ニガヨモギとは
ニガヨモギとは、ヨーロッパ原産のハーブのひとつです。どんな環境下でも育ちやすいため、中央アジア~東アジア、北アメリカ、北アフリカなど幅広く分布しています。同じキク科ヨモギ属の「ヨモギ」に姿かたちは似ていますが、全く別の品種です。種は簡単に手に入り、とても育てやすい植物で、家庭菜園でも人気です。
基本情報
園芸部類 | キク科ヨモギ属 |
学名 | Absinthium |
英語名 | Worm wood |
草丈 | 40cm~100cm |
原産地 | ヨーロッパ |
特性・用途 | ハーブ・ドライフラワー |
花言葉 | 冗談、不在、愛の離別、苛酷など |
名前の意味
ニガヨモギの名前の意味は味と見た目にあります。ニガヨモギは苦いことから「ニガ」、見た目がとてもヨモギに似ていることから「ヨモギ」、あわせて「ニガヨモギ」と名前がつけられました。英語名は「Worm wood(虫の木)」で、古くから虫よけに使われていたことが名前の由来といわれています。
ボタ爺
ボタニ子
学名の「Absinthium」は、聖なる草を意味する「エルブ・アブサント」が名前の由来なんだって!なんだか神秘的だね!
ニガヨモギの特徴
特徴①見た目
ニガヨモギは全体的に細かな産毛で覆われており、葉の表側は緑白色、裏側は白色で丸みのあるギザギザした形をしています。茎や葉の部分の見た目はヨモギにとてもよく似ていますが、花の様子は異なります。ヨモギの花が紫色なのに対して、ニガヨモギの花は黄色いのが特徴です。
特徴②味
ニガヨモギはハーブの中でも群を抜いて苦いといわれています。ヨモギの代表的な食べ方に「ヨモギ餅」がありますが、ニガヨモギを使ってヨモギ餅を作っても、苦くてとても食べられません。しかし、確かに苦さは強いですが、ニガヨモギの苦みは切れ味がよくさわやかな苦みであると世界的にも評価されています。
特徴③栽培が簡単
ニガヨモギはヨモギと同じく繁殖力が強く丈夫な植物で、育て方はとても簡単です。用土は選ばず、適度な水と日光があればすくすくと育ちます。種や苗は、園芸店やネット通販で比較的簡単に手に入ります。「ニガヨモギ」という名前で見つけられないときは、英語名の「ワームウッド」で探してみてください。
特徴④毒性がある
ニガヨモギの主要成分である「ツジョン」には毒性があります。少量であれば、さわやかな香り、苦みや酸味などの風味付けに使えます。しかし、大量に摂取すると、嘔吐、幻覚、錯乱、痙攣、神経麻痺などを引き起こすため注意が必要です。毒草であることから以前は規制の対象になっていましたが、現在では用量を守ることを条件に規制は緩和されています。
ニガヨモギとヨモギの違い
違い①見た目
見た目がよく似ているニガヨモギとヨモギですが、実は葉にも違いがあります。草丈や葉の形はとてもよく似ていますが、色味が少し異なります。ヨモギが鮮やかな緑色なのに対して、ニガヨモギは白がかった緑色なのが特徴です。花色はヨモギが紫、ニガヨモギが黄色で、花が咲いている時期は違いが一目瞭然です。
違い②風味
ヨモギとニガヨモギは香りも味も異なります。ヨモギの香り成分には、ローズマリーやイランイランと同じ成分が含まれており、さわやかで品のある香りを楽しめます。一方、ニガヨモギは、野性味あふれる薬草のような独特の香りが特徴です。味にも違いがあり、ニガヨモギが苦いのに対して、ヨモギには苦みはなくほのかな甘みを持っています。
違い③食べられるかどうか
ヨモギは香りがよく、味もクセがないため、主に食用として使われます。ヨモギ餅を始め、乾燥させてお茶にしたりペーストにして料理に使ったりするなど、食べ方は実に豊富です。ニガヨモギは苦みの強い毒草ということもあり、一般的に食用には使われません。
ニガヨモギの用途・利用方法
利用方法①薬草系リキュール・アブサン
ニガヨモギは「アブサン」の主な原料として有名です。アブサンとはブランデーなどのスピリッツに、ハーブやスパイスで香りづけして再蒸留させたリキュールのことです。色は淡い緑色で水割りにすると白く濁るのが特徴で、さわやかな香りと苦み、ほんのりとした甘みを楽しめます。アルコール度数が高めのため、飲む際には注意が必要です。
ボタニ子
アブサンのアルコール度数は平均70度もあるんだって!高いものでは90度のものもあるよ!飲むときには気をつけてね!
