腰水とは
腰水とは、植木鉢ごと植物を水に浸してしまう給水方法です。夏場、特に真夏日が続く期間は植物の水切れが心配ですよね。しかし気温の高い昼間などに通常の水やりを行うと、外気で熱くなった鉢が中の水を温め、湯を注いだような状態になってしまいます。当然根は傷つきますし、枯死の原因にもなりかねません。ではどうすればよいのかというと、腰水を使って給水するのです。
腰水のメリット
鉢の温度を下げる
水の中に鉢そのものを浸すことによって、鉢全体の温度が下がります。さらに鉢の底面から土が水を給水するので、鉢の中の水の温度が上がることなく、根を傷つける心配もないということです。
種や根が浮かない
小さな種をまいた時や、発芽したばかりで根がまだ張っていない不安定な新芽にも、腰水で対処できます。通常の水やりではまいた種が浮いてしまうかもしれませんし、せっかく張り始めた根が浮いてしまうこともあります。腰水であれば底面から土が水を吸い上げるので、その心配はありませんね。
発根促進
植物の根は、水や肥料を求めて地中で四方八方に伸びていきます。植物を鉢に植え替えてすぐの頃は鉢全体に根が張っていません。そこで腰水を活用し、底面だけを上手に給水してあげれば、根が水を求めて広がりだし、発根促進となります。
不在時にも給水できる
その他には旅行などで少し家を空ける時などにも使えそうですね。植物が置かれる環境にもよりますが、2~3日なら大丈夫でしょう。それ以上の長期間になると、少し難しいかもしれません。
腰水のデメリット
根腐れ
よく水をあげすぎると根腐れすると言われるのは、常に水が土中に溢れているため、酸素の補給ができず、根が呼吸できなくなるためです。根が溺れてしまっているような状態ですね。ですので、腰水によって常に根が水に浸かっていると、根腐れの危険があります。
根が安定しにくい
常に土が水を吸える状態というのが、植物にとって必ずしもよいとは限りません。植物の根は、水や肥料を求めて地中で広がります。しかし常に水がそばにある場合、伸びる必要がなくなりますよね。それにより、根がなかなか安定しない可能性があるのです。植え替え時には発根促進作用がありますが、どのくらい根が広がっているのか見極める必要があります。
腰水を行えない環境
地植えの植物はもちろんですが、持ち上げられないほど大きい植木鉢、朝顔やキュウリなどの蔓が成長しネットに巻きついてしまった植物などは、腰水を行うことができません。水切れしてしまった場合は涼しくなるまで待って給水しましょう。
腰水のやり方
腰水を行う際は、植物が植わっている鉢より一回り大きな容器やトレイなどに水を張り、鉢ごとつけてしまいます。通常の給水目的であれば1~2cmほど、水切れ対策であれば鉢を冷やす目的も兼ねて多めに水を張りましょう。
腰水を活用して肥料を与える
薄めて使うタイプの肥料と容器を用意したら、肥料を規定によって薄めた水の中に、植物の植わっている鉢を10分ほど浸けます。根や茎がまだ安定していない植物の栽培に活用できます。上からの水やりで肥料が流れ出すことを防ぎ、しっかりと栄養を与えられる方法です。
腰水を行う際の注意点
腰水を行なっている容器の温度
夏場の気温が高い時、容器の温度が上がり過ぎないように注意してください。せっかく鉢の温度を下げるために腰水をしても、容器の温度が上がって水そのものが温められてしまっては元も子もありません。腰水をしている時は、植物を日陰に移動させるか直射日光が当たらないようにするとよいでしょう。
根腐れ
長期間にわたる腰水は、酸素の交換が不十分になるため根腐れを起こす可能性があります。腰水を行なった後は、一度土を乾燥させるなどして根腐れを防ぎましょう。
土の腐敗
長期間の腰水は土を腐敗させる原因にもなります。もし異臭がしたり土にカビが生えたりした場合は、すぐに腰水を中止して土を乾燥させてください。
水が傷む
特に夏場の腰水は雑菌が繁殖しやすいため、注意が必要です。定期的に水換えをしましょう。容器にぬめりが出てくる、水が変色している、異臭がするなどの場合は適切な水換え、腰水の中止が必要です。
冬場の腰水
夏場と違い、冬場は乾燥対策に腰水を活用することがあるかもしれません。しかし気温が下がりすぎて水が凍ってしまっては植物も給水できません。特に屋外での腰水には注意が必要です。
腰水と底面給水は違う?
底面給水とは、底面潅水とも呼ばれる、鉢の底面から直接土に水を吸い上げさせる給水方法です。その底面給水に分類される給水法のひとつが腰水です。その他、不織布を使用した給水方法や、底面給水用の容器を使用するようなものがあります。
腰水以外の底面給水法
では、腰水以外にはどのような底面給水法があるのでしょうか。先に挙げた代表的な2つの方法をご紹介します。
不織布を使った底面給水
不織布を使った底面給水では、植木鉢に植えてある植物の土から不織布や紐を垂らし、トレイなどの容器の水を吸い上げさせます。必要に応じて水と一緒に肥料を混ぜておくこともあります。
腰水は容器さえあればすぐに行えるのに対し、こちらの方法は植え付けや植え替え時に、底に給水布をあらかじめ敷かなければなりません。給水布にカビが生えてしまえば、交換するのは困難です。
専用アイテムを使った底面給水
底面給水が簡単にできる容器も売られています。バリエーションが豊富なので、栽培したい植物の大きさや植え方で選べそうです。
ポリポットサイズで植え替えが楽にできるようです。在庫があれば細かくサイズが選べます。給水布も付いていて使いやすそうですね。
こちらは寄せ植えなどにいいですね。やや高価ですが、大きくて根腐れ防止の仕組みもあるため、長期間の旅行も安心そうです。
布に染み込ませる水の量の調節が必要なようですが、ポリポットなどの量が多い場合、お手軽で時短にもなりそうです。
腰水に向いている植物
上からの水やりが向いていない植物
腰水は、基本的には加湿に強く乾燥に弱い植物に向いています。その代表的な植物がシクラメンです。葉や株元が直接水に触れてしまうと腐りやすいシクラメンですが、葉にも株元にも水が触れないよう水やりするのは、相当難易度が高いですよね。ですから、腰水などの底面給水で管理するのが好ましいとされています。
観葉植物
屋内用の観葉植物にも底面給水で対応する場合があります。屋内で栽培している観葉植物などは、屋外で育てる場合と違って、一定の環境に置かれているという安心感からか水やりを忘れがちです。湿度にある程度強く乾燥を嫌う観葉植物であれば、底面給水で管理する方が簡単かもしれません。また、水のやりすぎでトレイから水が溢れることも防げます。
腰水を上手に利用する
夏場の暑い時期に水切れを起こしたり、植木鉢自体が熱くなってしまっている場合は、多めの水を張って腰水で対応するのがいいでしょう。
腰水を行うときは栽培している植物の特性や状態をよく理解し、水の量や期間、水質の悪化などに注意しながら腰水を行いましょう。肥料を与えるのに活用したり、植物や土の状態をよく観察しながら管理していくのが大切ですね。
出典:筆者撮影