タニウツギとは
タニウツギ(谷空木)はタニウツギ科の落葉樹です。田植えのころ、5月中旬~6月にパッと色鮮やかな花を咲かせます。ひとつの枝の先端に複数の花をつけるので、ボリューム感があってとても見応えのある花です。日本生まれの品種で、北海道の西側や東北地方、山陰地方などに分布しています。寒い地域の谷沿いに多く見られることからタニウツギという名前がつけられました。
和名 | タニウツギ(谷空木) |
別名 | 火事花、死人花、葬式花 |
科属名 | タニウツギ科タニウツギ属 |
形態 | 低木 |
原産地 | 日本(沖縄以外) |
開花の時期 | 5月中旬~6月 |
花の色 | ピンク色、白色、赤色 |
暑さ / 寒さ | 普通 / 強い |
特徴 | 落葉性、耐寒性に優れる、生け垣に向く、盆栽に向く |
タニウツギは生け垣向き
タニウツギは暑さや寒さにも比較的強く、丈夫で育てやすい低木です。成長すると2mほどの高さになり、繁殖力も旺盛なので、一軒家や公園などの生け垣にもよく使用されます。花期には小ぶりのかわいらしい花が固まって咲く姿が、道行く人々を楽しませてくれます。ガーデニングにおいてもとても人気のある花です。
タニウツギは縁起が悪い?
とても美しい花をつけるタニウツギですが、一部の地域では縁起の悪い花として避けられています。タニウツギはその名のとおり空木(茎の中が空洞になっていること)で木材としての使い勝手がよく、葬儀のときに骨を拾うための箸にも利用されることから、忌み嫌われるようになったという説が有力です。また、燃えるように美しい色の花であるため、花の咲く時期にはあたりが山火事になったように見えるという説もあります。タニウツギに「火事花」「死人花」「葬式花」などの異名があるのはこのためです。
タニウツギの花言葉
タニウツギは5月31日の誕生花でもあります。花言葉の「豊麗(ほうれい)」は、ひとつの枝にたくさんの花をつけるタニウツギの性質にちなんだものです。山火事と見間違えるくらい一面をピンク色に染めるタニウツギの様子は、豊麗という表現がぴったりですね。
タニウツギの仲間
タニウツギの仲間①シロバナタニウツギ
タニウツギの中の、白い花を咲かせる品種です。シロバナウツギとも呼ばれます。開花の時期はタニウツギとほぼ同じ、5月中旬ごろからです。
タニウツギの仲間②ハコネウツギ
ハコネ(箱根)の名を持つウツギですが、箱根以外にも日本の各地で自生している姿が見られます。開花時は白色の花が、だんだんと深い赤色に色づいてゆくさまが美しい植物です。別名「ゲンペイ(源平)ウツギ」とも呼ばれています。
番外編:ウツギ(卯の花)
ユキノシタ科に属するのがこのウツギです。科が違うので仲間ではありませんが、こちらも枝が空木となっていることから、同じようにウツギの名がつきました。旧暦4月(卯月)のころに咲くことから、「卯の花(ウノハナ)」という名前でも親しまれています。ちなみにおからのことも卯の花と呼びますが、由来はウツギにちなんでいます。白いもののたとえとして卯の花を思いついた、当時の日本人の感性は素敵ですね。
タニウツギの育て方
タニウツギは暑さ、寒さにも強く繁殖力旺盛なので、ガーデニング初心者でも育てることは難しくありません。日当たりや肥料、水やりのタイミングなど基本的な部分に注意して、たくさんの花を咲かせましょう。放っておくとあっという間にあたり一帯に広がるほど生命力に溢れた植物なので、毎年欠かさず剪定もするようにしてくださいね。
タニウツギの育て方①日当たり・土
タニウツギは日当たりのよい場所が好きです。丈夫な植物なので半日蔭ほどの日光があれば生育自体は可能ですが、花のつき方に影響するのでなるべくよく日が当たる場所で育ててください。土質については特別注意する必要はありませんが、水はけのよい環境に植えるとより元気に育つでしょう。
