サフランモドキってどんな花?
雨が降った後に花を咲かせるので、「レインリリー(Rain lily)」の愛称で呼ばれることもあるサフランモドキ。初夏から秋頃にかけて、美しいピンク色の花をつぎつぎと咲かせ、夏の庭に彩りを与えてくれます。40以上の品種があると言われる、ヒガンバナ科タマスダレ属の植物の総称をゼフィランサスといいますが、サフランモドキはその中の1種です。
サフランモドキの基本情報
学名 | Zephyranthes grandiflora carinata |
科名 | ヒガンバナ科 |
属名 | タマスダレ属 |
生態 | 多年草 |
草丈 | 10~30㎝ |
開花時期 | 6~10月 |
花の色 | ピンク |
耐寒性/耐暑性 | やや弱い/強い |
名前の由来
サフランモドキ(サフラン擬)は、サフランに似た姿をしているためついた名前だと思われがちですが、実はそうではありません。江戸時代末期に日本へ渡来した当初は、本物のサフランだと思われていたのです。しかし、明治の初めになってこれが誤りであることが知られ、本物と区別するためにサフランモドキ(サフラン擬)という名前になりました。
サフランモドキの特徴
サフランモドキはメキシコ、および中央アメリカに分布するヒガンバナ科の球根植物です。現在では温暖なアメリカ合衆国南部からアンチル諸島、及び南アメリカの孤立した場所で見られます。日本の暖かい地方では、逸出して野生化している場合もあります。また、異名のカリナータで流通することもあります。
花の特徴
サフランモドキは、花径7㎝ほどの、ピンク色の美しい花を咲かせます。一輪の花持ちは2~3日と短命ですが、つぎつぎと新しい花茎を伸ばし咲き続けるので、長期間楽しめます。群植して咲かせると、よりいっそう華やかな印象になるのでおすすめです。
葉の特徴
サフランモドキの葉は、長さ30㎝ほどの細長い線形で、3枚~6枚が束になってついています。濃い緑をしており、全体的に無毛です。球根植物には珍しく常緑性があるため、開花時期が終わっても花壇の彩りとして重宝されます。ただし、氷点下が続くような寒冷地では葉を枯らして冬眠します。
毒性
ヒガンバナ科には有毒性のある種が多数ありますが、サフランモドキも例にもれず、全草に有毒成分であるリコリンを含みます。誤って摂取すると吐き気、嘔吐、痙攣などの症状がおきます。
サフランモドキと山菜の見分け方
毎年、葉を食用である山菜のニラ、鱗茎をノビルと間違えて摂取し食中毒が発生しています。ニラやノビルにはにおいがありますが、タマスダレヤ、サフランモドキにはありませんので、採取する際は葉を揉んでにおいがあるか確認しましょう。
サフランモドキの育て方
ゼフィランサスには品種がたくさんありますが、中でも白い花を咲かせるタマスダレと、ピンクの花を咲かせるサフランモドキがよく親しまれています。タマスダレは耐寒性に優れ、サフランモドキは半耐寒と品種によって少し違います。この章では、サフランモドキをより美しく咲かせる育て方をご紹介します。
植え付け
熱帯地方原産の球根なので、暖かくなる3月下旬から4月中旬が植え付けの時期にあたります。地植えや花壇に植える場合は深さ10㎝、球根同士の間隔は3㎝を目安に植え付けます。鉢植えの場合は、球根の先が出ない程度に浅植えにし、6号鉢(直径18㎝)に6〜7球くらいを目安として植え付けます。
日当たり
できれば日当たりのよいところに植え付けましょう。とはいえ、かなり丈夫な花なので、半日陰でも問題なく育ちます。耐寒温度は-5℃程度ですが、株の上に落ち葉やピートモスをかけておくと、地面が凍る寒い地方でも越冬できます。
水やり
鉢植えの場合は土が乾いたら水をたっぷり与えます。地植えや花壇の場合は、夏場に雨が降らない日が続くようであれば、時々水やりをします。葉が伸びきったら花が咲く頃なので、この時期にたっぷり水を与えてやると、2日ほどで一斉に花が咲きます。乾燥が続くと花が咲きにくくなるので気をつけましょう。
用土と肥料
用土は市販の草花用培養土、もしくは赤玉土とバーク堆肥(腐葉土)を2対1程度に混ぜて使います。肥料は、花壇に植える場合にはそれほど与えなくてもよく育ちます。鉢植えの場合は、植え付け時に暖効性の化成肥料を与えます。育ちが悪いときは、9月頃に追い肥するといいでしょう。
植え替え
