シナノキってどんな樹木?花はよい香りがする?育て方や用途もご紹介!

シナノキってどんな樹木?花はよい香りがする?育て方や用途もご紹介!

日本各地に自生しているシナノキは、あざやかな紅葉や木目の美しさなどで日本人に古くから親しまれている樹木です。花の香りや名前の由来といった特徴や、用途について紹介します。シナノキの基本的な育て方もあわせて見ていきましょう。

記事の目次

  1. 1.シナノキは日本でもなじみ深い樹木
  2. 2.シナノキの花はどんな香り?
  3. 3.シナノキの育て方
  4. 4.シナノキの用途
  5. 5.シナノキをさまざまな形で楽しもう

シナノキは日本でもなじみ深い樹木

出典:写真AC

シナノキ(科の木)は、北海道・本州・四国・九州など日本の各地に分布する樹木です。特に箱根(神奈川県)のブナ林や、長野県に分布しています。分類としては落葉広葉樹で、秋には美しい紅葉を、冬には結実を楽しむことも可能ですよ。高さ10m~20mにもなる高木のため、一般家庭よりも街路樹や公園などで利用されます。耐久性と木目の美しさから、建築材としても人気です。

名前の由来

出典:写真AC

シナノキの「シナ」は、アイヌ語が由来です。「結ぶ」「縛る」といった意味のある言葉で、これはシナノキの樹皮を使って、ロープを作っていたことに由来します。学名の「Tilia japonica」は「日本の翼」という意味で、花序にある翼のような形の苞(ほう)が由来でつけられました。また、やわらかな色合いの葉がライムのようにも見えることから、「ライムツリー」もシナノキの別名です。

「信濃(長野県)」の由来とも

出典:写真AC

シナノキは「信濃(長野県の旧称、町の名前)」の由来ともいわれています。日本で最も多くのシナノキを植樹していたことから、この地域にシナノという名前がついたという説が有力です。もともとは漢字も植物と同じ「科野(しなの)」を使っていましたが、やがて「信濃」の字をあてるようになりました。耐寒性・耐陰性のあるシナノキは、長野のような寒い地域でも植えられる広葉樹として非常に重宝されそうですね。

花のようす

出典:写真AC

シナノキの開花期は5月~7月です。春の終わりから夏にかけて、季節をまたいで花を咲かせます。ふわっと広がった形の白い花が特徴で、まるで線香花火がはじけるような繊細な姿をしています。くっきりとしたグリーンと白い花とのコントラストが、とてもさわやかな印象です。開花直後に苞を摘み取って乾燥させると、よい香りのハーブとしても利用が可能です。秋になると実が熟し、花序とともに地面に落ちます。

ボタニ子

ボタニ子

シナノキの花言葉は「夫婦愛」。プレゼントにもぴったりの、とっても素敵なメッセージですね!

ボタ爺

ボタ爺

この花言葉は、シナノキの葉がかわいらしいハート形をしていることにちなんでいるぞ。

シナノキの花はどんな香り?

香りの特徴

出典:写真AC

シナノキは独特の匂いを持っており、ほかの花で例えるとユリやレモンなどの匂いに似ています。「ライムツリー」という別名のとおり、ライムの香りにも近いでしょう。シナノキはアオイ科で、ユリ(ユリ科)ともライム(ミカン科)とも科が異なるため、似た香りがするのは不思議ですね。さっぱりした印象と甘さとを兼ね備えたロマンティックな香りで、5月~7月という開花の季節にぴったりのさわやかさですよ。

シナノキの育て方

育て方①栽培環境

出典:写真AC

シナノキはとても大きくなるため、基本的には庭植えに向かない植物です。育てる場合は成長後も見越して、十分なスペースを確保してくださいね。土質を選ばず、肥料がなくてもどんどん成長します。耐陰性も強く、半日陰でも栽培が可能です。高さが出るにつれて、次第に日光に当たるようになりますよ。耐寒性に秀でている反面、暑さにはやや弱い樹木です。苗木のうちは涼しい場所で管理するとよいでしょう。

