シャガってどんな花?
花の特徴
シャガはアヤメ科の常緑宿根草で、4月~5月にかけて青みを帯びた白い花が咲きます。菖蒲やアイリスと同じような形の花ですが、大きさは5cmほどで小ぶりです。6枚の花びらのうち大きな3枚の花びらに、紫と黄色の斑入りの模様がきれいに入っています。
学名と和名
シャガの学名は、"Iris Japonica (アイリス・ジャポニカ)"です。「ジャポニカ」とも入っているの日本古来の花なのかな?と思った方がいるかもしれませんが、意外にも中国が原産で、古代に日本に入ってきてから野生化したようです。また、漢字では「著莪」・「射干」と表記しますが、これはなかなか読みづらいですよね。
シャガの生息地は?
どんな所に咲いている?
シャガは半日陰で湿り気のあるところが生息地なので、里山などの森林や、お寺の境内などででよく見かけます。暗い森の中の道を車で走っていると、突然遠くに白いカーペットが敷いてあるかのように見えて、近づくと一面のシャガが咲いていた…という景色に出会うことがあります。暗い場所でも健気に咲くシャガには心癒されますよね。
群生地は?
シャガの有名な生息地としては、京都府綾部市水源の里や、福島県いわき市高蔵寺などがありますが、人知れず咲いているシャガの生息地は全国各地にあるはずです。(ちなみに上の写真は兵庫県北部の里山のものです。)
シャガにはどんな種類があるの?
シャガは種類もあまり多くないのですが、日本で見られるものとしては、ヒメシャガ、スジシャガ、中国青花シャガなどがあります。それぞれの種類の特徴をあげてみました。
ヒメシャガ
ヒメシャガはシャガより小さめの薄紫または白の花を咲かせます。背丈も低く、葉も細いのでより繊細な印象がありますね。冬も常緑のシャガと違って、ヒメシャガは葉が枯れてしまいます。
スジシャガ
スジシャガは葉が緑と白のストライプになっていて、斑入りシャガとも呼ばれています。斑入り植物は花数が少ないのが難点なのですが、このスジシャガの葉はとても美しいので、葉だけでも生け花の花材として使えそうですね。
中国青花シャガ
中国青花シャガは中国で見つかったシャガで、花の色もヒメシャガの紫よりさらに青みがかかった深みのある色です。この花も常緑なので、花の咲き終わった後も葉は地上に残ります。
シャガの育て方は?
シャガは一見弱そうに見えますが、実はきわめて丈夫で土質も選ばず放任でもよく育つ植物です。自分の庭にシャガを植えてみたい…という方へ、初心者でも簡単な育て方のコツをご紹介します。
植える場所
シャガは地植えはもちろん、鉢植えでも元気に育ってくれます。湿り気がある半日陰を好みますが、全く光が当たらないと葉ばかり伸びて花つきが悪くなります。大きな木の根元や一日のうち半分ぐらいは日陰になってしまうような所に植えるといいでしょう。ただし、繁殖力が旺盛で地下茎を伸ばしてどんどん広がっていくので、庭に植える場合はある程度広いスペースがある所か、小まめに抜いて管理した方がほうがいいですね。
用土
シャガには保水性があってなおかつ水はけがいい土が向いています。赤玉土7割、腐葉土3割ぐらいの配合で土を混ぜるといいでしょう。
水やり
シャガは同じアヤメ科の菖蒲やアイリスなどと同じように、湿った環境が好きなので、鉢植えの場合は表面の土が乾いてきたらたっぷり与えてやりましょう。水切れすると葉が黄色く変色してしまいます。庭植えは真夏だけ注意して水やりする程度で大丈夫です。
肥料
シャガはもともと丈夫な山野草なので、油かすを少量与える程度で肥料はほとんど必要ありません。花をたくさん咲かせたいときは、液肥をやるだけでも十分でしょう。
植え替え
花が咲き終わる6月ごろが植え替えに最適です。特に鉢植えの場合は根づまりしやすいので毎年植え替える方がいいでしょう。庭植えの場合はそのままでも大丈夫です。冬場は気温が0℃ぐらいまでなら越冬もできるので、花が枯れても葉は緑色のままで残ります。庭のグランドカバーとして鑑賞できて重宝しますよ。
増やし方
シャガは種を作らない種類の植物なので株分けで増やします。花を咲かせている間を避けて、植え替えの時や夏の暑さが過ぎて涼しくなってきた秋ごろに株分けするといいでしょう。掘り上げた株を小分けして、葉を半分ぐらいまで切り戻しておきます。庭で増えすぎて抜いた株も、捨てずにこの方法で植木鉢に植えておけば、お友達にプレゼントすることもできますよね!
シャガの花言葉
「清らかな愛」「友達が多い」「反抗」「私を認めて」
シャガの花言葉は、「清らかな愛」「友達が多い」「反抗」「私を認めて」と、いい意味合いも、またそうでない意味合いもあります。ただ、シャガは一日でしぼんでしまう花なので、切り花にして誰かに捧げることはめったにないでしょうから、「反抗」とか「私を認めて」とか、そういうマイナーな花言葉はあまり気にしないほうがよさそうですね。
花言葉の由来
シャガの花言葉はそれぞれ植物としての特徴をよく表しています。
- 「清らかな愛」は、その可憐な容姿そのものを表しています。
- 「友達が多い」は、地下に根を伸ばして仲間をどんどん増やしていく様子にちなんでいます。
- 「反抗」は、とがって光沢のある葉が剣に似ているので抵抗しているように見えます。
- 「私を認めて」は、明るい所を避けて薄暗い場所でひっそり咲く姿に由来しています。
季語としてのシャガ
シャガは夏の季語
著莪(シャガ)は俳句では夏の季語になっています。しっとりとした和の雰囲気を持っているし、日陰にひそやかに咲いている様子や涼しげな容姿が、俳句のわびさびの世界観にぴったりですね。
著莪を季語とする俳句
- 「一隅を照らすに余り著莪明り」後藤比奈夫
- 「紫の斑の仏めく著莪の花」高浜虚子
- 「譲ることのみ多き日々著莪の花」塙 義子
まとめ
このように、地味ではあるけれどその美しさは心に染みわたるシャガは、まさに日本の風土に合った魅力的な花と言えますね。特に日本の庭事情は、お隣の日陰になる部分が多かったり、北向きの庭しかなかったりと、決して好条件ではないことも多いはず。そんな場所にこのシャガは強い味方になってくれます。育て方も難しくなく、放任していてもどんどん増えてくれて、しかも冬場も枯れずに緑の葉は残るので、一年中庭に緑がほしいという方にもぜひお勧めします!
出典:筆者撮影