タムシバの特徴
香りが特徴的な木
タムシバは、早春に白い花を咲かせる落葉樹です。山に春を告げる花とされ、6枚の花びらが6〜10cm程の大きさで咲きます。その特徴的な香りから、昔から生薬や香水の原料とされています。つぼみを乾燥させた漢方を辛夷(しんい)といい、蓄膿症や鼻炎の薬として使われています。また、花は香水の原料として貴重です。
タムシバの花
タムシバの基本情報
分類 | モクレン科モクレン属 |
学名 | Magnolia salicifolia |
和名 | タムシバ |
別名 | ニオイコブシ、カムシバ、サトウシバ |
英名 | willow-leafed magnolia、anise magnolia |
開花時期 | 3〜4月 |
樹高 | 3〜10m 落葉小高木 |
原産地 | 日本 |
Magnolia(マグノリア)は、モクレン属の学名です。
タムシバの名前の由来
タムシバの名前の由来には、2つの説があります。
由来①:カムシバが訛った言葉
1つ目は、カムシバが訛ってタムシバとなったという説です。タムシバの枝や葉からは香りがしていて、噛むとキシリトールガムのような甘い味がします。別名サトウシバとも呼ばれるのはこのためです。昔の人は、この枝を噛んで味を楽しんでいたことから、カムシバが訛って、タムシバと呼ばれるようになったことが由来です。
由来②:タムシ状の模様から
2つ目は、葉っぱにタムシのような白い斑点模様があるからという説です。タムシとは、水虫など、カビからなる皮膚感染症のことです。
タムシバの花言葉
『友情』
真っ白な小さな花弁が並んでいる姿が、花言葉の由来となっています。春先の卒業入学の季節に咲き、贈り物としても喜ばれます。
タムシバとニオイコブシ
ニオイコブシとは?
精油(エッセンシャルオイル)として
ニオイコブシとは、タムシバの別名です。抜群に香りがいいことから、この名前が付けられました。その独特な香りから、精油(エッセンシャルオイル)が作られ、販売されているものは、ニオイコブシの名前が使われていることが多いです。レモンなどの柑橘系ような爽やかな香りで人気があります。
精油(エッセンシャルオイル)とは
精油とは、植物の花や葉、枝、樹皮、根などから抽出される、100%天然の液体です。そのため、つくられる量に限りがありますが、成分の効能に期待できます。アロマテラピーの際に使用され、その香りで心身ともにリラックスさせてくれます。また、アロマオイルと表記されているものは、100%天然ではなく、加工されているものです。ですが、香りを楽しむ程度なら安価で手に入る身近なものです。
タムシバとコブシの違い(見分け方)
タムシバと似ている植物にコブシがあげられます。
コブシとは?
タムシバと同じ、モクレン科モクレン属の木で、春に白い花を咲かせます。似たような木ですが、よく見ると違いがあります。また、コブシの名前は、握り拳のような形の実がなることが由来です。花言葉は『友情』『友愛』『愛らしさ』で、タムシバより多いです。
タムシバとコブシの見分け方はいくつかありますが、ここでは5つ紹介します。
見分け方① 花の下の葉っぱ
1番わかりやすい見分け方です。花のすぐ下に葉っぱが1枚あるものがコブシで、ないものがタムシバです。
タムシバ
コブシ
見分け方② 萼(がく)の色
萼(がく)の色が違います。萼(がく)とは、花弁の付け根に付いている小さな葉っぱのようなものです。萼(がく)が白色3枚あるものがタムシバで、緑色で小さく3枚あるのがコブシです。
タムシバ
コブシ
次ページは、実の形での見分け方!
見分け方③ 握り拳のような形の実
コブシの名前の由来にもなっている、握り拳のような形の実にも違いがあります。タムシバの実は、ねじ曲がることがなく、コブシより小さい実がなります。一方コブシの実は、不規則にねじ曲がり、いろんな形の実がなるのが特徴です。
タムシバ
コブシ
見分け方④ 葉っぱ
葉っぱの形と、葉の裏の色が違います。タムシバの葉っぱは、細長く真ん中が広い形をしていて、葉の裏が白色です。コブシの葉っぱは、タムシバより全体的に広く、先端に近い部分が広い形をしていて、葉の裏が緑色をしています。葉の形だけではわからないときは、葉の裏を見て比べるといいですね。
タムシバ
コブシ
見分け方⑤ 生息地
生えている場所や樹高にも違いがあります。タムシバは標高の高い場所に生えているのに対して、コブシは山地や平地によく見られます。樹高もタムシバは3〜10mで、コブシは5〜18mなのでコブシの方が大きいのが特徴です。登山などで見かけるのはタムシバ、街で見かけるのはコブシが一般的です。
タムシバ
コブシ
見分け方まとめ
簡単に表にまとめたので、比べてみましょう。
タムシバ | 見分け方 | コブシ |
なし | 花の下の葉っぱ | 1枚ある |
白色3枚 | 萼(がく) | 緑色小さい3枚 |
ねじ曲がらない コブシより小さい実 |
実 | 不規則にねじ曲がる いろんな形の実 |
真ん中が広い形 葉の裏が白色 |
葉っぱ | 先端の方が広い形 葉の裏が緑色 |
標高の高い場所 樹高3〜10m |
生息地 | 山地や平地 樹高5〜18m |
いかがですか? タムシバとコブシはよく似た木ですが、いくつかの違いがありましたね。木を見つけたら、花の下の葉っぱを確認してみましょう。その後、萼や葉の裏の色を見たらより確信がもてますね。8〜9月頃には実がつくので、コブシの名前の由来にもなっている、握り拳のような実を見つけてみてくださいね。
まとめ
タムシバは、生薬や香水にも使われるほど特徴的な香りをしている木です。その香りに誘われて、冬眠から目覚めたクマも花を食べにやってきます。エッセンシャルオイルは貴重で高価なものなので、見かけた際にはその香りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
出典:写真AC