月下美人の概要
月下美人(ゲッカビジン)はメキシコの熱帯雨林地帯が原産地の多肉植物で、「月下」と名にあるとおり夜にしか咲かない不思議な花です。そのうえ、せっかく咲かせた美しい花はたった一晩でしぼんでしまい、翌朝には色もにおいも消えてしまいます。この儚さが、魅力に拍車をかけています。暗闇に映える真っ白で大きな花と、甘く強いにおいがとても神秘的です。
分類 | 多肉植物 |
形態 | 多年草 |
原産地 | メキシコ |
開花時期 | 7月~11月 |
花の色 | 白 |
暑さ / 寒さ | 普通 / 弱い |
特性 | 常緑性、香りがとても強い、開花時期が長い |
甘い香りが人気
月下美人は「月来香(ゲツライコウ)」という別名を持っています。由来は、濃密な香りを放つことからです。ヨーロッパでは香水の香料としても愛用されています。香りはジャスミンに似ていて、甘くて上品な、とても優雅な香りです。ベランダで育てると、部屋いっぱいによいにおいが広がります。花の姿が見えなくても、「ああ月下美人が咲いているな」と気付けるほどの強い香りです。
香りの強さは種を残すため
月下美人の花が強い香りを放つのは、実は「子孫を残すため」です。原産地であるメキシコで、アリや蝶の代わりに花粉を運ぶ役割を担うコウモリを惹きつけるために、真夜中に花を開き、強い香りでアピールしているというわけです。純白の花色も暗闇で目立つためといわれています。確実に子孫を残すための進化であり、月下美人の強さが垣間見える一面ですね。
月下美人の花言葉
甘いにおいや大きくて白い花、神秘的な特性で愛好家を魅了する月下美人には、いろいろな花言葉がつけられています。ちなみに、花の色による違いや品種別につけられた花言葉はありません。
月下美人の花言葉①「あでやかな美人」
艶やか(あでやか)とは、女性が華やかで、なまめかしい雰囲気をまとっている様子を意味しています。月下美人の花の姿をそのまま表現したような花言葉ですね。
月下美人の花言葉②「儚い恋」「儚い美しさ」
月下美人はたった一晩、数時間の間しかその花を咲かせない非常に短命な花です。そうした特徴から、恋や美貌が儚いことを表す花言葉がつけられました。ちなみに、「美しい女性は病弱だったり、寿命が短かったりする」という意味の「佳人(美人)薄命」という四字熟語も、月下美人の花の様子が語源とされています。
月下美人の花言葉③「ただ一目会いたくて」
こちらも月下美人の「一晩しか咲かない」「1年に1回しか咲かない」という特徴が由来の花言葉です。ただし1年に1回しか花をつけないというのは俗説で、花の個体差によりますが、体力のある個体であれば1年間のうちに何回も花を咲かせることもあります。初夏と晩秋のように、季節が変わると花の印象も変わって見えるかもしれませんね。
ボタニ子
ほかにも「強固な意思」「繊細」「秘めた情熱」「優しい感情を呼び起こす」「デリカシー」などがあるよ!
ボタ爺
どれも月下美人の花のミステリアスな雰囲気にぴったりの花言葉ばかりじゃな。
月下美人の種類
昔から日本で咲いている月下美人は、もともとすべて一株の原種から増やしたものでした。近年は昼に咲く近縁属との交配が行われ、いろいろな園芸種が作られています。原種は20種類ほどありますが、花の色はどれも白色です。ピンクや赤、黄色といったカラフルな花を咲かせる種類は、近縁種や近縁種の園芸品種です。
宵待孔雀(ヨイマチクジャク)
濃いピンク色のめしべの軸が特徴の種です。花弁は細長い形で、花の色は白色です。上向きにつくつぼみは薄緑色で、直径17cmほどにもなる大きな花を夜空に向かって咲かせます。
十三夜美人(ジュウサンヤビジン)
スマートな花は宵待孔雀とよく似ていて、萼(がく)がクリーム色、めしべの軸は濃いピンク色です。開花してから、色鮮やかなピンクの実がなります。
歌麿呂美人(ウタマロビジン)
交配種の園芸品種である歌麿呂美人。月下美人と宵待孔雀から生まれました。直径18cmほどの花は、月下美人に比べるとやや小さなものです。薄ピンク色の萼から白い花びらへのグラデーションが美しい花です。
姫月下美人(ヒメゲッカビジン)
小さくて丸い花の形がかわいらしい原種です。香りが強い種で、一度に多くのつぼみをつけるという多花性を持っています。朝になっても花がしおれず、翌日の日中まで咲き続けることも特徴です。
満月美人(マンゲツビジン)
姫月下美人を交配して作られた、月下美人の交配種です。小ぶりの花ではありますが、月下美人にも負けずとも劣らぬ華やかさを誇ります。花が美しいこと、たくさんの花を咲かせることという、親となった種それぞれの長所を兼ね備えた花です。
人々を魅了する神秘的な月下美人
上品な香りと圧巻の花姿で人気の月下美人は、夏から晩秋にかけての夜空が美しい季節につぼみを開く美しい花です。美人が短命であることを意味する「佳人(美人)薄命」の語源となるほど儚い印象を抱かせながら、「あでやか」「情熱」「強い意思」といった華やかな花言葉も多数持っています。そうした二面性を感じさせる不思議な魅力に、月下美人のファンは夢中になっているのかもしれませんね。
出典:写真AC