ひょうたん(瓢箪)とは
ひょうたん(瓢箪)は、ウリ科ユウガオ属のつる性の一年草です。実は昔から水や酒を入れる容器として利用されてきました。近年ではベランダなどのグリーンカーテン(緑のカーテン)としても注目されています。ひょうたんの育て方をご紹介する前に、ひょうたんについて知っておきましょう。
ひょうたんの歴史
ひょうたんは北アフリカ原産の植物です。最古の栽培植物のひとつとして知られ、食用や主に加工材料として世界に広まりました。日本でも縄文時代の遺跡から種子が出土しています。ひょうたんはククルビタシンという毒性のある苦み成分を含んでおり、果肉は嘔吐や下痢などの食中毒をひきおこすため注意が必要です。ククルビタシンが少ない種類は食用にされます。なかでもユウガオはククルビタシンの含有量が少ない変種で、かんぴょうの原料です。
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ひょうたんは軽く丈夫で、世界各国でさまざまに用いられています。瓢箪の「箪」は「容器」の意味です。日本では水や酒を入れる器や、2つに割ってひしゃくとして使いました。韓国ではひょうたんの容器を「パガジ」と呼び、婚礼用品として使います。アメリカインディアンは喫煙具に、南米ではマテ茶の容器に、ニューギニア島の先住民はペニスケースに、その他楽器や、浮きや漁具としても使われてきたのです。
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ひょうたんは日本では縁起物としても大切にされます。「3つで三拍(三瓢)子そろって縁起よし、6つで無病(六瓢)息災」の意味があるのです。ひょうたんには種が多いことから子孫繁栄や多産の象徴とされ、おめでたい吉祥文様にも使われます。千成ひょうたんは豊臣秀吉の馬印でもありました。また、昔から日本では「ひょうたんには神霊が宿る」とされます。ひょうたんは気を清める開運アイテムとしても注目されているのです。
栽培されるひょうたんの種類
昔のひょうたんはくびれた形ではなかったそうです。現在では大きさも形もさまざまな種類があります。千成ひょうたんは小さい実がたくさんなり、育て方が比較的簡単です。大人の背丈を超えるような長いひょうたんができる大長、胴回りが1mを超えることもあるジャンボひょうたんもあります。つる首ひょうたんは鶴の首のように上部が長細い形です。UFOと呼ばれる形もあります。
ひょうたん(瓢箪)の栽培方法①種まきと苗づくり
早速、ひょうたんの育て方をご紹介していきましょう。こちらの画像はひょうたんの育て方の流れを示しています。種まきや育苗には一定の温度が必要ですが、他の段階でも適した時期があるのです。花粉は雨が苦手のため、受粉は梅雨の前に済ませます。実が肥大する時期は水を多く必要とするため、梅雨の時期に重なるのが理想です。そして収穫は台風が来る時期より前に終わらせます。これらの時期を目標に逆算して、種まきの準備を始めるのです。
種まきのための土づくり
種まきには市販の培養土を用いることができます。自分で配合する場合は、種まきの1週間前に土づくりを行います。畑土4L、堆肥4L、砂2L、苦土石灰大さじ2杯の割合で混合し、水をかけて湿り気を与え、ビニールをかけておきましょう。
種まきに適した時期・気温
種から育てる場合は、桜が満開になる時期(3月下旬~4月上旬)に種まきをします。地面の温度が10℃以上、気温が23~28℃で最も発芽率がよいです。種まきには人によっていろいろな方法が推奨されます。何も処理をしないでそのまま種まきするのがよいという人もいれば、ぬるま湯に一晩漬けてから種まきするという人もいます。どの方法にも一長一短があるのかもしれません。
筆者の母が受けたひょうたん作り講習会では、皮の硬い種の発芽を促進するための処理を教わりました。種まき前に、種を一昼夜、水かぬるま湯につけます(種は水に浮きます)。次に下の画像のようにへその部分をペンチで軽く割るのです。割れ目から種の中をのぞいてみると、よい種は将来根となる白いものが見えますが、見えないものは未熟種子なので使いません。そのまま種まきすることもできますが、発根させてから蒔くと発芽時期を揃えられます。
発根させる方法は、ガーゼか脱脂綿を濡らしたものに種を挟んで黒いビニール袋に入れ、乾燥しないようにしながら暖かい場所(20~30℃)に置きます。幼根が出て0.5~1cm程度になった頃が種まきに適した時期です。直径9cmのポットに縁から1cm下まで用土を入れ、種2粒を横に寝かせるように種まきします。深さは1cm程度です。日中は20~30℃に保ち、冷える日にはビニール等で保温したり、夜間は家の中に取り込んだりします。土が乾いてきたら水やりしましょう。
苗の育て方
発芽してから苗が育つ間も20~30℃を保ち、昼間は十分に日光を浴びせます。必要に応じて夜間にビニールをかけて保温したり、夜露を防いだりしてあげましょう。光不足や高温多湿の場所で育てると、徒長苗となりやすいです。徒長苗は主根がなくひげ根ばかりで、ぐらついたり曲がったりしやすくなります。よい苗は主根が通ってしっかりと身体を支え、茎が太く葉が大きい苗です。よいほうの苗を残して、本葉2枚が展開するまでポットで育てます。
ひょうたん(瓢箪)の栽培方法②定植
ひょうたんの種まきや育苗と並行して、定植する場所の準備を進めます。ひょうたんの栽培には場所と土だけでなく、つるを誘引し、実の重さを支える支柱と棚やネットが必要です。大きなひょうたんを目指すのであれば、相応の高さと頑丈さのある棚が必要になります。小さめのひょうたんならば、手が届く程度の高さにしておくと、つるを誘引したり人工授粉(後述)したりする際に楽です。
