルシの実と種

Photo by 阿橋花譜 KHQ Flower Guide

ニワウルシの実は枝の先端にまとまってできます。果実は4cmぐらいで、種の周囲の平たい部分は、一見、豆の鞘(さや)のようにも見えますが、むくことができないので鞘ではありません。果実は秋になると赤く熟し、遠目には赤い花が咲いているように見えます。最終的には薄く白い紙に包まれたような形状になり、風で周囲にまき散らされます。

Photo by candiru

写真:赤く熟したニワウルシの実

Photo by Wayne National Forest

写真:白い羽根がついたようなニワウルシの種

ニワウルシの種の形状はプロペラの役割を果たしています。そして微妙に両端がねじれていることにより、落下軌道が木の真下ではなく、少し離れた場所に落ちることになります。こういったところもニワウルシが繁殖場所を広げていく要因の一つなのでしょう。

ニワウルシの幹

Photo by wlcutler

ニワウルシの幹は灰白色で、繊維は細かく皮目は密で滑らかです。老木になると縦に浅く亀裂が入ってきます。もちろんウルシとは違いますから、樹皮に触れてもかぶれることはありません。木質は固く、過去には農具などの柄として使われることもありました。画像のひこばえの様子からも、ニワウルシの生命力の強さが伝わってきますね。

繁殖を続けるニワウルシ

野生化するニワウルシ

Photo by anro0002

写真:道路わきで野生化したニワウルシ

元々は外来種であったニワウルシが野生化するほどまでに繁殖した原因は、養蚕のために各地で栽培されたこともありますが、何よりも生育の早さと繁殖力の強さにあるでしょう。果実の形状が種子を遠くに飛ばすことができる翼状であり、一度に大量の種をつくることも問題視されています。

地下茎で増える

Photo bysnarlingbunny

ニワウルシは毎年大量の種を飛散させますが、それと同時に地下茎によって至る所で繁殖することが問題になっています。ニワウルシは環境ストレスなどにも強く、空き地や河川敷、道路脇といった場所で野生化しています。現在では駆除されることが多く、園芸店でも植木としての取り扱いはほとんどありません。

アレロパシー効果

Photo bymatthiasboeckel

アレロパシーという言葉をご存じでしょうか?これはある特定の植物が、ほかの植物の成長を阻害する物質を葉や樹皮から出すことを意味します。自分がよりよく成長するために、周囲にあるほかの植物を枯らすのです。このことにより植物の生態系が崩れてしまいます。ニワウルシが駆除されることになった要因は、このアレロパシー効果を持っていることにもあるといえるでしょう。

特定外来種としてのニワウルシ

ニワウルシの侵略

Photo by Wayne National Forest

ニワウルシの繁殖はとどまるところを知りません。姫路城の石垣に太い根が浸食することにより、重要文化財である百間廊下の土台部などの損傷が懸念されています。ほかの場所では果樹園がニワウルシ畑に変貌してしまったという例もあり、事態は深刻化しています。切り倒されても萌芽し、辺り一面を埋め尽くしてしまうのです。

駆除されるニワウルシ

Photo by Wayne National Forest

これ以上の繁殖を防ぐべく、地域によってはニワウルシの定期的な伐採を行なっているところもあります。在来植物の生態系を壊してしまう恐れがあるというのがその理由です。環境省からも『特定外来生物』との指定を受け、駆除されている状態です。本来であれば植物にとっての悪条件下でも野生化する生命力には、日本だけでなくアメリカなどでも侵略的外来種という扱いで問題になっています。

まとめ

Photo by anro0002

ウルシと似ていながらもかぶれる心配のないニワウルシ。神の樹と呼ばれる一方で、現在では駆除対象となってしまったニワウルシ。一時は蚕の食樹として必要とされていた時代もあったのに、人間社会と共存するにはその姿はあまりにも大きく、生命力が強すぎたのでしょう。中国大陸の大自然の環境の中で、悠々と天をめざして育つニワウルシこそが本来の姿なのかもしれませんね。

藤茶話
ライター

藤茶話

失敗の多い園芸オタク。今年はギボウシの庭をつくります!

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