イロハカエデはどんな木?
イロハカエデの分類はムクロジ科・カエデ属で、 学名は"Acer palmatum" 、英語で"Japanese Maple"(ジャパニーズ・メープル)といいます。世界各国に何種類もあるメープルの中で、このイロハカエデに「ジャパニーズ」と名前が付くことから、日本を代表するカエデだと認識されていることがうかがえます。
イロハという名前の由来は?
赤ちゃんの手のようなイロハカエデの葉はとても可愛いですね。この特徴ある葉の切れ込みがいくつあるのかな?「い・ろ・は・に・ほ…」と数えたのでこの名前がつきました。今ではもう聞かなくなった数え方ですが、なんとも情緒がある優しい響きの言葉だと思ませんか?
カエデとモミジはどう違うの?
「カエデ」は「モミジ」とも呼ばれていますが、もともとその名前には少し違う意味合いがあります。「カエデ」は漢字で「蛙手」、葉の形が蛙の手に似ているのが理由です。一方「モミジ」は「紅葉」と書き表され、本来は秋の季節になると色が変わる葉を総称しています。カエデがモミジの中でも一番美しい代表格なので、いつの頃からか両方の名前で呼ばれるようになったのでしょう。
どうして紅葉するの?
日照時間と気温が大きく関係する
季節が秋に向かうにつれて日照時間も短くなり気温が下がってくると、木は冬が近づいてきたことを察知して、いらなくなる葉への養分補給をストップします。それによって緑色の要素(クロロフィル)が分解されて、赤色の要素(アントシアニン)や黄色の要素(カロチノイド)が葉の色となって出てきます。これが紅葉のメカニズムなんですね。
花は咲くの?
花も咲く!
イロハカエデに花が咲くことは意外と知られていないのではないでしょうか。じつは新緑の季節、4~5月になると小さなピンク色の花が咲きます。とても小さくて目立たないのですが、よく見ると枝先にぶら下がっている可愛い花を見つけることができますよ。
種もできる!
イロハカエデの種は特徴のある赤いプロペラのようなものがついています。ドラえもんのタケコプターに似ていますね。秋になると風に乗ってこのプロペラで遠くまで飛んでいくこともできて、よく考えられた形だと思いませんか?この種をまいて発芽させる育て方は後ほど説明しますね。
カエデの分類
カエデの仲間には自生種に分類されるものが35種類、園芸種に分類されるものは120種類以上あります。自生種の代表がイロハカエデ、そのほかにもオオモミジ、ヤマモミジ、イタヤカエデなどがあげられます。これらの自生種をかけあわせて作られたものが園芸種で、名月、初雪、紅鏡、早乙女など、風情のある名前がつけられたものがたくさんあります。
メープルシロップの原料になるカエデは?
サトウカエデがメープルシロップの原料になります。カナダの国旗にもなっていることで有名ですね。幹に採取口を取り付けて、出てきた樹液を煮詰めてろ過したものがメープルシロップです。パンケーキやトーストに塗って食べると甘くておいしいですよね。
イロハカエデの育て方
自宅で植えられる?
