カイガラムシ被害への対策
いよいよカイガラムシの駆除の方法になります。カイガラムシは種類も多くそれにあわせて農薬も多くなるため、難しいと感じる方も多いと思います。実はカイガラムシの駆除は以下の基本戦略を抑えれば効率的に防除できますので、いっしょにポイントを抑えていきましょう。
越冬密度を減らす
カイガラムシは気温が低下するとともに、春先まで休眠します。そして春になると活動が再開し、カイガラムシ被害が拡大しだします。そのため、冬期のカイガラムシ密度を減らすことが翌春の被害の予防につながります。先述したように、カイガラムシには動く種と動かない種がいますので、生態にあわせた駆除が重要です。
- 殻にこもり動かないカイガラムシ
このタイプのカイガラムシは、卵を抱えた状態でこもりつづけ越冬ます。冬場の農薬散布に効果がでにくい種類も多いため手で摘み取るか、孵化時期の駆除がとても重要になります。
- 殻にこもらず動けるカイガラムシ
このタイプのカイガラムシは、狭くて暗い場所に移動して越冬します。そのため、荒皮を除去して隠れ場所をなくしてから農薬を散布するか、バンドを巻いておびき寄せる方法が効果的です。
ふ化時期を見極める
カイガラムシの成虫は水をはじくため効果のある農薬が限られます。一方で、カイガラムシの幼虫は被覆物で身を守るまでは非常に脆弱な存在です。この時期に、農薬を散布できれば効率的に駆除できます。ただ、幼虫はふ化して数日後には被覆物を身にまといだすため、種類ごとのふ化時期の見極めが重要です。
丁寧に防除する
カイガラムシを農薬で駆除する場合、多くの農薬が接触型薬剤であることを覚えておいてください。接触型農薬はカイガラムシに直接かからないと、効果が出ない農薬ですので散布量よりも薬剤の付着量が重要になります。そのため、樹体表面に万遍なく薬剤がかかることが望ましいので、ムラができないように霧状の噴霧器による丁寧な散布がおすすめです。そして、事前に散布量を計算して、余裕をもった希釈液量の用意も大事です。
柑橘系樹木のカイガラムシ駆除方法
温州ミカンや中晩柑、レモンなどの柑橘類の樹につくカイガラムシの駆除方法について解説していきます。
注意するカイガラムシ一覧
カイガラムシの種類 | 殻の有無 | 越冬時の姿 | 孵化時期 |
ヤノネカイガラムシ | あり | 成幼虫 | 5中~5下 7下~8上 9下~10中 |
ミカンヒメコナカイガラムシ | なし | 主に幼虫 | 6上~6下 8上~8下 9中~10上 |
ロウムシ属 | なし | 成虫 (ロウにこもった状態) |
6~7 |
利用可能な農薬一覧
カイガラムシ種類 | 形態 | 登録農薬 |
ヤノネカイガラムシ | 成虫 | エルサン乳剤、アルバリン顆粒水溶剤、スタークル顆粒水溶剤 |
幼虫 | スピラサイド水和剤、スピラサイド乳剤40 | |
若齢幼虫 | ダーズバン乳剤40 | |
ロウムシ属 | 成虫 | アクタラ顆粒水和剤 |
ルビーロウムシ | 幼虫 | スピラサイド乳剤40 |
農薬散布の手順
カイガラムシへの農薬散布の手順では、まずは冬季の密度をさげることが最初の手順になります。次の手順は、ふ化時期を狙った幼虫の駆除になります。これは、成虫のカイガラムシを駆除する効果の強い農薬をまき続けると、時期を選ばすに作業ができますが、デメリットも大きいからです。この手順を大事にしないと、カイガラムシが農薬に対する抵抗性をもち、カイガラムシを駆除してくれる天敵まで駆除してしまうため、長期的にみると被害の拡大につながってしまいます。
駆除方法
柑橘類における、カイガラムシの駆除では収穫後の12月~1月もしくは3月~4月のマシン油の散布が基本になります。そのうえで、問題になるのはヤノネカイガラムシとロウムシ類です。それぞれの種の違いは、殻を被っているかどうかで判断できるとおもいます。
カイガラムシに対する農薬散布
