シダレヤナギ(枝垂れ柳)とは?
シダレヤナギとは高さ10~25mになる落葉高木です。日本では奈良時代より植栽され、北は北海道、南は沖縄まで日本各地の公園や街路樹としてよくみられます。水辺や水路などの近くにも植えられていることが多く、やや湿り気のある日当たりの良い土地を好みます。
シダレヤナギの学名
シダレヤナギの学名はSalix babylonica L.(サリクス・バビロニカ)です。学名の由来はいくつかありますが、生長が早いことからついたラテン語のsalire(跳ぶ)という説と、湿地に生えることからついたケルト語のsal(近い)+lis(水)という説があります。
原産地はバビロニア?
学名の「バビロニカ」は「バビロニアの」という意味になります。そのため中東のユーフラテス川近くの古代都市バビロンが原産地なのかと思いきや、実はシダレヤナギは中国が原産なのです。これには様々な説がありますが、中国からバビロンへ渡ってきたシダレヤナギに、リンネが間違って命名してしまった説が有力なようです。
和名の由来
柳のしなやかで折れにくい材質をいかし、かつて矢をつくる材料として使われていたことから「矢の木」が転じてヤナギになったとも言われます。シダレヤナギは漢字で「枝垂れ柳」と書くように、葉が枝垂れる様がとても美しい様子から名前が付けられました。イトヤナギという名前で呼ばれることもあります。
シダレヤナギの近縁種
ロッカクヤナギ
学名はSalix. babylonica L. f.rokkaku Kimuraで、シダレヤナギの1品種になります。シダレヤナギよりも枝がさらに長く、地面に着くほど垂直に枝垂れます。ロッカクという名前は枝が六角形をしているからではなく、平安時代に京都の「六角堂」(正式名称は紫雲山頂法寺)に、一番最初に植えられたことに由来するとされています。
セイコヤナギ
学名はSalix babylonica L. f.seiko Kimuraでこちらもシダレヤナギの1品種です。シダレヤナギに比べ、枝の節と節の間は短くあまり長く枝垂れません。葉も短く、枝から開出することから見分られます。セイコヤナギは漢字で書くと「西湖柳」であり、中国の西湖が名前の由来とされます。別名コシダレとも言われます。
ウンリュウヤナギ
学名はSalix babylonica L. var. matsudana (Koidz.) H.Ohashi et Yonek. 'Tortuosa'で、シダレヤナギの変種になります。枝や葉がねじ曲がって伸びる独特な姿が印象的で花材としてよく利用されます。
メガネヤナギ
学名はSalix babylonica 'Crispa'(syn. Salix babylonica 'Annularis')でシダレヤナギの園芸品種になります。葉がくるくると丸まってまるでメガネのように見えることから名づけられました。別名マガタマヤナギとも言われます。
シダレヤナギの特徴
日常の風景に溶け込んでいるシダレヤナギですが、じっくり観察する機会はあまりないのではないでしょうか?どのような特徴があるか、それぞれ部位別に詳しく説明します。
枝
シダレヤナギは雌雄異株の樹木で、雄株と雌株で枝の長さに違いがあります。雄株の枝は下に流れるように垂れ、長いものでは3メートルにもなります。雌株の枝はあまり伸びず1メートルくらいまでになります。日本では雌株の数が少なく、大半が雄株になります。
葉
葉は長さ8~13㎝で平らで細長く、葉の付け部分はやや広く葉先へ向かって細くとがる披針形(ひしんけい)をしています。また、葉の縁には細かいギザギザの鋸歯が見られます。葉の色は表面が濃い緑色、裏面は粉白色をしています。
花
花の形はしっぽのような尾形花序で長さは3~6㎝くらいになります。雄株につく雄花の色は黄色で、花粉の入った葯が伸びています。一方、雌株につく雌花はめしべがみられ、黄緑色をしています。
開花期はいつ?
開花期のは日本の南部では3月中旬、北部になると4月下旬~5月上旬ころです。これは、葉が出る前、もしくは同時期にあたります。開花期が近いサクラなどの美しい花木とは違い目立たない花なので、鑑賞するという意味では物足りないかもしれません。
幹
主幹はまっすぐ立つものから、やや曲がりがちになります。20mを超えるような高木では幹の太さが1mを超えるものもあります。太い枝は斜め上へと伸びていきますが、細い枝は下に垂れていきます。樹皮の色は暗い灰色をしており、縦に裂け目が入るのが特徴です。