アブサンの歴史
アブサンは世界各国の芸術家が愛飲するほどの人気ぶりでしたが、その人気の高さから数多く安価な粗悪品が出回るようになりました。中には毒性物質のツジョン含有量が多すぎて体に悪影響を及ぼすものもあったため、1915年ごろから世界各地で生産禁止になったほどです。しかし、WHOが安全基準を設けたことによって、2000年代には再び生産が始まりました。
アブサンのおすすめの飲み方
アブサンを飲むのなら、「アブサンドリップ」と呼ばれる方法がおすすめです。まず、アブサンを注いだグラスに穴あきのスプーンをセットします。次に、スプーンに角砂糖をのせ、上から水をたらしていきます。角砂糖が少しずつ溶けてアブサンの中に落ちると、緑色のアブサンが少しずつ白濁していき、その様子はとてもきれいで神秘的です。
ボタ爺
シェイカーに氷とアブサン2:ミネラルウォーター1を入れ、ガムシロップを加えてシェイクする「アブサンカクテル」もおすすめじゃよ!
アブサンは日本でも手に入りますか?
アブサンは日本でも手に入ります。アブサンにはいろいろな種類のものがありますが、デパートや酒屋での取り扱いはやや少なめです。見つからない場合は、ネット通販で探すのが簡単でおすすめです。
利用方法②防虫剤
ニガヨモギの独特の香りには虫を寄せ付けない力があるため、防虫剤としても利用できます。庭の片隅に植えておくだけで、ほかの植物によって来る害虫を撃退するのに効果的です。植えておくだけでも虫よけに便利ですが、刈り取ったニガヨモギは洋服の防虫剤としても使えます。乾燥させて小さなサシェを作り、クローゼットやタンスに入れましょう。
ニガヨモギの収穫に適した季節はいつですか?
ニガヨモギの収穫に適した季節は春です。家庭で収穫する目的としては、防虫剤として使うことがほとんどです。開花時期は6月~8月で、防虫剤として使うなら、花が咲く前の香りの強い時期の収穫をおすすめします。
ニガヨモギを摂取する際の注意点
注意点①妊婦や授乳中の場合
ニガヨモギはハーブとはいえ毒草なので、妊娠中や授乳中の方は摂取を控えましょう。妊婦や授乳中の方はリキュールを口にしないかもしれませんが、ヨモギと間違えて摘み取り食べてしまうケースが考えられます。胎児や乳児に悪影響を与える可能性が高いため、十分注意してください。
注意点②病気の方
病気の方も、ニガヨモギの摂取は避けたほうが無難です。ニガヨモギに含まれる毒素成分は、脳や腎臓、心臓、など、体のあらゆる器官に悪影響を与える危険性があります。病気などで免疫力が低下している場合、特に悪影響を受ける可能性が高まるため、口にしないように気をつけましょう。
注意点③アレルギー
ブタクサなどのキク科の品種の植物にアレルギーを持っている方は、同じキク科のニガヨモギにもアレルギー反応を起こす可能性が考えられます。ニガヨモギを使ったアブサンなどのリキュールを飲む際は、まずはニガヨモギに対してアレルギーがないか確認することをおすすめします。
毒性に気をつけてニガヨモギを楽しもう!
ニガヨモギはとても苦いですが、ほかのハーブにはない切れのある苦みや酸味を持つ魅力的な植物です。手軽なのは、庭に植えて防虫剤として役立てることです。毒性には気をつけて、ぜひいろいろな形でニガヨモギを楽しんでみてくださいね。
英名の「worm wood」は、エデンの園から追放された蛇の這った後に生えたという伝説に由来しているという説もあるんじゃよ!