ヤセウツボの生態
ヤセウツボの生態の特徴は葉緑素がないので緑色をしていないことと、そのため自分で栄養をつくれないことです。植物の葉が緑色をしていいるのは葉緑素によるもので、光を使って栄養分(光合成)を作って成長しますが、ヤセウツボの生態は栄養をつくらない代わりに他の植物から養分をもらう寄生植物です。
生息分布
ヤセウツボは畑や牧草地といった乾燥気味の土壌を好む帰化植物です。日本では本州や四国で見つかっていますが、最初は千葉県で1973年に発見されました。帰化植物とは外国から入ってきた後、日本に生息できている植物のことをいいます。
ヤセウツボの姿
ヤセウツボの生態は全体的に短い毛が生えてる茎の高さが15cm~40cm、繁殖力の強い花を咲かせ実をつける一年草です。葉緑素がないので色は緑色ではなく夏の初めにつくしのようにでてくる花芽(苞葉)は茶褐色です。
花
ヤセウツボの花は長さ12mm~15mmの唇のような形をしています。下唇に当たる部分は3裂に分かれていて中央の列片が最も大きく、へりは波打つようなウェーブがあり色は淡黄色で紫色の斑点があります。開花時期は4月~5月です。
キバナヤセウツボはアルビノ種
キバナヤセウツボはヤセウツボのアルビノ(色素がぬけたもの)と考えられています。全体的に色が黄色みがかってはいますが、ヤセウツボと変わらない生態です。生育地や分布も同じくヨーロッパ、北アフリカ原産で、中近東やアメリカ、アジアに帰化している植物です。
種子
ヤセウツボの種子は1mmにも満たない小さなもので果実の中にたくさん詰まっています。種子は寄生できる相手が近くにあれば発芽できますが、なければ何年間も発芽せずその能力を保ったまま10年間は過ごせる能力があるとされています。
葉
ヤセウツボの葉は先のとがった形をしていて互い違い(互生)に出ています。見た目は紫色のアスパラガスのようにまっすぐに伸びた茎に薄毛があるのが特徴です。色は赤褐色~黄褐色で紫色をした種類も見かけ、高さは30~50cm程度ですが100cmをこえるものもあります。
毒性
ヤセウツボを食用にできるかどうかの毒性は不明ですが、動物の胃から種が見つかっています。食用にはまだ注意が必要ですが、筑波大学の研究グループはヤセウツボから抽出した物質にアルツハイマー病に効果があるという研究結果を発表しています。
山野草を食べるときは毒に注意
山菜や野草には食中毒をおこすものがあります。植物の中には動物や昆虫に食べられないように有毒な成分を自ら作り身を守る働きがあって、食用のニラとスイセンの葉を間違って食べたなど、春先から初夏にかけて山野草による食中毒が多く発生しています。
アルツハイマー病とは
アルツハイマー病は脳内にタンパク質のアミロイドベータが蓄積することで起こることがわかっています。凝集したアミロイドベータは活性酸素を生じさせて周囲の脳細胞を死滅させ、脳を萎縮させると考えられている病気です。
ヤセウツボの国内上陸
ヤセウツボのような帰化植物は牧草などの輸入品やコンテナの隅に交じって国内に入ってきたり人の衣服や靴、動物の胃を介して移動したりするとされています。ヤセウツボの原産は地中海沿岸のヨーロッパやアフリカです。
ヤセウツボ以外の帰化植物
日本に生息できて日本固有の植物のように思われているものにセリ、ハルノノゲシ、オオバコなどがあります。昭和の時代にはいるとブタクサ、セイタカアワダチソウも入ってきて、花粉症の原因になることから環境問題だけではなく健康問題にもなっているのも帰化植物です。
ヤセウツボは寄生植物
寄生植物とは自分では栄養分をつくらず他の生きた植物に根を張り相手のつくった栄養分を吸って成長する植物のことです。栄養を吸い取られる植物のことを宿主(しゅくしゅ)植物と呼びます。
ヤセウツボの宿主
ヤセウツボは主にムラサキツメクサやシロツメクサ、コメツブツメクサといったマメ科やセリ科、キク科の根に寄生していますが他の植物にも寄生しています。要注意外来生物に指定されているので、見つけたら抜き取ることになっています。
ヤセウツボの駆除
「外来種被害防止法」に指定されているヤセウツボは見つけ次第抜くことをお願いされていますが、種子の数が多いので花が咲く前に抜いてしまう方がよいでしょう。湿地や窒素肥料が多い場所でも生育は遅れることがわかっているので、土壌を乾燥させないことも駆除には役立ちおすすめです。
ヤセウツボの花言葉
ヤセウツボの花言葉は「依存心が強い」です。寄生した植物の根から寄生根を宿主につなげて宿主の養分を吸収して成長することに由来しています。寄生された植物(宿主)はそのため成長が遅くなり、さらに宿主が弱るとヤセウツボも成長がおとろえてくる依存した関係です。
ヤセウツボの名前の由来
ヤセウツボの漢字は「痩靫」を使います。花穂が矢を入れる「 靫(うつぼ)」に似ていることからきています。靫とは、武士が狩りをするとき矢を入れるために腰や背に結ぶ籠のような道具のことで、靭に毛皮を付けたり漆塗りにして矢が雨に濡れるのを防いでいるものがあります。
まとめ
国外からやってきたヤセウツボはつくしにも見えますが食用にはならない植物です。素朴な感じをかもしだす紫色の花は、宿主のシロツメグサの白い花の中に見つけるとコントラストが美しく見とれてしまいますが、気をひきしめて駆除しておきましょう。
出典:写真AC