ヒスイカズラとは?
ヒスイカズラは日本でも見ることができますが、日本の気候で自然栽培することが難しいので、実際に目にしたことがない人も多いかもしれません。そんなヒスイカズラの基本情報や育て方の特徴、花言葉などをまとめて解説します。
別名「緑の宝石」
ヒスイカズラの花の最大の特徴は、鮮やかなエメラルドグリーンの色です。そのためヒスイカズラの花は「緑の宝石」と呼ばれています。日本ではエメラルドグリーンを「翡翠(ひすい)色」とよび、エメラルドを「翡翠」と呼ぶことからヒスイカズラと名付けられたといいます。また「自然の神様でなければ作り出すことのできない花」ともいわれているため、世界中で「神秘の花」ともいわれています。ちなみに花言葉よりも別名の方が有名なのも、ヒスイカズラの特徴といえます。
フィリピンのルソン島が原産地
ヒスイカズラの原産地は、フィリピン諸島の中で最も大きいルソン島です。雨季と乾季がはっきりしているのですが、1年を通して温度の変化がほとんどなく、冬の期間でも半袖で過ごすことができるほど気温が高いのが特徴です。南国の植物とエメラルドグリーンの海が人気のルソン島では、ヒスイカズラが自生しているのを見ることもできます。
激しい温度変化が苦手
ヒスイカズラの原産地であるルソン島では、期間を問わず温度変化が少ないのが特徴です。年間平均気温は26℃~27℃ですが、冬の期間でも平均気温はほとんど変わりません。日本の気候の特徴とは全く違うルソン島を原産地とするヒスイカズラなので、激しい温度の変化にとても弱いです。
ヒスイカズラは寒さにも弱い
実はヒスイカズラは、激しい温度の変化だけでなく低い温度も苦手です。特に温度が10℃以下になると寒さに耐えられず枯れてしまうため、極寒地での栽培は非常に難しいです。ちなみに東京でも1月~2月の平均気温は5℃ですから、温度管理をしなければ東京でも寒さのせいで枯れてしまうでしょう。
乾燥に強い植物ではない
ヒスイカズラの原産地であるフィリピンの季節は、雨季と乾季がはっきりしています。6月~11月の雨季には湿度も高くじめじめとしていますが、12月~5月の乾季になると温度も上がり空気も乾燥します。ヒスイカズラはフィリピンの環境に適応しながら進化してきた植物なので、半年間に及ぶ乾季にも湿度の高い雨季にも適応できるようになっています。とはいえもともとは湿度が高く湿度が高い場所を好む植物なので、乾燥に強い植物であるとはいえません。
ヒスイカズラの花は植えてもすぐには咲かない
ヒスイカズラはつる性の植物なので、植えるとすぐにつるを上に伸ばして成長します。でもいくら順調につるが伸びても、ヒスイカズラの花は植えた年には咲きません。ヒスイカズラの開花には茎の太さが関係しているので、茎が開花に十分な太さとなる3年~5年目までは、順調に成長していても花が咲くことはないでしょう。
ヒスイカズラの開花時期
ヒスイカズラの開花時期は、3月~5月です。ただし開花時期は育てる環境や温度とも関係するため、開花のピークに違いがあります。例年2月上旬ごろからつぼみが見られるようになりますが、早く咲くもので3月上旬、遅いものだと4月下旬に咲きます。なおヒスイカズラを育てている国内の植物園では、4月上旬~4月上旬に開花のピークを迎えるケースが多く、期間中にはイベントを開催することもあります。
育て方を工夫しても開花期間はわずか数日
藤の花のように房になって咲くヒスイカズラですが、開花期間がとても短く、開花が確認されてからわずか数日でしおれてしまいます。そのためヒスイカズラの花を長く楽しみたいのであれば、1株を大きく育てるのではなく、数を増やしていく方法がおすすめです。
ヒスイカズラの自然受粉はほぼない
残念ながらヒスイカズラが自然受粉する可能性は、ほとんどありません。一般的に花の受粉はミツバチや蝶などが花粉を吸う際に行われるのですが、ヒスイカズラの場合は一般的な受粉ができません。もちろんヒスイカズラの花にも蜜はあるのですが、花弁の形が複雑なのでミツバチや蝶には入り込めず自然受粉をしないのです。
原産地ではコウモリが受粉を助ける
原産地であるフィリピンでは、自然受粉で種子が採れます。でも受粉を助けるのは昆虫ではなくコウモリです。フィリピンのコウモリはヒスイカズラの蜜が大好物なので、蜜を吸う際に自然受粉が行われます。でも日本のコウモリの生息地は限られていますので、栽培をしている国内の植物園でもコウモリを使った自然受粉はしていません。
ヒスイカズラの花言葉
ヒスイカズラの花言葉は「私を忘れないで」です。見る人を虜にするほどの美しい花を咲かせるヒスイカズラの花言葉としては意外ですが、花言葉の意味はヒスイカズラの花の特徴とも関係します。ヒスイカズラの花は確かに美しいですが、数日しか咲くことができません。わずかな期間を精一杯咲いて散っていくのですから、「私を忘れないで」という花言葉はヒスイカズラの切実な想いが込められているのかもしれません。
切ない花言葉の理由は?
