イペーってどんな植物?
イペーとは
ブラジル国民から愛される花
ブラジルの国花として愛されるイペーの木には、桜と同様に花が咲き終ってから葉が出てくるという特徴があり、黄色い花は一ヶ月ほど咲き続けて人々の目を楽しませてくれます。日本ではあまり流通していない植物ですが、その華やかさにに魅せられて、九州地方といった暖地に限らずイペーを広めようと活動している団体が、国内にもいくつかあります。
学名 | Tabebuia chrysotricha |
別名 | コガネノウゼン キバナノウゼン ゴールデントランペットツリー |
属性 | ノウゼンカズラ科 タブベイア属 |
分類 | 落葉高木 |
樹高 | 3~5m |
耐寒暑性 | 耐暑性:強い 耐寒性:弱い(-3℃) |
イペーの別名
黄色いノウゼンカズラで黄金ノウゼン
日本でのイペーの別名としてよく聞かれるのがコガネノウゼンですが、上の二枚の画像を見比べてみてください。よく似ていますよね。同じ花の色違いといわれたら納得してしまいそうですが、下のオレンジ色の花は同じノウゼンカズラ属のノウゼンカズラです。こうしてみると、黄金色のノウゼンカズラという意味でコガネノウゼンと呼ばれるようになったのには納得できますね。
イペーとアカバナイペー
本当はアカバナイペーがイペーだった?
植物の名前にありがちな誤解ですが、このイペーにもそんなエピソードがあります。最初に沖縄に輸入されたのがアカバナイペーで、もとはこちらをイペーと呼んでいました。その後キバナノウゼンが輸入されてきたのですが、大木になるイペー(アカバナ)に比べて樹高も低くて扱い易いキバナノウゼンのほうがよく植えられて一般的になり、キバナノウゼンをイペーと呼ぶようになってしまったのです。
植物としてのイペーの特徴
イペーの葉
手のひらを広げたような葉
イペーの葉は掌状複葉といわれる形をしていて、葉枝の先端に5枚の葉が放射状につき、ちょうど手のひらを広げたような形になっています。長さ6~7cmほどで革質の葉は、イメージとしてはアケビの葉を大きくして固くしたといった感じでしょうか。花が終わると入れ替わるように巨大な豆のような莢と新緑が目立ち始めます。
イペーの花
黄色いトランペットのような花
イペーの木は3~5月のころになると、真っ直ぐに大きく伸びた柄の先に6~7cmほどの黄色い花を咲かせます。この時期に葉はまだないため、木はたくさんの黄色の花だけで埋め尽くされます。花の形はもうひとつの別名、ゴールデントランペットツリーの名にふさわしく、大きなラッパ状です。イペーが沖縄で多く見られるのには、緑化事業として県民にイペーの種が無料で配布されたことが発端になっています。
イペーの種
毛皮を着たような莢(さや)とオブラートに包まれたような種
細かい毛に覆われた、長さ20~30cmほどの円筒形の莢状の果実の中には、オブラートに包まれたような平たい褐色の種がいくつも入っています。これは翼状外皮と呼ばれ、莢が割れた際に遠くに種を飛ばす役目を担っています。イペーを街路樹にしている地域などでは、こぼれダネであちらこちらからイペーが発芽する様子も見受けられるようです。
イペーの育て方
イペーの生育条件としては、日当たりがよく風のあまり当たらない場所がよいでしょう。日当たりが悪いと花つきが悪くなります。土壌は特に選びませんが定期的に肥料を与えてあげましょう。移植を嫌うので、ポット苗から定植後はなるべく動かさない方が好ましいです。
1~3月 | 休眠期 | 地植えの場合は防寒をしっかりと行う |
4~5月 | 開花 種まき | 種をまいた場合、秋までに苗がある程度育っていると冬越しが安心 |
3~8月 | 肥料 | 2ヶ月に一度の頻度で与える |
5~6月 | 剪定 | 樹高の管理。極端な強剪定は厳禁 |
10~2月 | 植え替え | 休眠期の時期の移植の方が苗が痛まない |
10~12月 | 休眠期 | 1年目のポット苗は屋内で管理すること |
種を手に入れる
種の入手方法
イペーの種は市場に流通していないため、もしかしたら種の入手が一番の難関かもしれませんが、暖地にお住いの方でしたら莢の落ちる直前の時期を狙って入手するか、イペーを広める団体などに問い合わせてみるのも一つの手かもしれません。巨大な莢の中にあるオブラートに包まれたようなものが種です。
発芽のようす
驚異の発芽率100%!
イペーは発芽率の非常によい植物で、一説によるとその発芽率は100%!早い例では種をまいた3日後に発芽していたという話や、雨続きの後にまだ木から落下していない状態の莢から発芽していたという話もあります。増やし方としては挿し木という手段もありますが、ここまで安定して発芽率がよければぜひ種から育ててみたいものですね。花が咲く状態になるのには、早いものでは1年かからなかったという例もあります。花木としてはかなり成長が早いほうといえるでしょう。
挿し木から苗木を作る
固まった新芽を使う
種が手に入らない場合、挿し木から苗木を作って植え替えをするという方法もあります。その際には、柔らかい新芽ではなく、ある程度木質化して安定した部分を使うとよいでしょう。葉がついていたら挿し木の負担にならないよう、葉の半分を切り落としてから使いましょう。
苗木から植え替える
ポット苗からの植え替えは鉢植?地植?
育て方としては、ポット苗で挿し木や発芽してある程度成長したイペーの苗木を大きめの鉢や地面に植え替えるのが一般的でしょう。その際に一番に考えなくてはならないのが冬越しのことです。極端な団地をのぞいては、一年目の苗木は極力気温の安定した屋内で管理することが望ましいでしょう。植え替えに適した時期は10~2月ごろです。
イペーの冬越し
もう一つの難関は冬越し
先に述べたように、種の入手には苦戦したものの、種まき、発芽(もしくは挿し木)から生育、と特に問題なく成長してきたイペーの苗木の場合ですが、次の難関は冬越しでしょう。地植えの場合はバークチップを置いたり、マルチングといった作業が必要になります。ただ昔と比較すると温暖化の影響もあり、以前では冬越えできなかった植物が今では屋外で越冬できるようになっている場合もあります。生育の様子を見ながら挑戦してみる価値はあるかもしれません。
イペーの剪定
高木の剪定は計画的に
なんといっても高木のイペーですから剪定は必須作業となります。とはいってもいつでもよいわけではなく、剪定の時期があります。イペーの剪定は花の後の5~6月ごろに、樹高を整える意味で行ってください。低木に仕立てたい場合もこの時期に強い剪定を行ないますが、あまり刈り込むと枯れてしまうこともあるので注意しましょう。
最後に、イペーの育て方のポイントをまとめました。
イペーの育て方のポイント
- 土壌は選ばないが、日当たりがよく風の当たらない場所が好ましい
- 剪定は花後、強剪定は厳禁
- 防寒対策は万全にすること
まとめ
まるで黄色の桜を思わせるイペーの木には圧倒させられますね。近年では関東圏でも見られるようになりましたが、まだまだ南の地域の木といったイメージです。ごく一部ですが、雪が降っても枯れなかった例もありますので、一般に広まり、ブラジルだけでなく日本でも愛される花になるとよいですね。春の同じ時期に桜とイペーが並んで咲きそろうところを見てみたいものです。
写真:コガネノウゼンと呼ばれるイペー