ハゼの木(櫨の木)とは?
ハゼの木(櫨の木)の概要
ハゼの木(櫨の木)はウルシ科の落葉樹
ハゼの木(櫨の木)は、学名をToxicodendron succedaneum、またはRhus succedaneaといい、ウルシ科ウルシ属の落葉小高木です。「リュウキュウハゼ」の別名を持ちます。東南アジアから東アジアにかけての温暖な地域に分布し、日本では四国から九州、沖縄にかけて分布します。
ハゼの木の種類
ハゼの木には、「ブドウハゼ(葡萄櫨)」、「ショウワフクハゼ(昭和福櫨)」、「マツヤマハゼ(松山櫨)」、「イキチハゼ(伊吉櫨)」、「王櫨(オウハゼ)」という種類があります。
ブドウハゼ(葡萄櫨)の原木発見!
ブドウハゼ(葡萄櫨)は黄緑色の木蝋が採取でき、和蝋燭の一番外側にかける蝋として使われます。和歌山県の天然記念物に指定されていましたが、昭和30年頃に枯死したと考えられていました。平成27年に地元の高校生が原木を発見し、調査の結果ブドウハゼの原木である確率が高いという結果が得られ、県は天然記念物の再指定を目指しています。(参考:朝日新聞DIGITAL「60年前に枯死の原木、生きてた?女子高校生が大発見」)
ハゼの木に似た種類の植物も
ハゼの木に似た種類の植物に、同じウルシ科ウルシ属の「ヤマハゼ」、「ウルシ」、「ヤマウルシ」があります。葉の様子がよく似ていて、見分け方が難しいようです。
四季を通じて楽しめる
ハゼの木は5~6月頃に黄緑色の小さな花を咲かせ、秋には紅葉が楽しめます。季節折々の姿が美しく、関東以西では庭木として植えられているところも多くみられます。
名前の由来
ハゼの木の名前の由来
ハゼの木(櫨の木)は、ハゼの紅葉した色が埴輪(はにわ)の色に似ており、埴輪作りの職人である「埴師(はにし)」の木と呼ばれたものが転化して「ハゼの木」となったといわれます。
なぜ「リュウキュウハゼ」と呼ばれるのか
ハゼの木は、江戸時代頃に琉球王国(今の沖縄)から持ち込まれ、それまで漆(うるし)を使った「木蝋(もくろう)」づくりが主流だったのに代わり、ハゼの木が使われるようになりました。そのため、琉球王国から伝わった蝋づくりとして、原料のハゼの木が「リュウキュウハゼ」とも呼ばれるようになったといわれます。
木蝋は「きろう」とも呼ばれ、ろうそくやつや出しに使われてきました。
ボタニ子
日本では江戸時代頃から作られ、ハゼの木の実やウルシの実が主原料になっているのですね!
ハゼの木(櫨の木)基本情報
- <分類>ウルシ科ウルシ属、落葉小高木
- <学名>Toxicodendron succedaneum/Rhus succedanea
- <別名>ハゼ、リュウキュウハゼ、ロウノキ、ハジモミジ など
- <英名>Wax tree
- <高さ>約5m~10m
- <種類と分布>「ブドウハゼ(葡萄櫨)」、「ショウワフクハゼ(昭和福櫨)」、「マツヤマハゼ(松山櫨)」、「イキチハゼ(伊吉櫨)」、「王櫨(オウハゼ)」などで、日本では四国~九州、沖縄にかけて自生。
- <似ている木>「ヤマハゼ」、「ウルシ」、「ヤマウルシ」
ハゼの木の樹木の特徴
樹皮に裂け目が多い
ハゼの木は樹高10mほどになる高木で、灰褐色の樹皮を持ちます。樹皮が多く、初めは滑らかですが、年数を経るにつれ、樹皮に縦に裂け目が増えていくのが特徴です。
枝ができにくく、葉は枝先に集まる
ハゼの木は枝が分かれにくく、伸びた幹の先にだけ枝葉が集まってつきます。葉は長さが20~30cmほどで羽状複葉(うじょうふくよう)で枝先につき、葉の縁にギザギザがない(全縁)のが特徴です。寒くなると落葉します。
「羽状複葉(うじょうふくよう)」とは、羽のように小さな葉が葉軸の左右につく葉の形態のことです。
