胡椒について
スパイスとしておなじみの胡椒は、刺激的な辛さで料理のアクセントになります。使用頻度は多いものの、どのような栄養素が入っているのか、健康にはよいのかなどを考えて使用している人は少ないのではないでしょうか。本記事では胡椒について、種類や効能、身体へのメリット・デメリットなどについて詳しくご紹介していきます。
胡椒の紹介
胡椒はインド南西部原産のつる性の植物で、スパイスとして口にしているものは、その果実を加工したものです。古くから、抗菌・防腐作用が食物の長期保存のために重宝され、金と同等の価値で交換されていたほどでした。日本には奈良時代に遣唐使によって持ち込まれたといわれています。当時は調味料ではなく薬として用いられ、正倉院に御物として保管されています。
胡椒の種類4つ
胡椒には収穫の時期や加工の方法で違う4つの種類があります。もっともよく知られているのがブラックペッパー、その次に馴染みがあるのがホワイトペッパーではないでしょうか。他にはグリーンペッパーとピンクペッパーがあり、それぞれ種類ごとに異なった特徴があり、相性のよい料理や食材も違ってきます。
黒胡椒(ブラックペッパー)
胡椒の実を成熟前のまだ青いうちに収穫し、天日などでじっくり乾燥させます。青かった果皮が乾燥により黒くなった状態のものを「ブラックペッパー」といいます。果皮を残しているため香りが高く、辛みも強いのが特徴です。臭み消しなどにも使われます。世界中どこの国でも使用されているといわれ、クセの強い食材との相性がよく肉料理などに使用されます。
白胡椒(ホワイトペッパー)
赤く完熟した胡椒の実を収穫し、乾燥させたあとに水にさらし外皮をふやかしてむいたものです。皮をむいた果実は白色をしています。風味が柔らかく、白身魚などの淡白な味わいの食材に適しています。ホワイトソースやポタージュなど、白い色を生かしたい料理に使われるものとして作られたといわれています。
ボタニ子
青胡椒(グリーンペッパー)
黒胡椒同様、成熟前の実を収穫します。その後塩漬けにするかフリーズドライにし、実は緑色を保ちます。フレッシュな香りと爽やかな辛みが特徴です。タイ料理やカンボジア料理では生の胡椒が食材として炒め物などで食べられていますが、生胡椒を入手できない日本では塩漬けが代用されることもあります。
ボタニ子
グリーンペッパーは青唐辛子や青ピーマンのことを指すこともあるため注意してくださいね!
赤胡椒(ピンクペッパー)
熟して赤くなった胡椒の実を収穫し、乾燥または塩漬けにしたものをいいます。黒胡椒同様外皮が残っていますが、完熟のため風味がマイルドになっているのが特徴です。ただし、日本で流通しているピンクペッパーは、ほとんどが胡椒の実とは別の種類のコショウボクというウルシ科の木の果実です。その赤い色から料理の彩りとして飾りつけに使用されたりしています。
番外編:柚子胡椒
柚子胡椒は名前に「胡椒」とつきますが、胡椒の種類に含まれるものではありません。乾燥していない生の唐辛子と柚子をすりつぶし塩を加えて熟成させて作る、九州地方で薬味などによく使われる調味料です。青柚子と青唐辛子を使用した緑色のものと、黄色い柚子と赤唐辛子を使用した朱色のもの2種類があります。
胡椒の効果・効能
胡椒の主な栄養・成分
胡椒には、カリウム、カルシウム、マグネシウムや鉄などのミネラルのほか、ビタミンB1、ビタミンB2、ビオチンなどの栄養が含まれています。栄養素以外では、辛みを感じさせる成分のピペリン、香りの成分のβカリオフィレンです。どれも身体を健康に保つのにとても役立つ成分です。
ピペリン
胡椒のピリッとした辛みは、ピペリンという成分によるものです。黒胡椒の果皮に一番多く含まれており、胡椒の代表的な健康効果はこのピペリンによるものが多いです。ダイエットに効果があったり、血行をよくして冷えを解消したり、肌を健康に保ってくれたりするなどと、女性にうれしい効果がたくさんあります。
