菜の花とは?
品種名ではなく総称
菜の花とは、アブラナ科アブラナ属の花の総称のことです。特定の品種名ではありません。特にアブラナ(油菜)やセイヨウアブラナ(西洋油菜)の別名として使われることが多いです。カラシナやブロッコリーなどの食用種は「菜花(なばな)」と呼ぶこともありますが、実際にはアブラナ属の花は、黄色くて形状も似ているものが多いことから、ほぼすべて「菜の花」と呼ばれています。
油を採取する品種もある
菜種油の原材料
前述のアブラナやセイヨウアブラナは、植物油を採油する目的で栽培されることが多いです。採油した油は「菜種油」と呼ばれています。なお、両種は名前は似ていますが、植物学上はまったくの別種です。アブラナは在来種で食用種にもなります。現在は開花前に収穫して、野菜として食べることが多いです。セイヨウアブラナは北ヨーロッパを産地とする植物で、日本には明治時代初期に導入されました。
現在の油糧用種はセイヨウアブラナが占めている
現在、アブラナは食用種として栽培することが多くなりました。なぜならセイヨウアブラナのほうが収穫量が多いため、より多くの油や肥料が採れるからです。また、セイヨウアブラナは食用にできますが、在来種よりも固く成長した葉はロウ質の白粉で覆われるという特徴も持っています。そのため、セイヨウアブラナで食べられるのは、芽生えてすぐの若い葉だけです。
ほとんど油糧用種として栽培されるセイヨウアブラナですが、野菜として利用することもあります。有名な「三重なばな」も、食用に選抜されたセイヨウアブラナです。
観光資源としても利用されている
菜の花畑は季節の風物詩
菜の花が開花の季節を迎えると、一面が黄色い花で覆われます。その景色の見事さから春の風物詩として、詩歌や童謡の題材にされるほどです。このため主な生産地の菜の花畑は、開花時期の間は観光資源にもなっています。
ブロッコリーや白菜もアブラナの仲間
菜の花の仲間とされるアブラナ科の植物は非常に多いです。カラシナ、ザーサイ、カブ、キャベツ、ハクサイ、ブロッコリーなど、花を食用にできるアブラナ科の植物は、みんな「菜の花」の仲間に分類されています。なお、アブラナ科の植物のなかには、白や紫色の花をつける種類もありますが、この場合は「白い菜の花」「ダイコンの菜の花」と呼ばれます。
菜の花の主な生産地は?
食用としている菜の花をもっとも多く生産しているのは千葉県です。東京市場で流通している菜の花は、千葉県産の物が全体の6割以上を占めていると言われています。千葉県のなかでも、もっとも多く菜の花を栽培・生産しているのは房総半島南部にある安房地方という地域です。その他の生産地としては徳島県、香川県、高知県と、四国勢が知られています。
高級料亭などで用いられている、ブランド京野菜の「花菜」という菜の花は、主に京都府の長岡京市で作られているよ。
菜の花の旬の時期は何月?季節はいつ?
旬の時期は何月?
季節で言えば初春
菜の花の旬の時期は、季節で言えば初春、2月~3月頃になります。近年は予冷技術の発達により出荷時期が延びてきているので、この時期以外でも出回るようになりました。また、京野菜として知られている「寒咲花菜」は、12月頃から出荷されています。
見頃の季節はいつ?
地域によって異なる
菜の花の開花時期は、基本的には2月~5月です。ただし桜と同じく、開花時期が南から北上していくため、九州と東北・北海道とでは開花時期にも見頃の時期にも、かなりのズレが生じます。そのため、春以外の季節に菜の花関連のイベントを行う地域も存在しています。
温暖な九州地方では、1月~2月頃に菜の花の見頃を迎える地域があります。
菜の花の栄養成分は?
ビタミンやミネラルが豊富な緑黄色野菜
菜の花は栄養価の高い緑黄色野菜です。ビタミンCはホウレン草の3倍、βカロテンはピーマンの5倍の量が含まれています。その他、カルシウム、カリウム、マグネシウムや鉄分などのミネラル成分も豊富です。その上アクが少ないので、他の緑黄色野菜と比較すると調理も楽だとされています。旬の時期に入ったら、積極的に菜の花を摂りましょう。
美味しい菜の花の選び方
開花前の新鮮な物が絶対条件
美味しい菜の花を選ぶコツは、何と言っても開花前の物であることです。菜の花は開花してしまうと、味も栄養分の量も落ちてしまいます。あとは鮮度のよい物を選ぶことです。茎や葉がシャキッとしていて、茎の切り口もみずみずしく、色味も鮮やかであれば間違いないでしょう。切り口が白っぽかったり、茶色く変色したりしていたら、鮮度が落ちている証拠です。
菜の花は束で売られていることが多いよ。その際は上記のポイントに加えて、葉や茎が詰まっている物を選ぼうね。
菜の花の保存方法
早めに食べる場合
早めに食べる場合、まずは乾燥しないように濡らした新聞紙やキッチンペーパーで包み、袋に入れます。冷蔵庫で保存しますが、その際には根の部分を下にして、立てて入れるのがコツです。横向きに入れて寝かせた姿勢にしてしまうと、茎が曲がったり、しおれたりして早く傷んでしまいます。
長期保存する場合
長期保存する場合は、鮮度が落ちないうちにさっと茹でてから小分けにして、冷凍保存するのが基本です。茹でる際は水1Lに対して20gの塩を混ぜた熱湯で茹でます。茹でる時間は30秒~1分でOKです。その後湯上げしてから冷水にさらします。菜の花のビタミンは水溶性の成分が多いので、茹ですぎ・冷水のさらし過ぎに注意しましょう。食べるときは自然解凍がおすすめです。
自然解凍した菜の花は、ほぐしてからおひたしや和え物にすると美味しく食べられますよ。
出典:BOTANICA