アカヤシオとは?
深い山の斜面に自生している
アカヤシオ(赤八汐)とは、ヤシオツツジと総称され東北地方の南部から関東地方や中部地方の岩山の斜面に多く自生するツツジ科の落葉広葉樹です。北関東の赤城山で多く見られるため、別名アカギツツジとも呼ばれています。
アカヤシオの特徴
野生の落葉ツツジ
花が一斉に咲きそろう
山に自生する野生のツツジは、冬になると葉が落ち春がくるとまた新しい葉と花をつける落葉ツツジが多く、アカヤシオもその仲間です。落葉ツツジは葉より先に花をつけるため、短い開花期間に花が一斉に咲きそろい、山を鮮やかに彩ります。
高度1200m以上にしか自生しない高山植物
アカヤシオは標高が高い山奥に生えるため身近に見ることのできない植物ですが、近年のトレッキングブームで登山者が増え、開花時期にはアカヤシオの花を目的に山歩きを楽しむ人も増えています。
栃木県の県花
アカヤシオは栃木県の県花に指定されており、木の高さは約5mまで成長します。幹の表面はなめらかで、樹齢が伸びるほどつるつるになります。花の大きさは約5cmほどでおしべが10本あり上の5本は短くなっています。花びらはピンク色で花冠と呼ばれる花びらの先が漏斗状で5枚に深くさけます。
葉が出るより先に花を咲かせる
枝先に1輪だけ花をつけるのが特徴
たくさん枝分かれした枝先に1輪だけ花をつけるため「ヒトツバナ」とも呼ばれるアカヤシオは、葉がつき始める前に花を咲かせる特徴から、春の訪れを告げる花として山桜と並び人気のある樹木です。
開花時期は4月~5月
開花時期は葉が出る前の4月~5月です。ピンク色でひろく開く丸い形の花びらは、一般的なツツジの花よりも可愛らしく正面からみると桜のような形をしています。
葉は5枚輪生しているように見える
葉の大きさは約4cmで、硬く楕円形をしており葉の先が短くとがっています。葉の全体に毛が生えており葉柄にもたくさんの細かい毛が生えています。交互に5枚生えますが、枝先に集まって生えるので輪生しているように見えます。秋には紅葉も楽しめます。
アカヤシオの仲間(同属)
「ヤシオツツジ」と総称される
アカヤシオは同じツツジ科、ツツジ属であるシロヤシオやムラサキヤシオツツジとともに「ヤシオツツジ」と総称して呼ばれていますが、種はそれぞれ違います。
ヤシオツツジの名前の由来
ヤシオツツジの「ヤシオ」とは、何度も染料につけて染め上げるという意味をもつ「八汐」という言葉が由来と言われています。
①シロヤシオ
アカヤシオによく似た白い花を咲かせるシロヤシオ
シロヤシオは、5枚の葉が輪生する特徴から「ゴヨウ(五葉)ツツジ」とも呼ばれ、木の高さは5m以上にも成長します。5月~6月ごろ葉が生えるのと同じ時期に、大きさ約4cmほどのアカヤシオに似た白い花を咲かせることからシロヤシオと名前がつけられました。花びらには緑色の斑点があります。
②ムラサキヤシオツツジ
ムラサキヤシオツツジは枝先に数個の花をつける
ムラサキヤシオツツジは、高さは約2mとアカヤシオに比べて背が低く、葉が出る前の枝先には4~6個の花をつけ大きさ約4cmの紅紫色の花を咲かせます。アカヤシオやシロヤシオは岩山の斜面に自生することが多いのですが、ムラサキヤシオは日なたの平地や林に自生します。
アカヤシオの仲間(変種)
アカヤシオはアケボノツツジの変種
アカヤシオは四国地方や近畿地方に分布しているアケボノツツジの変種と言われ、同じ変種の仲間に九州地方に分布するツクシアケボノツツジがあります。
①アケボノツツジ
アカヤシオとよく似ているアケボノツツジ
アケボノツツジは、ツツジ科の落葉低木で近畿地方や四国地方の山地に自生しており、高さは2m~6mになります。葉はアカヤシオと同じ楕円形で枝先に5枚輪生します。葉の長さは約4cmで縁には毛が生えています。開花時期は4月~5月で葉の出る前の枝先にピンク色の花を咲かせます。
