ヤマボウシについて
ここでは、ヤマボウシとはどんな特徴をもった樹木なのかを見ていきます。ヤマボウシはミズキ科ヤマボウシ属の植物です。中国、朝鮮半島、日本がおもな生息地ですが、欧米にも渡り栽培されています。花のように見えるのは、花弁ではなく花のつけ根の葉です。これを総苞(そうほう)といいますが、色は品種により白とピンクがあります。
ヤマボウシの果実とは
果実は花後の8月~9月に紅橙色に熟して、果肉は粘質で甘く生食されます。生食する場合は外皮がはがれていないものを選び、種はジャリジャリ感が際立ちますから食べないほうが無難です。ジャムにするほか、冷凍してシャーベットのようにして食べる方法もあります。
ヤマボウシの人気の秘密
季節の移ろいを感じる
個人の庭園にシンボルツリーとして植えられるのはもちろん、公園の樹木や街路樹としても広く利用される、人気の高い樹木です。人気の秘密は、花としてとらえられる総苞の期間が長いことと、季節ごとの楽しみがあることでしょう。新緑、花、実、紅葉で、季節の移ろいを感じることができます。
ヤマボウシは株立ちが人気
ヤマボウシは、コツさえつかめばそれほど手入れが難しくないことも人気を押し上げています。また、近年の株立ちの流通が人気に拍車をかけました。地際からのびのびと空間に広がる姿は、すがすがしい開放感を与えてくれます。
ヤマボウシの魅力を生かす剪定
あなたの庭の株立ちヤマボウシも、その魅力を最大限に引き出すために、きちんと手入れをしてあげましょう。株立ちでも単幹でも剪定のやり方は同じです。大切なのは剪定の時期と花芽を切らないこと、不要な枝を除いて樹冠のバランスをとることです。
ヤマボウシを剪定する理由
ヤマボウシの剪定をしようとするときに、「何のために剪定するのか」を知っておくことは大切なことです。それを覚えておくと、大きく失敗することがなくなります。とにかく小さくするということだけで剪定してしまうと樹勢が衰える要因になりますし、花付きも悪くなってしまいます。
観賞するため・機能性を保つため
・バランスのよい美しい樹形を観賞するため
・きれいな花(総苞・花弁ではなく花のつけ根の葉)を観賞するため
・庭木としての機能性を保つため
おおまかですが、この3つを念頭において剪定してください。ヤマボウシで、道路や隣家からの視線をさえぎりたい場合などは、そのための高さや葉張りを確保することも大切です。
不要な枝を取り除く
のび放題になってしまった株立ちのヤマボウシの高さや樹形を本来の自然な姿に整えるためには、不必要な枝を剪定して取り除くことが必要です。それは、のびてほしい枝に勢いを与えることにもなります。きれいな花を見るためには、剪定すべき時期に、花芽と葉芽の違いを理解した剪定をしなければなりません。
花芽と葉芽の違い
「ヤマボウシの花がつかない」と聞くことがありますが、それは開花時期に花芽がないからです。剪定時に花芽を切ってしまっている可能性が高いです。剪定時期の11月以降は、花芽も葉芽もついています。花芽はふっくらとして大きく、葉芽はとがっていて締まっています。この花芽を切らないようにすることが、ヤマボウシの剪定のポイントの一つです。
ヤマボウシを剪定するときのポイント
- 不要な枝を正しいやり方で剪定する
- 花芽のつきにくい枝を剪定する
- 機能性を考えた剪定をする
ヤマボウシの剪定時期
ヤマボウシもほかの樹木と同じように、四季の変化に合わせながら一定のサイクルで生長しています。この生育サイクルを知って剪定すると、樹木にダメージを与えないだけでなく、その生長を助けることになります。樹木は早春、水揚げを開始します。春に若葉は大きくなり新芽の芽吹きも活発になります。
ヤマボウシの生長サイクル
5月~6月には花がつきます。花後の梅雨から7月~8月にかけてはわずかな成長にとどまるのですが、枝は徒長し樹形は乱れがちです。秋から晩秋にかけて幹や根、枝葉が栄養をたくわえ肥えはじめます。9月~10月には実がなります。
