キツネノカミソリとは?
キツネノカミソリはヒガンバナ科でリコリスと呼ばれる仲間になります。ヒガンバナといえば、秋に彼岸頃に開花するイメージですが、意外にも夏の開花が多い科です。キツネノカミソリも開花時期は夏になります。本州、四国、九州、朝鮮半島に分布しており、山里から少し離れた明るい林が生育場所です。関東より西に分布しているオオキツネノカミソリは変種です。
基本情報
学名 | Lycoris sanguinea |
和名 | キツネノカミソリ(狐の剃刀) |
別名 | キツネノタイマツ・キツネユリ・キツネバナ |
科名 | ヒガンバナ科 |
属名 | ヒガンバナ属 |
名前の由来
学名
学名を「リコリス・サンギネア」というキツネノカミソリ、リコリス(Lycoris)は、ギリシャ神話に登場する、海の女神リコリスに由来しています。サンギネア(sanguinea)は、血紅色つまり、血のように赤いという意味ですが、濃い色から淡い色まであるオレンジ色の花が咲く植物です。
狐の剃刀
「狐」まつわる名前の由来があるキツネノカミソリには様々な由来があり、ここでは2つを紹介します。1つ目は、葉の形が剃刀(かみそり)似ており、花色がきつね色(薄い茶褐色)から名付けられたという説。2つ目は、キツネノカミソリは林の中などで突然花が咲きます。その姿がまるで狐火(夜に人が火を灯さず炎が現れる現象)に見えることから付けられた、という説があります。
キツネノタイマツ・キツネユリ・キツネバナという別名もある
キツネノカミソリには各地域などにより別名があり、キツネノタイマツ、キツネユリ、キツネバナなどがあります。どれも共通して「狐」と入り、狐が人を化かす話が民話ととして伝わっています。キツネノカミソリの真っ直ぐの茎だけの姿や突然美しい花が咲く様子が、まるで狐に化かされているように感じることから、名前の由来となったようです。
花言葉
キツネノカミソリの花言葉は「妖艶」です。夏の夜に林などで見かける濃いオレンジの花は、きれいな姿をしています。妖艶とは、男性を惑わす艶っぽく妖しい魅力がある美しさ、といった意味です。また花の名前に付いている「狐」から、妖狐(狐の妖怪)を連想し、美しい女性に化けるイメージが、花言葉につながったのかもしれません。
キツネノカミソリの特徴
ヒガンバナの仲間であるキツネノカミソリには、どんな特徴があるのでしょう。ヒガンバナとの違いや花、葉と茎の姿の特徴を紹介します。キツネノカミソリは全草に毒性がある植物で、使用によっては薬効もあり、昔から民間療法に使われていました。
特徴①花
キツネノカミソリは、同じ仲間のヒガンバナより花弁が少なく6枚です。茎にはオレンジ色の花が3~5個咲きます。花色のオレンジは薄いもから濃いものまであり、夏咲きです。開花後は果実に蒴果(さくか)の中に黒い種子ができます。一般的な増やし方は分球のため、開花後にに花茎を切り取ってください。
特徴②葉と茎
キツネノカミソリは暖かくなる春に葉が出始め、剃刀をイメージできる細長い葉は約30~40cmです。葉は夏になり枯れ、その後茎が30〜50cm伸びた先に花が咲きます。キツネノカミソリは球根に栄養を蓄えるために葉を出し、しっかり栄養を溜めた後に葉が落ちるという特徴があります。
特徴③球根
キツネノカミソリの球根の特徴のひとつに毒性があります。また美しい群生地が見られるのは、自然に球根増えていく分球のおかげです。分球はキツネノカミソリの増やし方のひとつです。球根は水に弱いので、水やりに注意してください。
毒性
キツネノカミソリは全草、特に球根に毒性が強く含まれています。毒性の成分は、アルカロイドのリコリン、ガランタミンなどです。中毒症状として睡眠作用、痙攣、吐き気、下痢が確認されています。春の山菜採りでノビルと間違って食しないよう、注意してください。同じ毒性がある植物はヒガンバナ、スイセンがあります。花言葉の「妖艶」も、毒性の危険なイメージが関係しているのかもしれません。
薬効
キツネノカミソリ単体の薬効でなく、ヒガンバナ科全般の薬効があります。主に利用されるのは鱗茎(りんけい:球根)です。民間療法として、生の球根をすりおろして足裏に貼る方法や、乳房の腫れに貼る外用薬として利用されていました。生薬石蒜(セキサン)は、他の毒物を飲み込んだ場合に吐き出させる目的で用いられていました。
次のページでは、キツネノカミソリ育て方を紹介します。