多肉植物の簡単な増やし方①葉挿し
多肉植物を育てていると、いつの間にかコンクリートの上に落ちた葉から、新しい根や芽が出ていて驚くことがあるかもしれません。ベンケイソウ科の多肉植物には一枚の葉にも成長点があり、葉に蓄えられていた水分と養分から、新しい個体を再生できます。この性質を利用して、多肉植物を葉挿しで簡単に増やせます。多肉植物の生命力といじらしい姿に魅了され、葉を捨てられなくなる愛好家がたくさんいるようです。
葉挿しの方法とポイント
簡単に成功しそうな葉挿しですが、ポイントを押さえる必要はあります。一つは、張りのある元気な葉を使うことです。触ったときに落ちた葉や、挿し木の際に不要になって落とした葉も使えます。もう一つは、多肉植物に適した土を使うことです。葉はピンセットなどを使って、土の上に仰向けに寝かせて置くか、葉の根元が軽く土に隠れる程度に斜めに挿します。
葉挿しをしたら水やりは一切せず、最低1週間程度は明るい日陰で管理しましょう。この段階で水やりをすると腐ってしまうこともあります。葉の根元から根が伸びてきたら、日の当たる場所に移して水やりをします。葉を寝かせて置いた場合は、ピンセットなどで根を土に埋めましょう。子株の成長に使われるのは、元の葉が持っている栄養です。元の葉が枯れ、子株が自立できるほどに伸びてきたら、元の葉を取って植え替えます。
葉挿しの利点と欠点
葉挿しの欠点は、子株が成長するまで時間がかかることです。一方、お気に入りの種類の多肉植物を一度にたくさん増やせることは大きな利点といえます。葉挿しで育てた子どもは、最初は小さいです。小さいからこそ貝殻や石のくぼみなど、小さな器にミニチュアのように寄せ植えすることもできます。一つの細胞が生まれるところから育てるため、多肉植物に対して一層深い愛情を感じるかもしれません。
葉挿しによる増やし方に適する種類
葉挿しに適する種類には、葉に成長点を持つベンケイソウ科の多肉植物が挙げられます。具体的には、画像の朧月のようなグラプトペタルム、虹の玉などのセダム、カランコエ、エケベリア、クラッスラ、アドロミスクス、パキフィツムなどです。しかしベンケイソウ科のこれ以外の種類では葉挿しができないわけではなく、葉挿しに適する種類が挿し木で増やせないわけでもありません。
例えば画像は、カランコエ属の月兎耳(つきとじ)ですが、葉挿しで発根し、さらに挿し木でも新しい芽が出てきています。後述するように、葉挿しと挿し木を併用するのが、観賞しながら最も効率よく増やす方法かもしれません。観葉植物から葉が落ちたり、不要な葉を取ったりしたら、まずは葉挿しを試すとよいでしょう。
ベンケイソウ科のなかには、覆輪万年草(ふくりんまんねんそう)や若緑(わかみどり)など葉がとても小さいものがあります。葉挿しは可能ですが、たいへんな手間と時間が必要です。このような種類は挿し木や株分けで増やすのがよいでしょう。
多肉植物の簡単な増やし方②挿し木
多肉植物は挿し木でも増やせます。植え替えから1年以上経っているときや、徒長して見苦しくなったときに、形を整えたり植え替えたりするタイミングで挿し木にチャレンジしましょう。
挿し木の方法とポイント
徒長した多肉植物を剪定して形を整え、その切った部分を挿し木にするのがおすすめです。茎に節がある場合はそこから新しい芽が出るた、え、節の上で切ります。切った部分は長さを調節し、不要な下葉を落としましょう。切り口を1週間程度乾かしてから土に挿します。挿し木の場合も、根が出るまでは水やりをしないで明るい日陰で管理するのが大切です。元の株の節の部分からも新しい芽が出ますよ。
ボタニ子
乾かさないで、そのまま挿しても変わらないという人もいるの。絶対にこれ、ということはないのが多肉の挿し木なんだね。
切った部分を、用途別パーツに切り分けることもできます。土に挿す部分を約1cmとることを考えながら、残す葉のすぐ上で切りましょう。不要な葉は取って葉挿し用にします。一番上の部分は形が最もよく、発根後すぐに観賞できる株に成長する部分です。どの鉢にどのように植えるのかイメージし、大きくとるのもよいでしょう。下の方の部分は増やすことを考えて、脇芽を生かしたり葉を1~2枚まで切り詰めたりして挿します。
多肉植物から気根が出てきたときも、挿し木してみましょう。気根も土に埋めます。いくつかの部分に切り分けて挿し木するのもよいでしょう。不要な下葉や取れた葉は葉挿しに使えます。気根は「空気中の湿度が高すぎる」「土の中の水分が不足している」「鉢の中が根詰まりしている」などの原因で出やすくなるといわれています。気根のある部分はすでに根が出ているため成長が早いです。
グリーンネックレスやミカヅキネックレスのような垂れ下がるタイプの多肉植物も、挿し木できます。伸び過ぎたつるを適当な長さに切って、土の上に寝かせましょう。作業をしていると葉がぽろぽろ落ちてしまうかもしれません。そのような葉は葉挿しにすれば根が出て、新しい株へと育っていきます。
挿し木の利点と欠点
挿し木は葉挿しと異なり、葉が複数枚と茎、場合によっては気根もついています。葉挿しよりも丈夫で成長が早いことが利点です。画像のように元株は、最初は切り口が目立ってしまいますが、脇芽が出てくれば自然に目立たなくなります。しかし、葉挿しに比べると一度に増やせる数は少ないです。上部はすぐに飾ることを、下部はじっくりと待つことを考えて挿し木をし、不要な下葉や取れた葉は葉挿しにするなど、部分ごと使い分けられます。
挿し木による増やし方に適する種類
挿し木に適する多肉植物には、画像の黒法師など、木立性のものが挙げられます。セダム、クラッスラなど、たいていの多肉植物は挿し木が可能です。増やした後にどのように仕立てたいかを考えながら、挿し木と葉挿しを併用するとよいでしょう。
ボタニ子
次のページでは、水挿しと株分けによる増やし方のポイントを紹介します。
出典:筆者撮影