タニウツギの育て方②水やり
タニウツギはそれほど神経質に水やりを必要とする植物ではありません。庭植えの場合は、自然に降る雨だけで基本的にまかなえるでしょう。鉢植えの場合は夏の暑い時期だけ、水切れに注意をしてあげてください。
タニウツギの育て方③肥料
花のつき方や成長速度等に問題がないようであれば、肥料は必須ではありません。施す場合は冬場に緩効性の化成肥料や固形の油粕などを、株元に適量与えるようにしてください。
タニウツギの育て方④植え付け
タニウツギの植え付けは、葉の落ちる季節である11月~3月が適期です。根鉢の3倍程度の植穴を掘って、腐葉土を混ぜこんだ用土へ植え付けてください。植え付けのあとはしっかり目に水やりをして、土とタニウツギとを馴染ませるようにしましょう。
タニウツギの病気・害虫
タニウツギは病害虫の心配もそれほど多くない品種ですが、注意すべき病気や害虫は存在します。それぞれの特徴と対処法について、順番に見ていきましょう。
タニウツギの病気
梅雨の時期にうどんこ病にかかります。葉がうどん粉をまぶしたように白いカビに覆われてしまう病気で、日当たりと風通しをよくするように意識すれば予防が可能です。また、花や葉に黒い斑点が現れるすす病にも注意が必要です。こちらはアブラムシの排せつ物が原因であることが多いので、アブラムシ対策をしっかりと行うようにしましょう。
タニウツギの害虫
冬を越えて暖かくなるのと合わせて、アブラムシが発生します。特に新芽に発生しやすいので、見逃さず駆除してください。放っておくと上記のとおり、すす病の原因になります。風通しがよくなるように剪定し、枝葉どうしで蒸れている場所がないようにすると効果抜群です。
タニウツギの剪定
タニウツギは繁殖力が非常に旺盛で、放置していると成長しすぎて栽培する場所が足りなくなってしまうこともあるほどです。翌年以降の花のつき方にも影響がありますので、適切なタイミングで剪定を行うようにしてくださいね。それでは、剪定に適した時期や手順について見ていきましょう。
剪定のタイミング
剪定を行うタイミングは花後すぐと、落葉期の12月~3月です。タニウツギの芽は8月には作られるので、花後に剪定を行う場合はなるべく早く着手してください。
剪定の手順
伸びすぎた枝を切り、必要があれば間引きを行いましょう。花芽が形成されたあとに行う冬の剪定は、間違って開花の近い枝を切り落とさないように注意が必要です。樹高を低く抑えたい場合には、冬場に強剪定を行ってもよいでしょう。ただしその年は花が咲きませんので、バランスを見て実施してくださいね。
タニウツギの増やし方
タニウツギは「挿し木」という方法で増やします。初心者でも簡単にできますので、ぜひ挑戦してみてくださいね。挿し木に適したタイミングや、手順についてご紹介します。
挿し木のタイミング
挿し木を行うのは6月~8月上旬と9月~10月が適期です。その年に伸びた枝を15cmほど切り取って挿し穂とします。より元気そうな枝を選んでくださいね。
挿し木の手順
手順は簡単で、切り取った挿し穂を挿し木用の用土に挿すだけです。挿し穂は葉をカットして、水揚げをしておきましょう。何本か根が出てくるまで、明るい日陰で管理するようにしてください。
まとめ
たくさんの種類があるウツギ系の植物の中でも、華やかな花色で高い人気を誇るのがタニウツギです。丈夫で育てやすく、剪定を怠ると生い茂りすぎるほど生命力も強いので、初心者にも安心です。ぜひ初夏のお庭の彩りに加えてみてはいかがでしょうか。イキイキとたくましいタニウツギの姿を見ていると、こちらも元気がもらえそうですよね。
出典:BOTANICA