ウバユリ(姥百合)とは
ウバユリ(姥百合)は日本の関東から西の地域に自生するユリの仲間です。ユリに似た、筒のような形の花が横向きに咲きます。葉の形はユリとは異なっていて、ハート形です。この葉のかわいらしい形から、英名では「Heartleaf lily(ハートリーフ・リリー)」と呼ばれ親しまれています。茎の下にある鱗茎(うろこ状の葉のこと)は山菜として食用にもなります。若葉も食べられますが、こちらはあくが強いため、あまり食用としては好まれません。
名前 | ウバユリ |
別名 | ネズミユリ、カバユリ |
分布 | 関東地方から九州地方 |
開花の時期 | 7月、8月 |
誕生花 | 7月19日 |
花言葉 | 無垢、純潔、威厳 |
特徴 | 一回繁殖型、食用にもなる |
名前の由来
ウバユリは漢字で書くと「姥百合」と書きます。「姥」は年配の女性のことです。この不思議な名前の由来としては、いくつかの説があります。
由来①姥のように葉(歯)がないから
ウバユリは花を咲かせる時期になると、葉がほとんど落ちてしまうという特徴があります。このことから「葉(歯)がない」にひっかけて、老女にたとえたこの名前がついたという説です。ちなみに実際は葉がすべて落ちてしまうということはなく、花を咲かせた個体でも、堂々とした大きな葉を残している場合が多いようです。
由来②赤ちゃんを抱っこしているように見えるから
もうひとつの説は、筒状の特徴的な花をつける姿が、「抱っこした赤ちゃんを見つめる女性」に似ているからというものです。こちらの由来はロマンチックですね。控えめで優しい印象のウバユリにぴったりです。
一回繁殖型という性質
ウバユリは、「一回繁殖型」という珍しい特徴を持っている花です。読んで字のごとく、繁殖(開花や結実)は一生に1回だけ行うという性質です。6~8年という長い時間を費やして開花したあとは、根本の鱗茎ごとすべて枯れてしまいます。このようにあっという間に命を終えてしまいますが、ひとつの実の中に500個ほどの種が入っているので、毎年美しい花を咲かせ続けてくれるのです。
ウバユリの花言葉
ウバユリの花言葉は「威厳」そして「無垢」「純潔」です。聖書の中で聖母マリア様にささげられた花として有名なユリは、純潔のシンボルでもあります。同じユリ科のウバユリも、清楚なイメージから「無垢」や「純潔」という花言葉があてられたのかもしれませんね。堂々とした咲きぶりは、「威厳」があると評されるのも納得です。
そのほかの種類のユリの花言葉
ウバユリのほかにも、種類によって花言葉があてがわれているユリが何種類かあります。どの花言葉も花姿にちなんだ、凛と美しい印象の言葉ばかりですね。
カサブランカ | 純潔、高貴、威厳 | 花嫁のブーケに大人気 |
テッポウユリ | 甘美、純潔、威厳 | 横向きに咲く真っ白な花 |
オニユリ | 賢い者、富と誇り | オレンジ色で下向きの花 |
ヤマユリ | 荘厳 | 強い香りが特徴 |
クルマユリ | 純潔、多彩 | 下向きの花をつける |
ササユリ | 上品、清浄 | 葉の形が笹に似ている品種 |
スカシユリ | 飾らぬ美、注目を集める | あざやかな花色が特徴 |
カノコユリ | 慈悲深さ、上品 | そりかえった形の花姿 |
ヒメユリ | 誇り | 花はオレンジ色で小ぶり |
ユリの花の色別の花言葉
ユリには花の色によっても花言葉が付けられています。種類ごとの違いはあまりありませんでしたが、色ごとの花言葉は印象がずいぶん違うのが面白いですね。
白色のユリ | 純潔、無垢、甘美、威厳 |
黄色のユリ | 飾らない美、陽気、いつわり |
赤色のユリ | 純潔、無垢、威厳、思わせぶり、虚栄 |
ピンク色のユリ | 思わせぶり、虚栄、優しさ、願望 |
オレンジ色のユリ | 愉快、華麗、軽率 |
ウバユリの種類
ウバユリ属にはウバユリのほかに、ウバユリの変種であるオオウバユリという品種もあります。分布や花の大きさ、つける花の数など、見分け方のポイントはわかりやすいので、区別は難しくありません。
ウバユリとオオウバユリの見分け方
オオウバユリはその花の大きさから、別名「ジャイアント・リリー」とも呼ばれています。白く大きな花は暗い山中でひときわ目を引き、群生している姿は圧巻です。ウバユリとの見分け方のポイントは、主に3つです。
見分け方のポイント①花の大きさ
まず、ウバユリとオオウバユリでは大きさがまったく異なります。ウバユリは成長すると1〜2mほどの大きさになりますが、オオウバユリはその倍近くまで成長します。背も高く、付ける花の大きさも大きいです。
見分け方のポイント②花の数
花の大きさと同じく、付ける花の数にも違いがあります。ウバユリが数個〜10個ほどであるのに比べ、オオウバユリは多いものでは20個ほども花を付けます。
見分け方のポイント③分布
見分け方としてもっとも簡単なのが、咲いている地域の違いでしょう。ざっくり分けて関東から西にウバユリが、北日本にオオウバユリが分布しているという特徴があります。関東地方や中部地方はウバユリ、オオウバユリどちらも育つ地域として分布が重なっていますが、このエリアでは太平洋側にウバユリ、日本海側にオオウバユリが咲く傾向が強いようです。
ウバユリの育て方
野山に自生している姿を見る方が多いかもしれませんが、ウバユリはユリ科の中でも比較的簡単に栽培できる種類です。適した環境や種の採り方など、くわしく育て方を見ていきましょう。鱗茎は食用にもなりますので、春を迎える楽しみのひとつになりますよ。
ウバユリの育て方①日当たり
ウバユリの自生している土地は半日陰地が多数です。そのため、環境としては明るい半日陰、もしくは日陰がよいでしょう。あまりに直射日光が当たる場所で育てると、葉焼けを起こしてしまうことがありますので注意が必要です。
ウバユリの育て方②土
丈夫な品種のため、土の種類は選びません。腐葉土をやや多めに配合して、水はけのよさを保ってください。鉢植えで育てる場合は、大きめの鉢を選んでゆったりと育てましょう。
ウバユリの育て方③移植
ウバユリの栽培で難しい点のひとつが、移植です。根が少なくて太いため移植は苦手で、球根を掘ってきて植えた場合、根付くまでに時間がかかるという特徴があります。一度根付けばそのあとはあまり手がかかりませんので、移植するときだけ注意しましょう。根をできるだけ傷つけず、優しく植えるようにします。
ウバユリの育て方④種まき
移植に弱いウバユリですが、種まきで育てることも可能です。秋に採った種が、翌年の春に発芽するサイクルです。完全に埋めてしまうと発芽しないので、根付かせたい場所にふんわりと腐葉土を混ぜ、その上で育てます。発芽してから1年は水を切らさないように慎重に管理してくださいね。
ウバユリの育て方⑤種の収穫
ウバユリは花を咲かせたあと、袋のような形の実をつけます。その実が熟すと皮が裂けて、中からたくさんの薄っぺらい種子が散ります。ひとつの実に500個ともいわれる大量の種が入っているので、収穫する実はひとつで十分です。完熟した実は少し触るだけでも種がぼろぼろと落ちてしまうので、完熟直前の実を採って、中から弾けるまで放置しておくと簡単でしょう。
次のページでは、ウバユリの食べ方をご紹介します。
出典:写真AC