剪定の適期は休眠期
さらに冬へ向かい養分は翌年の生長に備えて貯蔵されていきます。そのため、落葉樹は葉を枯らして落とし、常緑樹は色を薄くし、冬には生育を休止します。ヤマボウシはこの休眠期に剪定します。それが一番ダメージを与えないからです。地域により多少の差がありますが、おおむね、11月~2月頃の冬の時期が剪定のための適期です。
ヤマボウシの剪定すべき枝の種類
樹木上部の葉が茂っている部分を樹冠といいます。この樹冠を整え、自然な樹形に見せることも剪定のポイントのひとつです。そのためには混みあった枝や不要な枝を切り、樹冠を乱す枝を切りそろえることが剪定のコツです。
必ず剪定したい不要枝
まず、3つの枝を整理してください。枯れ枝、徒長枝、ひこばえ(ヤゴ)です。枯れ枝はまさに枯れて変色してしまった枝です。周囲の枝に比べてツヤもなく、見苦しい枝です。徒長枝とは、樹冠から飛び出し樹形を乱す枝をいいます。他の枝に比べて太く長く、間伸びしている枝です。ひこばえは株元から発生する若い枝のことです。見栄えが悪いので早めに取りのぞきます。
その他の不要枝
次に整理したいのが、車枝、下り枝、交差枝、平行枝、胴吹き枝です。車枝は1ヶ所から数本出る不自然な枝、下り枝は下向きでだらしなく見える枝です。交差枝は必要な枝に交差するように出て、平行枝は近い位置で上下に2本並んでいる枝です。どれも枝が混んで見える要因になりますので整理します。胴吹き枝は幹の途中からでる枝で、樹冠にとって必要のない枝なので切ってしまいます。
ヤマボウシの基本的な剪定のやり方
徒長枝や車枝などの不要な枝を処理した後は、樹冠全体のバランスを見る必要があります。どれくらいの高さがあればいいのか、小さくコンパクトにまとめるのか、などの機能性を考えた剪定のやり方について見ていきます。どの枝を切るときも切り口は自然に見えるように、少し斜めに切ることを忘れないでください。株立ちでも単幹でもやり方は同じです。
切り戻し剪定
ヤマボウシをきれいに仕上げるためには、樹冠ラインを丸みのある円錐形に仕上げるのがコツです。離れたところから眺めて樹冠ラインをイメージできたら、樹冠から飛び出した枝は、樹冠内部にある小枝のところまで深く剪定します。このとき樹冠ラインに沿って切ったあとの枝が同じ太さになるように、他の枝も切り詰めます。
美しい樹形は樹冠ラインで決まる
上記の方法を行うことで、同じ太さの枝が樹冠ラインをつくるようになります。剪定後に伸びる枝の太さがそろい、柔らかく美しい樹形をつくることができるのです。このように、想定した樹冠ラインに合わせて枝を切ることを切り戻し剪定といいます。
透かし剪定
切り戻し剪定が終わると、樹冠を構成する枝の数は整い、先端の枝の太さも均一になります。全体のバランスも見栄えよく整います。ただ、よく見ると、樹冠ラインの近くに小枝と葉が密生して、樹冠内部まで日が差し込まず、風通しも悪くなっていることがあります。
樹木を真下から見てみる
樹木を真下から見てみるとよくわかります。樹冠内部に日が差し込まなかったり、風通しが悪かったりする場合は、混みあった先端の小枝の透かし剪定をしてください。内部まで日が当たり、風も通るようにすることで、樹木は健康に生長できるようになります。
剪定によるダメージも考える
ヤマボウシを低く小さくしたいと思うあまり枝を切りすぎてしまうと必要以上のダメージになって枯れる可能性があります。剪定に慣れないうちは徒長枝や車枝など本当に必要のない枝以外は抑え気味に切るようにしましょう。
まとめ
ヤマボウシの手入れのなかでも最も大切な剪定について見てきました。まず、剪定の時期はいつがよいのかについては、生育サイクルに合わせると、一番ダメージの少ない休眠期の冬ということになります。そして剪定のときには花芽と葉芽の違いを見極め、花芽のついた枝を残すことが、開花時期にちゃんと花を咲かせるポイントになります。
出典:BOTANICA