まず、タイトルにある「自宅で植えられえるか?」とのことですが、自宅でも植えることができます。育て方も植え方もそんなに難しくはないので、ぜひ自宅にも植えて四季折々の姿を楽しみましょう。
植える場所
日当たりがいい場所に植える
日当たりが悪いと秋にきれいに紅葉できないので、植える場所は日当たりがいいところにしましょう。ただあまり日差しが強いと葉がチリチリになってしまうので、一日中強い日差しが当たるような場所は避けた方が無難ですね。
適当な湿度が必要
イロハカエデは十分な湿度がある場所を好みます。多少乾燥していても木が枯れることはありませんが、適度な水分は紅葉の色合いにも影響してくるので大切です。
植え方
イロハカエデの植え方は、まず深めで大きな穴を掘ってから、その穴に山のような形になるように土を入れ戻します。根を広げるようにして苗を置き、深植えにならないように気をつけながら土をかぶせるのが植え方のポイントです。
水やり
苗を植えた後は、しっかり水を与えましょう。しばらくの間は土の乾燥具合をよく確認して、表面が乾いていたら水やりします。その後、庭植えは雨の降水任せで大丈夫ですが、鉢植えは特に夏場に水切れしないように気をつけてくださいね。
肥料
肥料は油かすや化成肥料を使います。特に肥料がなくても大丈夫ですが、生育や葉のつやがよくなるので、12月ごろに冬肥えを与えましょう。
剪定
冬の剪定
落葉して寒くなった冬が剪定に最適の季節なので、伸び過ぎている枝や弱々しい枝を切ります。全体的な大きさを見て、不要な枝があればこの季節に思いきって切り戻しておきましょう。
春の剪定
新芽が育ってしっかりした枝になってきた5月ごろに軽く剪定します。重なり合っている枝や葉を取り除くことで株の風通しが良くなりますよ。
増やし方
挿し木で増やす
挿し木は前の年に伸びた枝を使う場合は3月、新しい枝を使う場合は5月~6月に行います。10~15㎝ほどに切った枝を赤玉土などに挿して明るい日陰に置きます。あとは土が乾いたら水やりしましょう。ただイロハカエデの挿し木はうまく根が出ないことが多いので少々困難です。
種をまいて増やす
種は秋か春にまきます。秋は採った種をすぐにまくことができるのですが、春まきの場合は種を乾燥させないように、濡れたキッチンペーパーなどに包んで冷蔵庫で保存しましょう。種はピートモスにまいて5mmほど土をかぶせます。そのあとは半日陰に置いてたっぷり水をやり、発芽を待ちます。しっかりした苗になるまでは2年ぐらいかかりますが、ぜひチャレンジしてみてください!
イロハカエデの病気
病気について Q&A
A: 水分不足かもしれませんが、水をやっていても枝枯れはよく起こります。風通しが悪いかもしれないので、余分な枝や葉を切り落としてあげましょう。
木の表面が腐ったように柔らかく、ボロボロとした感じになってきました。なぜなんだろう…?
A: 剪定した時の傷口が原因でこういう状態になります。剪定したあとは切り口に接着剤などを塗ってコーティングしてあげましょう。
葉に白い粉のようなものがついています。これも病気ですか?
A: それはうどんこ病ですね。初期であれば水で流せば大丈夫ですが、もし広がってしまったらベンレートやトップジンなどの薬剤を散布しましょう。
イロハカエデの害虫
アブラムシ
アブラムシは若い葉の裏や枝先につく緑色の害虫です。養分を吸うので木が弱ってしまいます。小さな虫が群がっているのはとても気持ち悪いですよね。スミチオンやオルトランを散布しましょう。
ハキリバチ
ハキリバチは葉を丸く円を描くように切り取る害虫です。せっかくの美しい葉が台無しになってしまいますね。スミチオンやオルトランを散布しておくといいでしょう。
テッポウムシ
テッポウムシはカミキリムシの幼虫で幹の中を食い荒らす害虫です。根元におがくずのような粉が落ちていて小さな穴が開いていたらテッポウムシがひそんでいます。専用のスプレー式薬剤があるので穴に噴射して撃退しましょう。
カエデと日本文学
万葉集に詠まれるカエデ
日本人に愛されているカエデは、古く万葉集の時代から歌に詠まれています。その中の一句をご紹介しましょう。
『わが屋戸に 黄變つ鶏冠木 見るごとに 妹を懸けつつ 戀ひぬ日は無し』
(わがやどに もみつかへるて みるごとに いもをかけつつ こひぬひはなし)
「鶏冠木(かへるて)」はカエデ(蛙手)のことです。
「自宅の庭に植えたカエデが紅葉するのを見るたびに、あなたのことを心にかけつつ恋しいと思わない日はありません。」という健気な恋心が伝わってきますね。電話やSNSで簡単に恋人に連絡できる今と違って、なんとも趣のある恋の歌ではないでしょうか?
まとめ
秋の美しい錦織のような紅葉はもちろん、新緑の風に揺れる青葉もさわやかで、イロハカエデの魅力は尽きませんね。古代から日本人に愛でられてきたのも納得できます。そんなイロハカエデ、育て方も植え方もそんなに難しくはないので、ぜひ自宅にも植えて四季折々の姿を楽しんでくださいね!
急に枝や葉がしおれて枯れたようになってしまいましたがどうしてでしょう?