山芋・長芋・自然薯は混同されやすい
山芋・長芋・自然薯と、さまざまな呼び名がありますが、混同されるようになった経緯は詳しくわかっていません。中国では紀元前から薬味として重宝され、日本では縄文時代から人々の食糧として利用されてきました。山芋類はつる性の植物で、地中深くに芋となる根があります。
山芋・長芋・自然薯の違いは?
違い①原産地や生育環境
「山芋」は「ヤマノイモ科」の総称として用いられています。特定の芋を指すわけではありません。長芋は中国から渡ってきて、日本で人の手で栽培された山芋です。自然薯は、日本で自生している山芋です。
- 山芋…ヤマノイモ科の総称。長芋や自然薯を含む
- 長芋…中国から渡来した山芋。栽培された山芋
- 自然薯(じねんじょ)…古来から日本の山で自生している山芋。年々収穫量が減少している
ボタニ子
ちなみに、銀杏芋は長芋の一種よ。関西では「大和芋」と呼ばれることもあるみたい。
ボタ爺
じゃが奈良県産の大和芋は、銀杏芋とは別の品種だというぞ。奈良の大和芋は伝統野菜じゃ!
違い②粘り気
山芋はすりおろすと、粘質物を含んだ細胞が壊れた状態になり、水分と化学反応を起こすことで粘り気が発生します。この状態が「とろろ」です。山芋の種類によってとろろの粘り気は異なります。長芋のとろろは水分が多くサラサラとしており、自然薯は水分が少ないため重みのあるどっしりとした粘り気を出すとろろになるのが特徴です。
違い③価格
山芋類は旬の季節の秋に多く市場に出回りますが、種類によって価格は異なります。長芋は栽培されているものがほとんどのため、どこで買うことになっても比較的安値で購入可能です。対して自然薯は、自然界から掘りだされたものほど高値で取引され、主に贈り物として利用されています。
ボタニ子
近年、贈答用の自然薯は人気を集めているよ!料理好きの人に贈ると喜ばれそう。どこで買うのがいいかな?
ボタ爺
一般的なスーパーでは見かけないじゃろう。デパートや通販サイトで取り扱っているぞ!
違い④太さ
長芋は主に栽培種が市場に出回っているため、均一の太さと長さを保ち、外皮もきれいな茶色をしています。一方の自然薯は、山で採取するものが多く、濃い茶色で長さや太さ形もさまざまです。
違い⑤カロリー
100gあたりの長芋のカロリーは約65kcalに対し、自然薯のカロリーは100gあたり約120kcalといわれています。この差は水分が関係しています。長芋は水分が多いのに対し、自然薯は水分が少ないからです。
ボタニ子
サラッとした長芋のとろろは食べやすいし、減量中にもぴったり!ダイエット食にも人気だね。
山芋・長芋・自然薯の栄養
栄養①食物繊維
山芋類には水溶性食物繊維が豊富に含まれています。長芋の水溶性食物繊維は100gあたり1.0gに対し、自然薯の水溶性食物繊維は100gあたり2.0gです。また食物繊維と同じ働きを持つレジスタントスターチ(難消化性デンプン)も多く含まれています。レジスタントスターチは腸内環境を整えるのに効果的です。
ボタニ子
レジスタントスターチは加熱すると減ってしまうの。体重の減量中は、生食がおすすめ!
栄養②ビタミン類など
長芋や自然薯に含まれるビタミンの量はほぼ同じで、ビタミンB1、B2、C、Eなど多くのビタミンを含んでいます。また、山芋類だけに含まれているディオスゲニンという物質は、DHEAを増やしてホルモンバランスを促進・調整するのに効果的です。さらに「山のウナギ」と呼ばれるきっかけとなったアルゲニンには、滋養強壮を促す効果が期待できます。
山芋・長芋・自然薯の保存方法
保存方法①冷蔵
山芋類の最適な保存温度は1℃~5℃です。切った状態の山芋類を高温多湿の場所で長時間放置すると、断面からカビが発生して腐ってしまいます。残った山芋類を保存するときは山芋類の断面を乾燥させ、断面を触って滑り気が手に付かなくなったら新聞紙で包み冷蔵庫に入れて保存します。保存期間は1カ月~2カ月です。
保存方法②冷凍
皮をむいた山芋類をすりおろした状態で長時間放置すると、山芋に含まれる灰汁(あく)で変色し、風味が落ちてしまいます。すり落した山芋類は、ジップ付き保存袋に入れて冷凍保存しましょう。約半年保存可能のため、季節関係なくいつでもとろろが楽しめます。また加熱調理用として短冊切りの状態で冷凍保存しておくのもよい方法です。
解凍方法
冷凍保存した山芋類を解凍するときは、ジップ付き保存袋ごと流水につけて解凍しましょう。少量解凍するときは、保存袋内で軽く割って別の容器に移し、半日ほどかけて冷蔵庫のなかで解凍させます。急ぎの場合は電子レンジで解凍する方法もありますが、とろろの状態で冷凍保存した場合、風味が失われるため半解凍程度に加熱しましょう。
保存方法③土に埋める
庭のある家なら、山芋類を土の中に埋めて保存する方法も可能です。寒い季節になっても土が山芋類の最適な温度を維持するため、春先まで保存できます。山芋類を土に埋めて保存するときは、深さ20cm~30cmの穴を掘り、そこに山芋を並べましょう。保存分の山芋を並べ終えたら土を被せて埋め、山芋がどこにあるのかわかるように目印をつけておきます。
出典:写真AC