コモンタイムとは
シソ科に属するコモンタイムは、地中海沿岸に自生するタイムの代表的な品種です。常緑性で寒さや暑さに強いコモンタイムは立ち木性で丈が20cm~40cmまで成長し、開花時期は4月~7月頃に白やピンクの花を咲かせます。イブキジャコウソウは、日本や東アジアにに自生するコモンタイムの仲間です。
コモンタイムの仲間
シルバータイム
シルバータイムは立ち木性で、丈が25cmほどとコンパクトな樹形です。茎はややピンク色をして、葉には縁に白い斑が入ります。夏に薄いピンクの花を咲かせ、秋から冬になると全体的に赤みがかった紫色に紅葉します。
フレンチタイム
フレンチタイムはコモンタイムのなかでも、香りや性質がよいものだけを掛け合わせた選抜種になります。そのため非常に香りがよい品種です。
レモンタイム
レモンタイムはコモンタイムをほかの品種と交配させた品種です。立ち木性で丈は25cm~30cmになり、つやがある緑色の葉はレモンの香りがします。夏には枝分かれした茎の先端に、淡いピンクの花をたくさん咲かせます。
イブキジャコウソウ
イブキジャコウソウは唯一、日本やアジア東部に自生するタイムの仲間です。ほかのタイムのように薬効はありませんが、可憐な花を観賞用として植えられています。
ウーリータイム
コモンタイムの仲間であるウーリータイムは、枝が地面を這うように伸びる匍匐(ほふく)性の品種です。葉は毛糸のような柔らかな白い毛に覆われ、小さな楕円形をしています。香りはほのかですが匍匐性の特性を活かし、庭のグランドカバーとして利用できます。
コモンタイムの育て方
コモンタイムは種の発芽率も高く、芽が出るまでの待ちどうしい日々もよいものです。種はとても小さく、それだけ発芽エネルギーが少ないのでちょっとしたコツもご紹介します。
コモンタイムの育て方①種まきの時期
コモンタイムの種まきは、春と秋の2回あります。時期としては4月~5月と、9月~10月です。種そのものがとても細かく小さいので、種まきは指で摘むよりも、固さのある紙に移して重ならないようにまきましょう。風で飛ばされないようにすることと、水やりのときに流さないように注意します。種まきした直後は、霧吹きで水分を与えましょう。
コモンタイムの育て方②発芽のコツ
コモンタイムの発芽には光を必要とする好光性なので、用土に深く埋めません。鉢植えや地植えするときには種が重ならないよう均等にちらし、上にかける土は薄くします。苗床は市販のハーブ用土や赤玉土を使い、種を覆う土はバーミキュライトを利用すると光を反射して発芽しやすくなります。心配な場合には水を入れた皿に数日間ほど種をつけて、明るい窓辺などに置いて発芽してから植えてもよいでしょう。
コモンタイムの育て方③定植
コモンタイムが発芽して本葉が2枚~3枚になったら、元気な芽だけを残して間引きます。本葉が5枚ほど(5cm~6cm)になったら鉢植えや庭へ定植していき、その時期としては生育温度の15度~20度になる4月中旬~6月下旬、9月中旬~下旬に行います。鉢植えの場合は少し大きめの6号くらいに、地植えは周囲よりも15cmほど土を盛って(高うね)に植え付けましょう。
コモンタイムの育て方④用土
コモンタイムを植える用土は、赤玉土7:腐葉土3で混ぜたものを使います。コモンタイムの育て方では水はけが重要なので、腐葉土を減らしてバーミキュライト1を加えてもよいでしょう。また、酸性の土壌を嫌う性質のため、苦土石灰を植え付ける1週間前に施しておくと安心です。
鉢植えは植え替えを
鉢植えの土は経年劣化をするので年に1度、春か秋のどちらかに植え替えを行いましょう。根に付いている土はできるだけ落とし、ひと回りからふた回り大きな鉢に植え付けます。このとき根が切れても新しい根がすぐに出るので、心配せずに古い土を落とします。
コモンタイムの育て方⑤置き場所