植え替えについては、とくに神経質になる必要はありません。長く植えっぱなしにしておくと、球根が混み合ってやせてしまい、花付きが悪くなります。逆に、毎年掘り上げると根を痛め、花が咲かないことがあります。鉢植えは2〜3年、地植えは4〜5年に一度は分球して植え替えてあげましょう。
サフランモドキと似た毒性のある植物
サフランモドキ以外にも、似た毒性を発揮する植物があります。山や野原など有毒植物と山菜が混在している場所は多数ありますので、山菜狩りを楽しむ場合には特に注意が必要です。サフランモドキに似た毒性のある植物を少しご紹介します。
イヌサフラン
学名 | Colchicum autumnale |
科名 | イヌサフラン科 |
属名 | イヌサフラン属 |
生態 | 多年草 |
草丈 | 5~30㎝ |
開花時期 | 9~10月 |
花の色 | ピンク、紫、白、黄 |
耐寒性/耐暑性 | 強い/強い |
イヌサフランは、ヨーロッパ中南部から北アフリカ原産の球根植物です。種小名「autumnale」の通り、秋にサフランによく似た花が咲きます。イヌサフランには、土に植えなくても窓辺に球根を置いておくだけで花が咲くという特徴があります。お皿やカップなど、さまざまな容器で楽しめるのが魅力です。
イヌサフランの毒性
イヌサフランは毒性の強い植物です。毒性成分はアルカロイドのコルヒチン。食用の山菜であるギョウジャニンニクと似た葉をしているため間違いやすく、誤って摂取すると呼吸困難、嘔吐、下痢などの症状があらわれ、重症の場合には死亡することがあります。
イヌサフランとギョウジャニンニクの違い
イヌサフランの葉にはにおいがありませんが、ギョウジャニンニクには名前のとおり、強いにんにくのにおいがあります。見分けがつかず、食用と判断できない場合は山菜狩り4原則「採らない・食べない・売らない・あげない」を守りましょう。
夏水仙(ナツズイセン)
学名 | Lycoris squamigera |
科名 | ヒガンバナ科 |
属名 | ヒガンバナ(リコリス)属 |
生態 | 多年草 |
草丈 | 50~90㎝ |
開花時期 | 8月 |
花の色 | ピンク |
耐寒性/耐暑性 | 強い/強い |
夏水仙は中国原産の球根植物です。水仙によく似た葉をしており、夏にピンク色の美しい花を咲かせます。早春に芽を出し夏になると葉は枯れて、その後、花茎が伸びて花を咲かせます。夏水仙は開花時期に葉がないのが特徴で、ハダカユリ(裸百合)とも呼ばれます。
夏水仙の毒性
夏水仙はリコリスの仲間で、全草に毒性があります。特に強いのは、鱗茎、球根の部分に含まれているリコリンやシュウ酸カルシウムです。食用の山菜であるニラと似た葉をしているため間違いやすく、誤って摂取すると悪心、嘔吐、下痢、流涎、発汗、頭痛、昏睡、低体温などさまざまな症状を引き起こします。
コサフランモドキ
学名 | Zephyranthes rosea |
科名 | ヒガンバナ科 |
属名 | タマスダレ属 |
生態 | 多年草 |
草丈 | 15~20㎝ |
開花時期 | 6~10月 |
花の色 | 濃いピンク |
耐寒性/耐暑性 | やや弱い/強い |
コサフランモドキはグアテマラ、西インド諸島原産です。コサフランモドキとサフランモドキは名前もそっくりですが、性質もほぼ同じで、商人ですら間違うこともあるようです。違いは、サフランモドキのほうがやや濃いピンク色の花を咲かせること。コサフランモドキより、異名のロゼアで流通していることが多いです。
コサフランモドキの毒性
コサフランモドキの毒性は、サフランモドキと同様です。全草有毒で、特に鱗茎に強い毒成分が含まれます。家庭菜園でニラやノビルを育てている方は、間違って収穫してしまわないよう、なるべく離れた場所で栽培しましょう。
サフランモドキまとめ
今回はゼフィランサスの仲間であるサフランモドキ(サフラン擬)の特徴や育て方をご紹介しました。とても丈夫な球根で、花壇に植えても鉢植えにしてもよく花が咲きます。毒性があるので注意は必要ですが、植え替えの必要も少なく、育てやすい植物です。みなさんも寂しくなりがちな夏の庭を、美しいピンク色の花でいっぱいにしてみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC