黄蜀葵とは
黄蜀葵(おうしょっき)は中国から日本へと渡来した植物で、渡来した時期については奈良や室町・江戸と諸説あります。これまで生産地農家で育られ、この根をすり潰し和紙を漉くための「ネリ」として利用されてきました。日本各地の農家で栽培されていますが、主な生産地は茨城県が1位で90%を占め、2位は埼玉県で6%です。
黄蜀葵の花と開花時期
黄蜀葵は7月~9月に、花弁が5枚の薄い黄色から白っぽい花を咲かせます。花の大きさは10cm~15cmになり、その中心部には濃い紫色の模様が入ります。学名のアラビア語を語源とするAbelmoschus monigotは「麝香の父」を意味しており、その名の通りムスクに似たよい香りを放つのですが、朝咲いて夕方には閉じる1日花です。
黄蜀葵の花言葉
黄蜀葵の花言葉は「知られぬ恋」「願う気持ち」「あなたを信じる」などがあります。可憐な花がたった1日でしぼむので、「知られぬ恋」という花言葉の由来のようです。また加藤三七子の歌に「市原野 とろろあおいの 花咲かす」とあり、黄蜀葵は夏(晩夏)を意味する季語として俳句では使われます。
黄蜀葵の利用方法
黄蜀葵は和紙造りのネリ以外にも漢方薬として、また民間療法の薬として利用されてきました。では、どんな症状や黄蜀葵の何をどう使うのかについてご説明します。
黄蜀葵の利用方法:効能
黄蜀葵の効能はトロロアオイ属に含まれる粘質成分によって、粘滑や鎮咳効果があります。漢方での別名は「通和散」といわれ、成分はアラバンという粘質多糖類やガラクタンなどの粘液質で、花は焼酎漬けにして痒み止めや火傷・切り傷の化膿止めとして利用できます。
黄蜀葵の利用方法:煎じる
黄蜀葵根は10月~11月に堀りあげて水洗いをしてから外皮を剝ぎ、3cm~4cmほどに切って天日干しにします。のどの痛みや腫れがあるときはこの根を10g~20gを使い、適量の水で煎じてうがいをすると症状が緩和します。
黄蜀葵の利用方法:花を焼酎に漬ける
黄蜀葵の花は咲きかけや咲いて間もない時期に採取し、焼酎に漬け込みます。漬け込む容器は煮沸消毒しておき、雌しべなどを取り洗った花を入れて焼酎を被るくらい注ぎましょう。とろみのある液は保湿する効能があるので、化粧水になります。また、花は何と天ぷらや三杯酢で食べられます。
黄蜀葵の育て方
黄蜀葵の生産地は温暖な気温が適していますが、適応性が高い植物なので日本中で栽培することが可能です。ただ生産地農家以外では苗が手に入りにくいので、種から育てます。草丈は1m~2mまで成長し、連作を嫌うので翌年は別の場所へ植えましょう。
黄蜀葵の種まき
黄蜀葵の種は発芽温度が25度前後です。季節としては春4月中旬から寒冷地域は5月が無難でしょう。また種は殻が硬いので、数日間水に浸けてから植えるとよく発芽します。本葉が出始める季節の6月に鉢や地植えにしますが、根をキズ付けないように根鉢は崩さずに植え付けます。9号鉢なら1本、地植えの場合は40cmの間隔をとりましょう。
黄蜀葵の用土
黄蜀葵を植える用土は、中性からアルカリ性がよく育ちます。湿気の多い土壌は病気などが発生するので、赤玉土に腐葉土や川砂を加えるとよいです。鉢植えでは土の栄養分も少ないので、用土を定期的に足しましょう。
黄蜀葵の水やり
黄蜀葵は乾燥に強い植物なので、土が乾いたらたっぷりと与えれば十分です。鉢植えの場合は水分を含む土が少ないので、鉢底から流れ出るくらい与えます。その反面、湿気を嫌うので水捌けはよくしましょう。根を収穫する季節の10月になったら、水はほとんど必要ありません。
黄蜀葵の夏越しと日当たり
黄蜀葵は暑さに強いので、夏場は台風などの風雨で茎が折れないように支柱を立てることと、害虫が葉や蕾を食い荒らすことに注意します。日当たりのよい場所を好むので夏の昼間は葉が萎れたようになりますが、夕方になれば復活するので心配ありません。
まとめ
黄蜀葵は漢方として、また和紙のネリとして農家で栽培されてきました。ところが近年は農家の高齢化が進み、生産量も減少している現状です。花は食用に根は漢方薬にもなる黄蜀葵が、絶えないことを願うばかりです。
出典:写真AC