育て方②植え付け・植え替え

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シナノキは暑さに弱い樹木です。植え付けは休眠期である、12月~3月を選んで行いましょう。根を張る途中で凍ってしまわないように、植え付け後は布やビニールなどで周囲を囲って保温をすると安心ですよ。苗木のあいだは倒れやすいため、添え木を立てて成長をサポートしましょう。太さも高さも出る植物で、植え替えは基本的に不要です。

育て方③水やり

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シナノキは、基本的には水やりは不要です。ただし幼い苗木のうちは、根付きが不十分な場合もあります。そのため、植え付けてから数年間はこまめに水やりを行いましょう。その後は自然に降る雨に任せ、極端に日照りが続いたときだけ水を与えれば十分です。特に暑い季節は照り返しや乾燥による水切れで枯れてしまうことがあります。夏場の落葉に注意して、土が乾いたら水やりをしてくださいね。

育て方④剪定

出典:写真AC

シナノキは幹が太く、高さもあるのが特徴です。美しく育てていくために、適度な剪定を行いましょう。日当たりがよくなるように、枯れた枝や弱った枝を中心に取り除いてください。休眠期である12月~3月が適期です。シナノキは落葉樹で、葉や実が落ちてから作業したほうが植物へのダメージが少なくて済みますよ。また、暖かい季節に入ると新芽が出てきてしまうため、誤って切り落としてしまうリスクもあります。

シナノキの用途

用途①街路樹・公園木として

出典:写真AC

シナノキは病気や害虫に強く、丈夫で大きく成長する樹木です。そのため、道路に沿って植える街路樹や、公園木としても人気があります。初夏~夏にかけては繊細な花とさわやかな香り、秋には紅葉と、季節の移り変わりにあわせてさまざまな姿を楽しめるのも魅力ですね。耐陰性や耐寒性にもすぐれ、水やりもほとんど不要など、管理の手間も少ないのも嬉しいポイントですよ。

用途②木材・合板として

出典:写真AC

シナノキは耐久性にすぐれ、木目もまっすぐなのが特徴です。辺材(樹皮に近い周辺部)は淡いクリーム色をしています。美しさと丈夫さの両方を兼ね備えた優秀な木材のため、建築用の木材や合板として重宝される樹木ですよ。すっきりとした木目の板は、主張も控えめで使いやすいですね。代表的な用途としては、押入れの内貼りがあげられます。そのほか、わりばしやマッチの軸、アイスクリームのヘラなどにも使われます。

用途③樹皮をロープや衣類に

出典:写真AC

樹皮繊維が強く、皮がきれいにはがれるのがシナノキの特徴です。この特徴を生かして、かつてはシナノキの樹皮繊維から衣類やロープ、たたみ糸などもつくられました。合成繊維のロープが普及したことから現在はあまり使われなくなっていますが、一部の大型船舶では未だに使われています。また、北海道でこの伝統を継承していくために開催されているのが、シナノキの繊維を使った編みものづくり体験です。

ボタニ子

ボタニ子

シナノキの樹皮をゆでて取り出した繊維で織られた布は、「科布(しなぬの・しなふ)」「まだ布」「まんだ布」などと呼ばれていました。

用途④花から上質なハチミツを

出典:写真AC

シナノキの花は、ユリのような甘さと柑橘系のさわやかさをあわせ持った特徴的な香りを放ちます。この香りは、ハチミツに加工したあとでも楽しめますよ。ほかの花からつくられたハチミツにはない独特の風味や、さっぱりとした味わいで人気です。北海道や長野県に旅行したときには、おみやげにするのもよいですね。紅茶に溶かすとハーブティーのような風味が楽しめ、焼き菓子やチョコレート菓子にも合います。

シナノキをさまざまな形で楽しもう

出典:写真AC

アイヌ語を名前の由来に持つシナノキは、木材やロープ、ハチミツなど、さまざまな用途のある樹木です。日本人の生活に古くから根付き、共生してきた歴史を感じますね。初夏の新緑や秋の紅葉、冬の落葉と季節ごとに違った美しさがあるのも、落葉広葉樹であるシナノキの魅力です。街路樹や公園木として植えられているシナノキは、散歩するときの楽しみにもなりますね。

おもち
ライター

おもち

幼少期、母とふたりでつくった小さな花壇が宝物でした。季節の移り変わりを色とりどりの花で知るのがとても好きです。

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