待宵草ってどんな植物?
花の咲く季節は夏
待宵草は夏の季節に道路のわきや畑で見ることができる黄色い花です。アカバナ科の一年草で繁殖力が強く日本のあちこちで野生化しています。原産国はチリを代表とする南アメリカで、乾燥した場所や固い地面からも生えることがあるので見慣れている人も多いのではないでしょうか。夏の夜に待宵草の群生がそろって咲く様子は圧巻です。
花の特徴
夕方に黄色の花を咲かせ朝にはしぼんでしまう待宵草。一晩しか咲かない儚さがありますね。花もおしべやめしべも黄色で夏の夜にぼんやり浮かび上がります。4cmほどの大きさの花弁はハート型で四枚ついています。下部から順番に上に向って開花していき、一夜でしぼんで赤く枯れてしまいます。一本の待宵草には花がいくつもついているので晩秋まで見ることができます。
葉と実の特徴
草丈は90cmほどで花や葉もボリュームがあります。葉はふちにぎざぎざがついていて細長く楕円形です。互い違いに茎に付く葉の表面にはうっすらと毛が生えています。葉脈は白みがかっています。実は細長くいくつも付き、熟すると裂けて種子が落ちます。待宵草は種類が多いですが葉の形や草丈で区別することができます。
なぜ夜に花開くのか
夜活動する昆虫のため
マツヨイグサ属の植物は虫媒花です。夏の季節の夕刻に最も活発に活動するスズメガという昆虫に受粉を頼っているため、その活動時間に合わせて花開くと考えられています。
黄色は虫が最も認識しやすい色
黄色という花色は虫がもっとも認識やすい色なんです。競争率の激しい昼間を避けて夕方活動する昆虫に狙いを絞るとは植物も考えて進化しているんですね。
月見草との違いは?
どうして混同されがちなのか
月見草はマツヨイグサ属に分類されます。どちらも夏の夜に花開くことから混同されやすくなりました。待宵草の別名が月見草だと勘違いしている人も多いはず。日本に入ってきた時期も江戸時代の始めなので園芸品種としての歴史も同じです。
待宵草と月見草は同属
そもそもマツヨイグサ属の中で黄色の花を待宵草、桃色を月見草、赤花を夕化粧と呼ぶので種としては同じ特徴があります。総じて月見草と周知されるようになったのは月=黄色というイメージが強かったためでしょう。
月見草はどんな花?
薄い桃色の花
月、という名がつくことから黄色の花を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。月見草の花びらはなんと薄い桃色なんです。一夜だけ花を咲かせてしぼんでしまう月見草。夜、花開くときは白色だった花は夜明けが近づくにつれ桃色に染まっていきます。繁殖力はあまり強くないので見ることができなくなった時期もありました。
大きな違い
- 待宵草の花は黄色で月見草は白から桃
- 待宵草のほうが繁殖力が強い
名前の由来
宵(夜)を待って咲くことが待宵草という名前の由来です。江戸時代に園芸品種として入ってきたときに付けられました。待宵草は夕方から夜にかけて花を咲かせる不思議な植物です。名をつけた人は植物の生態をしっかり観察していたようですね。夏の季節の季語として歳時記に登場する待宵草。夏の夜の情景がしみじみと浮かびあがってくるぴったりの名前です。
待宵草の別名
「宵待草」とも呼ばれます。これは竹久夢二の流行歌の歌詞に歌われたことで定着しました。竹久夢二は明治から大正にかけて活躍した画家で瞳が大きくかわいらしい女性を描くことでも有名です。大正ロマンの筆頭として知られる夢二。彼も夜咲くこの花を見ていたのでしょうね。
「待てど暮らせど来ぬ人を宵待草のやるせなさ」
待宵草の種類
オオマツヨイグサとコマツヨイグサ
漢字で書くと大待宵草と小待宵草ですね。違いは花と葉の大きさです。オオマツヨイグサの草丈は1.5m程度まで伸びます。またコマツヨイグサ地を這い、葉は波なみとした切れ込みが入っています。大きさのほかではコマツヨイグサの花はしぼんだ後に茶色く枯れてしまうことです。オオマツヨイグサは黄色の花びらのまましぼんでしまいます。
メマツヨイグサ
待宵草の近縁種で花の大きさは3cm程度です。待宵草の中で最も繁殖力が強く各地で群生を成しています。花はコマツヨイグサと同じ大きさですがしぼんでも茶色くなりません。待宵草との違いは葉脈の色です。待宵草は白く、メマツヨイグサは赤色が強いのが特徴です。メマツヨイグサの繁殖力が強くオオマツヨイグサはあまり見かけなくなってしまいました。
待宵草の育て方
育て方はとても簡単
道路のわきや河原にも生育しているのでとても乾燥に強い待宵草。暑さにも強くとても簡単に育てられます。種で育てる場合は春もしくは秋に日当たりと水はけの良い場所にまき、芽が出たら間引きします。また親株がある場合は初夏にかけて自然に根元へこぼれ落ちます。オオマツヨイグサは草丈が大きくなりすぎるので注意が必要です。
用土や肥料は?
水はけを良くするために黒土や園芸用土に鹿沼土を混ぜるとよいでしょう。一日の中で一定時間、太陽の光が当たれば十分です。肥料も特に必要としませんが、与える場合は緩効性の化成肥料がおすすめです。即効性肥料は強すぎて肥料やけを起こす危険があります。
月見草の育て方は?
繁殖力が弱い月見草
月見草は待宵草と違って繁殖力が弱いので育て方も少し難しいです。日当たりがよく水はけにも注意しなくてはなりません。また種はまいてから2年後に発芽します。用土や肥料は待宵草と同じですが害虫が付きやすいので注意が必要です。耐寒性が強くないので南向きの場所を選びましょう。絶滅が危惧されている月見草。月見草もぜひ栽培してみてください。
待宵草の花言葉
待宵草の花言葉は「浴後の美人」
宵待草という別名の由来となった竹久夢二。美人画で有名な彼の影響が花言葉にも出ています。ほんのりとした月明かりの下で咲く待宵草は湯上りの美人に突然出会ったような驚きがあったのでしょう。日本風の花言葉は明治時代についたものが多いことから待宵草の花言葉の由来も夢二の影響を受けてのものです。
西洋の花言葉は「無言の愛情」
夜に咲く待宵草は控えめな印象がありますね。昼間咲く華やかな植物と比べると待宵草はそっと陰から支えてくれるようなそんな愛情を感じるイメージなのでしょう。
月見草の花言葉は?
月見草の花言葉は「移り気」「ほのかな恋」
夜に花開くときは白色だった花びらが明け方には桃色に染まっている。そんな植物の特徴から移り気という花言葉がつきました。また月見草の桃色はとても淡く、花びらも葉脈が見えるくらい透けています。夜しか咲くことのない控えめな印象も相まってほのかな恋という花言葉が付いたのではないでしょうか。
まとめ
待宵草と月見草はどちらも夏の夕方を彩る情緒ある植物です。待宵草の別名が月見草だという勘違いが広まり、待宵草という素敵な名は聞きなれなくなってしまいました。道端で待宵草を見かけたらぜひ周りの人に教えてあげてください。植物の本来の名前を知っていくのも楽しいですよね。身近にある待宵草をこの夏はじっくり観察してみてください。
写真:待宵草