ミヤコワスレとは
ミヤコワスレ(都忘れ)はミヤマヨナメの園芸品種です。江戸時代から品種改良が繰り返されている歴史ある植物で、野菊のような可憐な花を咲かせます。原種が日本原産であるため、日本の気候で育てることに向いています。それではどのような品種なのか、基本情報をお伝えします。
ミヤコワスレの基本情報
科属名 | キク科ミヤマヨナメ属 |
形態 | 多年草 |
原産地 | 東アジア |
草丈 | 20cm~30cm |
開花期 | 4月~6月 |
花色 | 青色、白色、ピンク色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | やや弱い |
色の種類にはそれぞれ濃淡があり、バリエーションが豊富です。また、耐寒性だけではなく耐陰性もあるため、シェードガーデンとしても人気があります。庭の影が多く寂しい印象を与えるような場所に植えると、明るい雰囲気に変えてくれるでしょう。桜の時期から初夏まで花を楽しむことができます。
ミヤコワスレの花言葉
ミヤコワスレの花言葉は「しばしの憩い」「しばしの慰め」「しばしの別れ」があります。承久の乱で敗北した順徳天皇が佐渡に流された際に、ミヤコワスレを見て「少しでも都のことを忘れることができる」と慰められたことが由来しています。別れの印象が強いため、ミヤコワスレをテーマにした歌も多くあります。
ミヤコワスレの品種
江戸時代より品種改良が続けられてきている植物だけあり、品種も数多く存在しています。品種によって花の大きさや草丈に差があり、特に草丈は20cm~70cmまでと幅広く、バリエーション豊かです。ここではその中から人気の高い3品種をご紹介します。
みのる紫
ミヤコワスレの中では最も大きな中大輪の花を咲かせる、人気のある品種です。花色は濃い青色や紫色で、草丈は30cm~50cmとやや高さがあります。茎が丈夫であるため、切り花としても楽しむことができます。
浜乙女
花付きがよく、中輪の花を咲かせる定番の人気品種です。花色はピンクで、草丈は50cm前後と高く育ちます。1週間ほど花もちすることから、切り花として楽しむこともできます。
江戸紫
濃い紫色の花を付ける代表的な人気品種です。大輪の花を咲かせ、花もちがよいことから、切り花として一輪挿しに生けて楽しむこともできます。
ミヤコワスレの育て方
ミヤコワスレを育てる際の注意点を5つにまとめました。耐暑性と乾燥に弱い性質であるため、日当たりや風通し、水やりには特に注意しながら育てましょう。
ミヤコワスレの育て方①用土
ミヤコワスレは水はけがよく、弱酸性の用土を好みます。鉢植えでは、赤玉土:腐葉土:鹿沼土を5:3:2の割合で混ぜます。鹿沼土には弱酸性を補助する働きがあるため、必ず加えるようにしましょう。市販の草花用培養土を使用する場合は、鹿沼土を1割~2割混ぜてるとよいでしょう。地植えで土壌が粘土質であれば、赤玉土を多めに混ぜることで、水はけをよくしましょう。
ミヤコワスレの育て方②植え付け時期と方法
5月~6月、9月~10月に作業しましょう。強い日差しが苦手ですので、初めて植え付ける際には9月~10月に行うとよいでしょう。鉢植えの場合、鉢の大きさの目安は4~5号鉢に1株、6号鉢に3株です。地植えの場合は、苗より2周りほど大きな植穴を掘ります。植穴の間隔は15cmほど空けるようにします。根を傷つけると弱るので注意しましょう。
ミヤコワスレの育て方③置き場所
暑さや強い日当たりに弱い性質をもっています。鉢植えの場合は、風通しのよい半日陰を置き場にしましょう。よしずなどで日当たりを遮るのもよいですね。地植えの場合も同様で、落葉樹の下などが置き場に適しています。置き場所が合うと手入れが少なくても毎年花を咲かせてくれますので、何か所かに分けて植え、合う場所を探すのも一つの方法です。