花言葉は切ないのに「宝石」と呼ばれるヒスイカズラには、「神様が作り出した特別な植物」という人々の想いが込められているのかもしれません。花言葉は切なくても、花は宝石のような輝きを持っています。自信と生命力にあふれたその姿を見ていると、見つめる私たちの方が、花言葉のように「私を忘れないで」とつぶやいてしまいそうです。そう考えると、ヒスイカズラの花言葉はとても奥が深いと思いませんか?
ヒスイカズラに適した環境は?
ヒスイカズラは原産地であるフィリピンでも絶滅危惧種に指定されており、自生スポットもかなり限定されています。このように説明をすると、初心者が育てるのは難しいのではないかと思うかもしれません。でもヒスイカズラは生命力が強い植物なので、ヒスイカズラに適した環境や原産地の季節の特徴を知れば、初心者でも育てることができます。
育て方の参考にするのは原産地の年間平均気温
激しい温度変化や冬の寒さが苦手なヒスイカズラなので、何℃を目安に温度管理をすればよいのか悩む人も多いはずです。そこで参考にしてほしいのが、原産地・フィリピンルソン島の年間平均気温です。ヒスイカズラが自生することができる温度をキープできれば基本的に手のかからない植物なので、寒暖差の激しい地域や豪雪地域であってもヒスイカズラの花を咲かせることができます。
月 | フィリピンの平均気温 | 東京の平均気温 |
1月 | 26℃ | 5.2℃ |
2月 | 27℃ | 5.7℃ |
3月 | 28℃ | 8.7℃ |
4月 | 30℃ | 13.9℃ |
5月 | 30℃ | 18.2℃ |
6月 | 29℃ | 21.4℃ |
7月 | 28℃ | 25℃ |
8月 | 28℃ | 26.4℃ |
9月 | 29℃ | 22.8℃ |
10月 | 28℃ | 17.5℃ |
11月 | 26℃ | 12.1℃ |
12月 | 25℃ | 7.6℃ |
温度管理ができていれば育て方は難しくない
ヒスイカズラの育て方で一番大変なことは、温度の管理です。房のように咲く花ですが、大きくなると花だけでも1mになります。そのため露地栽培で育てるのはとても難しく、国内では巨大な温室の中で栽培するのが最もオーソドックスな育て方になります。でも原産地のフィリピンでは自生するヒスイカズラもありますから、温度管理を徹底すればこまめな手入れをしなくても育ちます。
ヒスイカズラの育て方①用土
ヒスイカズラの花を咲かせるためには、茎を太くさせることが大切です。そこでヒスイカズラの用土の特徴を説明します。
用土にこだわらなくてもよく育つ
珍しい植物といわれるヒスイカズラなので特別な用土が必要なのかと思う人が多いかもしれませんが、実はヒスイカズラは用土の種類に関係なく育てることができます。もちろん栄養がほとんど含まれていない用土ではうまく育ちませんが、価格の高いヒスイカズラ専用の用土を使わなくても十分に育てることができます。
水はけのよい用土を目指す
ヒスイカズラは用土にこだわらなくても十分に育ちますが、水分が多すぎると根腐れを起こしてしまい、枯れる原因になります。そのため腐葉土やたい肥を混ぜて栄養を多く含んだ用土にすることはもちろん大切ですが、それ以上に水はけのよい用土を意識することが重要です。