カリウム
カリウムには利尿作用があり、むくみを改善する効果や、体内の余分なナトリウムを排出して高血圧を予防する効果があります。また、身体の細胞内の水分を保つ働きがあり、熱中症になってしまったときの回復を助ける作用もあります。汗をかく季節にはぜひ積極的に摂取したい栄養素です。
鉄分
胡椒には鉄分も多く含まれています。鉄分が不足すると、貧血になってしまいます。貧血に陥ると体中に酸素や栄養を行き届かせることができず、筋力が低下し疲れやすくなったり、さらには免疫力も下がり病気にかかりやすくなったりしてしまいます。イライラや肩こりの原因になることもあるようです。
ボタニ子
ただし、胡椒は大量に食べられるものではないため、胡椒だけでカリウムや鉄分の必要摂取量をまかなうのは不可能です。あくまで補助的に考えて、他の食品と組み合わせて摂取するようにしましょう。
胡椒の主な効果・効能6つ
胡椒の主な効果・効能①血行促進
ピペリンには血管を拡張する作用があります。血管を拡張することで血流がうながされ身体の末端まで血流が行き届くようになり、冷え性の改善に役立つのです。血行がよくなることで筋肉の凝りをとったり、筋肉痛を和らげたりする効果もあります。頭皮まできちんと栄養が届くようになり、抜け毛などの髪の悩みにもメリットがあるともいわれています。
胡椒の主な効果・効能②食欲増進
ピペリンの効能には食欲増進もあります。同じく胡椒に含まれるにおい成分のリモネンにも食欲増進効果があります。食欲が増すだけでなく唾液や消化酵素の分泌を促したり、胃腸の血行がよくなることで消化・吸収の手助けにもなったりするのです。一緒に摂取した食物の栄養の吸収も高まります。
胡椒の主な効果・効能③ダイエット効果
ピペリンには交感神経を刺激する作用があります。交感神経が刺激されると、アドレナリンが分泌され脂肪分解酵素が活発になるのです。血行促進作用で身体が温まりエネルギー代謝が高まっているため、脂肪は効率よく燃焼されます。食べるだけでダイエット効果が期待できるというのは、ありがたい効能ですね。
胡椒の主な効果・効能④アンチエイジング効果
近年、老化の一因として活性酸素による酸化が注目されていますが、ピペリンには抗酸化作用があるのです。胡椒には、ほかにも抗酸化作用のあるポリフェノールも含まれています。さらに、鉄分は肌のハリを保つコラーゲンを体内で産生するのに使われています。ピペリン・ポリフェノール・鉄分を同時に摂取できる胡椒はアンチエイジングにメリットのある食品といえるでしょう。
胡椒の主な効果・効能⑤リラックス効果
胡椒の香り成分のひとつに、βカリオフィレンというものがあります。βカリオフィレンは興奮状態のときにかぐと神経をリラックスさせ、精神を安定させてくれるのです。怒りや不安を和らげる、頭痛を軽減させる、ホルモンバランスを整えてPMS(月経前症候群)やマタニティブルーを緩和するといった効能があるといわれています。
胡椒の主な効果・効能⑥抗菌・防腐・防虫効果
胡椒がかつてとても高価だったことの理由が、抗菌・防腐効果のためです。肉などの食物の冷蔵保存ができるようになるまでは、細菌の繁殖を抑えてくれる胡椒は重要な保存手段でした。大航海時代は胡椒の貿易ルート開拓のために始まったともいわれています。また、胡椒の香り成分を嫌う虫は多く、衣類の虫食いで知られるヒメカツオブシムシの食害を防ぐ効果もあります。
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エジプトのミイラには防腐剤として胡椒が詰められていた時代もあるんですって!
おなじみのテーブルコショーは、ブラックペッパーとホワイトペッパーをブレンドしたものなんですよ。