ミヤコワスレの育て方④水やり
湿っている土を好み、乾燥に弱い性質です。土の表面が乾いたらたっぷりと水やりを行いましょう。特に夏は1日2回行うとよいでしょう。冬は乾燥に注意しながら水やりを行います。しかし、地植えの場合は特に水やりの必要はなく、降雨で充分です。あまりにも乾燥しているようであれば水やりを行いましょう。
ミヤコワスレの育て方⑤肥料
鉢植えの場合は、植え付ける際に緩効性の化成肥料を用土に混ぜ込みます。その後は追肥として、5月~6月と9月~10月の間にそれぞれ1回ずつ同じ肥料を株元にまきましょう。秋以降の肥料を控えることで、次の年の花付きがよくなります。地植えの場合は特に肥料は必要ありません。
ミヤコワスレの植え替え方法
ミヤコワスレの根は成長が早いため、根詰まりを起こしやすい植物です。鉢底から根が伸びてくれば、一周り大きな鉢を準備し、開花後の6月か、涼しくなる9月~10月に植え替え作業をしましょう。地植えの場合は同じ場所で育て続けていると、成長が悪くなったり強い品種だけが残ることがります。5年に1回は植え替えを行うと、株が若返るでしょう。
ミヤコワスレの増やし方
ミヤコワスレの増やし方は、株分けと挿し木の2通りがあります。そちらもそれほど難しくはありませんので、育てている環境などに適した方法を選ぶとよいでしょう。
株分けでの増やし方
5月~6月、または9月~10月の植え替えと同時に株分けを行います。掘りあげた株に対しバランスよく根が行き渡るようにハサミやナイフで切り分けます。付いている土を落として、別の鉢や植穴に植え付けましょう。根に傷が付くと弱ってしまいますので、注意しながら株分けを行いましょう。
挿し木での増やし方
4月~6月に作業を行いましょう。新芽の先端から2~3節の部分で切り、葉は全て落とします。切り口を一晩水に浸け、清潔な用土に挿し木をしましょう。半日陰で管理しながら、土の表面が乾かないよう水やりを行います。30日~35日ほどで根が出るので、鉢や植穴へ植えましょう。
ミヤコワスレがかかりやすい病気・害虫
ミヤコワスレがかかりやすい病気に「白絹病」が、かかりやすい害虫に「アブラムシ」「ナメクジ」があります。それぞれ事前にしっかりと対策をとり予防していきましょう。
ミヤコワスレがかかりやすい病気
白絹病は湿度や気温が高くなると発生します。特に梅雨時期は注意が必要です。鉢は雨をしのげる場所に移動させましょう。白絹病にかかると、地面が白い絹のようなもので覆われ、株が弱っていき立ち枯れてしまいます。一度病気にかかると治すことは難しいため、処分するしかありません。風通しと水はけのよい土作りを行い、予防しましょう。
ミヤコワスレがかかりやすい害虫
4月~11月にアブラムシが発生します。キク科の植物をアブラムシは好みますので、オルトラン粒剤を株元にまき害虫予防しましょう。5月~7月にはナメクジが発生します。ナメクジは夜行性で、昼間は鉢や石の下に潜んでいるので、探して退治しておきましょう。市販の駆除剤をまくほか、木酢液を使用しても効果があります。
ミヤコワスレの手入れ方法
開花期はこまめに花がらを摘み取るようにしましょう。枯れた葉も同様ですが、放っておくと病気の原因にもなります。水やりなどの際に同時に行うように癖付けましょう。また、花が一通り咲き終わった株は、地際で切り戻し作業を行うと、切り取った茎を挿し木としても利用できます。
まとめ
シェードガーデンとして活躍するミヤコワスレは、花色も豊富であるため庭を明るく彩ってくれることでしょう。耐寒性は強いため、霜や凍結に注意すれば特別な防寒対策は必要ありません。江戸時代から親しまれている花を育ててみてください。
出典:BOTANICA