定植のための土と植え付け場所
ひょうたんの栽培には半日以上日が当たり、風通しのよい場所を選びます。西日ではなく朝日が多く当たる場所が最適です。ひょうたんは午後3時頃になると生長を休む性質があるからです。ひょうたんはぐんぐん伸びるため地植えが望ましいとされます。土のpHは6~7が最適です。連作障害を起こしやすいため、前年にウリ科植物を植えた土は避けます。同じ場所で育てる場合は、完全に用土を入れ替えることが必要です。
ジャンボひょうたんでは1株あたり1.5m四方、株間1mという広さが必要です。その広さがないと全く育たないというわけではありません。しかし株間や面積が足りないと実が小さめになりますし、あまりに狭いと枯れます。大きいひょうたんを作るには、広い場所が必要です。植え付け場所は深さ40~50cm程度を掘ります。1㎡当たり堆肥2kg、苦土石灰150g、化成肥料150gをよくすきこんで2週間~1カ月程度寝かせ、植え付け数日前によく耕しましょう。
植え付けの際のポイント
定植に適した時期は4月下旬~5月上旬、地面の温度が16℃以上になったときです。この時期に定植できると、梅雨が来る前に受粉を終え、実の肥大に必要な水分を梅雨の雨で十分に与えられます。植え替えは、風が静かな晴れた日の午前中に行うのが理想的です。根鉢をくずさないように植え付け、竹串や棒などで支柱を立てて支えます。定植後1週間~10日程度は穴あきビニール等で温度と水の蒸散を調節し、急な冷え込みや遅霜にも注意しましょう。
植え付け後の育て方
水やり
定植後2~3日は水やりを控え目にして、根の成長を促します。その後は土が乾き始めたタイミングでたっぷりと水やりを行いますが、気温の低い朝か夕方が望ましいです。大きな葉がたくさんついてくると水分の蒸散が激しくなるため、夏場は水やりを毎日(必要ならば朝夕に2回)欠かさないようにします。かといって過湿にも注意が必要です。順調に生育した場合、本葉2枚で定植した苗が5~6日目から生育を始め、2週間後に本葉5枚程度になります。
肥料
肥料を与えるタイミングは、植え付け2週間後、親づるが棚の上に達した頃、実がついた頃です。カリウムやマグネシウムを含む緩効性肥料を与えるか、週に1回水代わりに液肥を与えます。地植えの場合は根が広がるため、1回目の追肥は株元から30cm、2回目は50cm離れた場所に肥料をやると、根の先から吸収しやすいです。酸性雨の影響で土壌が酸性に傾くとひょうたんの生育に悪影響を与えるため、必要に応じて苦土石灰をすきこみます。
病害虫
ひょうたんに最も多いのはうどんこ病です。カビが原因で梅雨が過ぎた頃に発生します。葉などが白い粉をまぶしたようになって、光合成が阻害される病気です。つるの整理をして風通しをよくして予防しましょう。つる割病やつる枯病、べと病や炭疽病が発生することもあります。
害虫としてはウリハムシ、アブラムシ、ウリキンウワバ(ガの仲間)などに悩まされます。ウリハムシの成虫は画像のように橙色で、体長7mm程度の甲虫の仲間です。成虫は葉や実を、幼虫は根や実を食害します。アブラムシも栄養を吸い取られてしまうため要注意です。ウリキンウワバの幼虫は葉や若い実を大量に食べます。実に傷やあばた模様ができるため、見つけたらこまめに捕殺しましょう。
ひょうたん(瓢箪)の栽培方法③摘心(摘芯:てきしん)
ひょうたんはつるを伸ばしながらぐんぐん生長していきます。しかしただ伸ばしていれば実がなるわけではありません。ひょうたんの場合、親づるについた実は大きく育ちにくいため、摘心(てきしん)という作業をして子づるや孫づるに咲いた雌花に実をつけさせます。摘心とは、花や実を大きく育てるために、茎や枝を途中で摘み取ることです。ひょうたんの育て方で重要な、摘心の方法についてご説明しましょう。
ひょうたんの葉のつき方
上手に摘心をするには、ひょうたんの葉のつき方について知る必要があります。ひょうたんは葉が大きいため、葉が重ならずに太陽の光を効率よく受けられるように、葉のつき方に工夫があるのです。ひょうたんの茎は五角形をしています。そして画像のように、新しい葉は前の葉より半時計回りに144°回ったところにつくのです。1枚目の葉の上には6枚目の葉がつくことになります。同じ列についている葉同士は、同じ維管束(水分や養分が通る管)でつながっているのです。
ひょうたんの摘心
まず親づるが棚に達するまで(本葉10~15枚程度)伸ばします。その間に出た脇芽はかき取りながら、こまめに支柱に結束していくのです。特に大きく育てたいものは、本葉20~30枚で摘心することもあります。
仮に画像のように、本葉15枚を残して親づるを摘心するとしましょう。すると14枚目と15枚目の本葉のつけ根から、子づるが出るのです(画像の青と赤のつる)。そして雌花は、それぞれの子づるの1枚目~3枚目の葉の付け根につきます。
次に子づるを摘心するときは、摘果(後述)で残した実のところについている葉を基準に、次の葉から数えて5枚目の葉を必ず残して摘心します。前述の通り、この葉は維管束で実につながっているからです。摘心でつるを整理すると、花柄が太く短い雌花となり、よい実がなります。子づるに花がつかなかったり、受粉に失敗したりした場合は、早めに子づるを摘心して孫づるを伸ばしましょう。棚の上では葉の密度が均一になるようにつるを誘引し、光が当たりやすくします。
出典:写真AC