コモンタイムは日当たりのよい、乾燥気味の場所へ植えます。このハーブはヨーロッパの海岸部の標高600mから内陸部の標高1600mまでに自生しており、気温が-15度でも雪に覆われても平気です。その代わり夏の多雨多湿に弱く、植え方や管理方法を間違えると葉が黄色くなったり株が枯れたりする可能性があるので注意が必要です。鉢植えは軒下など雨が当たらない場所へ移すことも必要です。
コモンタイムの育て方⑥水やり
乾燥にとても強い植物なので、水やりは土が乾いてカラカラになった時期にたっぷりと与えます。庭植えにして成長した株は、ほとんど水やりの必要ありません。鉢植えの場合は土が乾き易いので毎日でも与えたくなりますが、根の成長を妨げたり根腐れを起こしたりするので、数日は我慢してみましょう。
コモンタイムの育て方⑦肥料
コモンタイムの植え方として、元肥えや追肥はほとんど与える必要がありません。石の多いやせた土地にに生える植物なので、どうしても栄養を与えたい場合には、鉢植えだけに液肥を春と秋に施します。液肥を与えることで花付きがよくなり、枝の収穫もたくさんできます。
コモンタイムの増やし方
元来ハーブ類は野草なので、非常に生命力に溢れた植物です。枝が地面と触れているだけでも根を出すほど強いので、増やすのは難しくありません。
コモンタイムの増やし方①挿し木
コモンタイムの挿し木は真夏と真冬以外であれば、いつでも可能です。挿し穂は木質化していない枝の先端部分を15cm使い、下の葉はすべて取り除きます。植え方は挿し木をする前に1時間~2時間コップなどに入れて吸水させ、栄養分のないバーミキュライトや小粒の赤玉土に植え付けます。
コモンタイムの増やし方②圧条法
圧条法は地面に触れている枝が根を出す現象で、立ち木性のコモンタイムにも横へ伸びる枝に見られます。枝は切らずに長く成長したものを針金などで強制的に押さえ、土に埋めて置きます。植え方は圧条法をした枝の芽が動き、枝自体が根を張って動かないのを確認できたら株から切り離し、地植えや鉢植えに植えましょう。
コモンタイムの夏越し
コモンタイムは寒さや暑さに耐性があるものの、日本の夏の湿気には非常に弱いハーブです。コモンタイムを生かすも殺すも夏越しに掛かっていると言っても過言ではありません。
コモンタイムの夏越し①地植え
コモンタイムだけでなくタイムというハーブは岩礫地に自生している植物なので、多少水切れしても枯れることはありません。反対に水を与えすぎると根腐れなどを起こします。地植えでは水やりの必要はなく、植え方も風通し日当たり共によく、乾燥している場所に植えることで元気に育ちます。梅雨など蒸れ易い時期の対策としてコモンタイムが触れる表土に、ウッドチップや粗めの砂利・砂などを利用しましょう。
コモンタイムの夏越し②鉢植え
鉢植えのコモンタイムは、蒸れる心配が地植えよりも高いです。鉢の素材は素焼きが水分の蒸発の面ではよいのですが、プラスチック製ならば熱くなり難い利点があります。水やりは水分を与えると同時に鉢の中を冷やす役割もあるので、底から流れ出る水が冷たくなるまで流しておきましょう。またベランダでは室外機の前には置かないように、庭やベランダどちらも地面に直接置かず、レンガや棚を利用をして空間を空けてやると蒸れ予防になります。
夏前に剪定
コモンタイムは茂った枝葉で蒸れるので、根元近くの新芽がある場所で切り詰めます。冬から春に掛けて枝を剪定し、風の通りをよくすることで湿気対策となります。切ったばかりは葉がなくなるので枯れ木のようですが、すぐに新芽が伸びてくるので大丈夫です。夏場は風通しをよくするように、横へ伸びた枝や内側へ伸びた枝を元から切り取ります。
まとめ
コモンタイムは料理の香り付けやハーブティーとして、利用方法も多彩です。夏の湿気さえ上手に乗り越えれば、病気や害虫の心配もなく元気に成長してくれます。庭に生えておくだけでもよい香りを漂わせて、気持ちを明るくしてくれる植物といえます。種や苗も比較的手に入りやすく、コモンタイムは初心者にも育て易いハーブです。
出典:BOTANICA