名前の由来
アケボノツツジの名前は、その花の色が夜明けを意味する曙「あけぼの」の色に似ていることろから付けられたといわれています。
アカヤシオとの見分け方
見た目がよく似ているアカヤシオとアケボノツツジの違いは唯一違いのある花柄の腺毛で見分けます。アカヤシオの花柄にはたくさんの腺毛が生えており、10本あるおしべのうち半分の5本だけ花糸の付け根部分に薄く毛が生えていますが、アケボノツツジの花柄には腺毛が生えていません。(写真はアカヤシオ)
②ツクシアケボノツツジ
九州地方特産のアケボノツツジ
ツクシアケボノツツジは、名前に筑紫とついているとおり九州地方特産のアケボノツツジです。四国地方や九州地方の標高1000m以上の山地に自生しています。木の高さは10m近くまで成長することもあり、よく日が当たる乾燥した岩場に多く群生します。
アカヤシオとの見分け方
アケボノツツジと同じくアカヤシオと見た目が似ているツクシアケボノツツジの見分け方も花柄と花糸を見ます。ツクシアケボノツツジの花柄にはアカヤシオと同じく腺毛が生えていますが、花糸には生えていません。
アカヤシオの育て方
野生(高山)のため栽培難易度は高い
環境の変化に敏感
野生の高山植物であるアカヤシオは、根が付きにくく環境が変わると育たないので庭木にはあまり適しておらず育て方が難しい植物です。
植え付け方法のポイント
植え付け時期は11月~3月
それでもアカヤシオを育てる場合の、適した植え付け時期は休眠期である11月~3月です。植え付け場所は土を持ってゆるやかな斜面をつくり水はけをよくしましょう。
高温多湿が苦手
日当たりが良い、または半日蔭で風通しのよい場所を選びましょう。暑さに弱いので夏場は直射日光が当たらないように注意が必要です。高山植物が野生に生はえている状態に近づけるよう環境をつくってあげましょう。
育て方の注意点
剪定を嫌う
アカヤシオは高山植物ですので剪定をすると弱ってしまいます。剪定はなるべく避け、邪魔な枝だけを切るようにします。
アカヤシオの名所
満開のアカヤシオを見に行こう
山歩きをしながらアカヤシオの花を楽しむ
アカヤシオが分布している地域は広いので、名所と呼ばれている場所もたくさんありますが、有名な名所をいくつかご紹介します。野生で群生してできた名所は山奥にあるため山歩きに必要な服装と装備が必要です。
①赤城山(アカヤシオの丘)
アカギツツジとも呼ばれているように赤城山のアカヤシオは有名です。赤城山には絶景ポイントや穴場もたくさんあります。
見ごろは4月上旬~下旬
富士見総合グランドの西側にある山里の斜面に2000本のアカヤシオが植えられており、山桜とのグラデーションも楽しめます。
②栃木県(月山)
日光連山や栗山ダムがあり眺めがいい
日光連山や栗山ダムからの眺めもよく、近くには温泉もあるので楽しめることがたくさんあります。
見ごろは4月下旬~5月上旬
月山一帯はアカヤシオの群生地で満開の時期になると山一面がピンク色に染まります。
③静岡県(岩岳)
見ごろは4月下旬~5月末
岩岳の山頂一帯には樹齢約200年といわれるアカヤシオが約2000本、シロヤシオが3000本以上自生しており国の天然記念物に指定されています。山深い場所ですので山歩きの服装や装備を用意しましょう。
まとめ
昔から親しまれているツツジは品種改良され庭木としても人気のある身近な植物ですが、アカヤシオのような野生の種類もまた美しく山を明るく染め、山桜とならび春を告げる花として見る人を魅了します。すこし足をのばしてアカヤシオのピンクの優しい色に春を感じてみてはいかかでしょうか。
出典:BOTANICA