5~6月頃に黄緑色の花を咲かせる
ハゼの木は季節を通じて楽しめ、5~6月頃に黄緑色のかわいらしい小花を咲かせます。
秋には丸い果実ができる
秋になるとハゼの木は直径約5~15mmくらいの果実をつけます。果実には高カロリーの脂肪が含まれており、鳥が好んで食べ、種子の分布に重要な役割を果たしています。
ハゼの木は薬用植物でもある
ハゼの木の種子と根皮には止血効果や解毒作用の薬効があるといわれます。乾燥させた根皮20~30gをコップ2杯の水に半量になるまで煎じ、この煎液で患部を洗うとよいとされます。(参考:福岡県立図書館 八女民俗資料館「ハゼノキ(ウルシ科)」)
学名”Toxicodendron”は「毒の木」の意味
ハゼの木の学名”Toxicodendron”は「毒の木」の意味です。薬効がある一方で、ハゼの木はウルシ科に属し、ウルシよりも毒の成分は少ないとされますが、樹液や葉に触れるとかぶれたり腫れたりする人も多いので注意が必要です。
ボタニ子
敏感な人は木の近くを通っただけでもアレルギー反応が起こることも。要注意ですね!
次のページでは、ハゼの木の紅葉についてご紹介!
ハゼの木の紅葉の時期
ハゼの木は秋に紅葉し、その美しさでも愛されてきました。紅葉の時期は一般的には11月中旬~12月初旬頃(北部九州の場合)です。春や夏でも少量ですが赤い葉が混ざることがあります。
ハゼの木の見分け方(似た木との違い)
ハゼの木と似ている「ヤマハゼ」、「ウルシ」、「ヤマウルシ」はいずれもウルシ科に属し、葉の形もよく似ています。葉の大きさや葉の縁のギザギザの有無、葉脈の入り方、表面がつるつるしているかどうかなどがポイントになりますが、実際に見分けるのはなかなか難しいようです。
ハゼの木を育ててみる
大きくも小さくも育てることができる
ハゼの木は庭木などとして大きく育てることもできますが、盆栽や苔玉で楽しむこともできます。育てる上でのポイントを簡単に解説されている動画をご紹介します。(添付)
ハゼの木を育てるための準備(盆栽・鉢植え)
①用土
ハゼの木は土を選びません。市販の園芸用土を用意します。
②置き場所
日当たりが良く風通しの良い場所に置きます。夏場は半日陰になる場所が望ましいです。
③水やり・肥料
水は春と秋は一日1回、夏は一日2回、冬は二日に1回くらいのペースで、表面の土が乾いていたらたっぷりあげましょう。肥料はほぼ必要としません。
④剪定
ハゼの木は成長が早く、放っておいても丈夫に育ちます。盆栽などで小さく育てるには、2~3月頃に芽のついた節目の上で剪定します。剪定の1ヶ月前くらいに肥料を与えるとよいでしょう。もともと剪定を好まないため、大きく刈り込むと枯れる原因にもなりますので、樹形を整える程度でとどめるとよいです。
⑤害虫
害虫被害はほとんどないものの、しゃくとりむしが葉をかじることがあるようです。
ハゼの木を植える際の注意点
ハゼの木は丈夫な一方、庭植えで一度しっかり根付いてしまうと根絶が難しいともいわれます。鳥によって種が運ばれるので、植える予定ではない場所に根付くこともありますので、見つけ次第早めに取り除きましょう。
まとめ
和蝋燭の原料になり、解毒作用や止血効果もあるハゼの木。春や夏には瑞々しい緑に赤い葉がちらちら混ざる様子が、また秋には赤い葉が燃えるような美しい姿を見られ、葉がグラデーション状に緑色から赤い色に移り変わっていく様もまたとても綺麗で、どの季節もその時々の美しさがあります。盆栽や苔玉でも楽しめ、庭木にもなりますが、かぶれには十分に注意をして、作業の際は手袋をはめるなど対策を忘れないようにしたいものですね。
出典:写真AC