ヤノネカイガラムシのふ化時期は6月中~下旬ですので、ここで幼虫用の上記農薬を参考に散布してください。農薬の散布は一回で駆除しようと思わず、2~3回の農薬を10日おきに散布するのがよいです。ロウムシが発生している場合は、7月上~中旬のふ化時期に樹体をよく確認して幼虫用の農薬を散布してください。ただ、収穫時期の8月中旬~9月上旬はヤノネカイガラムシの第二世代ふ化時期と重なるため、成虫用の農薬を散布して確実に防除してください。
バラ科果樹のカイガラムシ駆除方法
リンゴやナシ、ウメなどのバラ科の果樹につくカイガラムシの駆除方法について解説していきます。
注意するカイガラムシ一覧
カイガラムシの種類 | 品目 | 殻の有無 | 越冬時の姿 | 孵化時期 |
クワコナカイガラムシ | リンゴ、ナシ | なし | 成虫 (卵のう状態) |
5上~5中 7上~7中 9上~9中 |
ウメシロカイガラムシ | モモ、ウメ、スモモ | あり | 成虫 | 5上~5中 7上~7中 8下~9上 |
マツモトカイガラムシ | ナシ | なし | 幼虫 | 6上~6下 8上~8下 9中~10上 |
利用可能な農薬一覧
カイガラムシ種類 | 登録品目 | 登録農薬 |
コナカイガラムシ類 | リンゴ | アクタラ顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤、スタークル顆粒水溶剤 ダントツ水溶剤、バリアード顆粒水和剤 |
ナシ | アクタラ顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤、スタークル顆粒水溶剤、 ダントツ水溶剤、バリアード顆粒水和剤、トクチオン水和剤、トクチオン乳剤 |
|
ウメシロカイガラムシ | モモ | コテツフロアブル、ダーズバンDF |
小粒核果類 (ウメ、アンズなど) |
コテツフロアブル |
カイガラムシムシの見つけ方
バラ科果樹に寄生するカイガラムシはあっという間に被害が拡大することが多いです。そのため、ふ化幼虫の早期発見が重要になります。カイガラムシの見つけ方はアリを見かけたら近くにいると疑えとはよく言われます。これは、カイガラムシの出す甘い汁をもらいにアリがやってきたためです。また、剪定切り口もカイガラムシの成幼虫が集まりやすいポイントなので、時期になればこまめにチェックして一匹でも見つけ次第防除を開始しましょう。
耕種的防除方法
カイガラムシの幼虫は、発見するたびに潰したりブラシでこそぎ落すことで無農薬で被害を予防できます。カイガラムシの幼虫は初めは1mmほどの大きさで見つけにくいですが、だんだんと大きくなり、せん定切り口や葉の根元にいるのを見つけられます。放置しておくと100個以上の卵を産むため、見つけ次第せん定バサミの持ち手や太い針金で押しつぶしましょう。
駆除方法
ナシやリンゴではクワコナカイガラムシが問題になります。まずは、越冬密度を減らすために2~3月上旬にはマシン油の散布をしてください。そして、クワコナカイガラムシはふ化開始10日~14日でふ化幼虫が大体出そろうため、5月中旬から下旬にかけて、上記のコナカイガラムシ類に効果のある農薬を散布してください。上記以外にもスプラサイド水和剤も効果的です。
減農薬栽培の駆除法
バイエルクロップサイエンス 殺虫剤 ハーベストオイル 4L
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農薬の量を少なくした栽培ですとカイガラムシの量が増える傾向にあります。なるべく農薬を使わずに、越冬密度をさげるためには、隠れ場所をなくすための荒皮はがしや、卵を産み付けられやすい誘引ひもの更新が効果的です。さらにオーガニック農薬として認められているマシン油を散布することで予防ができますが、それでもカイガラムシが発生するようでしたら、注意深く剪定切り口や新梢の根元を観察して成幼虫を潰して次世代個体を減らしてください。
このほか、マンゴーやパパイヤなどの熱帯果樹は年中カイガラムシの発生が問題になりますが、春ごろの防除が大事なのは一緒です。次のページでは、チャノキや観葉植物の防除方法について解説します。
アカマルカイガラムシ