はじめに
エストラゴンという名前はフランス語で、英語読みではタラゴンと呼ばれ、国内でも市販されているキク科ヨモギ属の多年草のハーブです。世界三大料理の1つといわれたフランス料理では、香辛料やソースにと幅広く利用されています。現在、ヘルシーな肉料理として人気が高まってきた、ジビエ料理にもエストラゴンが活用されています。ここではエストラゴンについてご紹介します。
エストラゴンってなに?
エストラゴンという名前を聞いただけでは、それがいったいどんなものなのかを想像できる人は少ないことでしょう。ではエストラゴンとは、どんなものでしょうか?エストラゴンとは、東アジア、ヨーロッパやロシアなどの料理はもちろん、現在ではあらゆる世界中の料理人から愛用されているハーブの一種です。
エストラゴンの歴史
紀元前500年頃のギリシャでは、エストラゴンは薬草として栽培されていました。医師であるピポクラテスは、毒蛇や狂犬に噛まれた人に毒消しの用途としてエストラゴンを用いたといわれています。エストラゴンの甘い柔らかな香りには、食欲増進を促す整腸効果があるといわれ、また鎮痛効果と癒し効果もあるので心臓や肝臓の増強作用も期待できるとされています。
エストラゴンの効能
エストラゴン(タラゴン)は、かつてアメリカ国立がん研究所(NCI)が、ガン予防を目的とするデザイナーフーズ計画として、ガン予防に有効な野菜と考えるとされました。約40種類のガン予防効果があるとされた食材の3群上位としては、タラゴン(エストラゴン)、カラスムギ、バジル、アサツキがあります。デザイナーフーズ計画はその後なくなっています。
エストラゴンとディルの違い
エストラゴン同様の効能があるといわれているハーブにディルがあります。ディルは、胃腸の働きを助けるための整腸作用があります。また気持ちを落ち着かせる鎮痛効果とリラックス効果があるといわれています。ディルはエストラゴンとは違い、乾燥させて利用することはできないハーブです。ディルは、スモークサーモンなどの前菜でよくみかけるハーブです。
エストラゴンの特徴
フランスなどのヨーロッパでは生のハーブを利用して、香辛料や食材、スープやドレッシング、ソースにと、さまざまな料理に含まれています。日本でのハーブの利用は最近注目を浴びてきており、エストラゴンなどはまだ栽培されている量が少ないため、殆どが葉を乾燥させたものやパウダー状のものが出回っています。
特徴①香り
フランス料理では香辛料として使用されるエストラゴンですが、セロリに似たスパイシーな清涼感があるうえに柔らかな甘い香りのあるエストラゴンには、食欲増進を誘う整腸効果があるとされてきました。また鎮痛効果や癒し効果により心臓・肝臓の増強効果があるといわれていますので、この点でもエストラゴンを料理に入れることは合理的だともいえるでしょう。
特徴②葉の形状と色
エストラゴンの原産地は、ロシアからヨーロッパだといわれています。多年草のエストラゴンの葉は小さく、先がとがっていて細長く、光沢のある濃い黄色が特徴だといえるでしょう。エストラゴンの花は灰緑色で、穂状に多数の小花を咲かせますが、残念ながらエストラゴンの花は滅多に咲くことが少ないためエストラゴンの増殖には挿し木や株分けなどで増殖されています。
エストラゴンの種類
エストラゴンの和名は「カワラヨモギ」といいます。エストラゴンは幅広い地域で栽培されている野性的なハーブだといわれている一方で、寒さや湿気には弱いという性質があります。種類としてはフレンチエストラゴンとロシアンエストラゴンに分かれており、気候のあった地域では繁殖が容易なハーブだとされています。
フレンチエストラゴン
フレンチエストラゴンの草丈は60cmぐらいとなります。ロシアンエストラゴンに比べて、フレンチエストラゴンは香りが強いというのが特徴だといわれています。殺菌や消臭を抑える作用があるといわれているエストラゴンには、魚や生肉を調理する際にも最適な食材の組合せとして、さまざまなシーンで利用されています。
ロシアンエストラゴン
ロシアンエストラゴンは160㎝ほどの草丈があります。香りはフレンチエストラゴンのほうが強いですが、エストラゴンのさまざまな作用や用途に関しては、どちらであっても大差がないといわれています。香りを重視されたい方には、ロシアンエストラゴンとミントマリーゴールドを併用することをおすすめします。
エストラゴンの用途
エストラゴンは、特にフランス料理には頻繁に使用されているハーブです。どんな料理でもアクセントとして利用できるため、エストラゴンは「魔法の竜」という異名があります。エストラゴンはみじん切りにして食材として、香辛料として料理にふりかけるなど便利に使えます。このほか、ソースやドレッシングなど、エストラゴンの用途は幅広く利用できることでしょう。
用途①臭み消し
野生動物の肉類は、ヘルシーで独特の味わいがあるといわれています。また家畜の種類によっては独特の臭みをもつものもあることでしょう。エストラゴンはそれら肉類が持つ臭みを消し、それぞれの肉の旨味を引き立たせる作用があります。また卵料理や野菜にもエストラゴンをソースやドレッシングとして利用することで、ひと味違う味覚が楽しめます。
エスカルゴ
代表的なフランス料理の一つともいえるエスカルゴは、エストラゴンがないと成り立たない料理であるといっても過言ではありません。エスカルゴに、エストラゴンのみじん切りを加え、ニンニクとバターで味付けされてた料理は、昔も今も愛され、受け継がれている料理のレシピだといえるでしょう。
サラダのドレッシング
おしゃれなフランス料理のレシピとして、最近人気が上昇しているのがエストラゴンを使ったドレッシングです。どんな料理やサラダにも合うエストラゴンドレッシングの作り方では、エストラゴンに、にんにくや玉ねぎのすりおろしたものをミックスしたり、他のハーブなどをエストラゴンビネガーに混ぜるなど、工夫しだいでさまざまな味わいが楽しめます。
タルタルソース
日本でもおなじみのタルタルソースは、新鮮な卵とビネガーなどの調味料を使用したマヨネーズソースに、ピクルスやハーブなどをミックスされたものです。揚げ物にも味を引き立たせるタルタルソースですが、フランスなどではエストラゴンが入ったものが主流となっています。国内では生のエストラゴンが入手しにくいため、パセリなどの他の食材が代用されています。
用途②香辛料
エストラゴン(タラゴン)は、香りが柔らかで料理のアクセントにもなるハーブです。ディルなどの生ハーブでしか使用できないということがないエストラゴンの葉は、乾燥させることで保管が容易となっています。生のエストラゴンの栽培が少ない日本では、エストラゴンの葉を乾燥させ、パウダー状し、または他のスパイスなどと混合したものが市販されています。
エストラゴンと粒マスタード
エストラゴンはどんな食材にも合いますので、ソースとしてもおいしくいただけます。エストラゴンと粒マスタードと合わせたものが市販されています。エストラゴンと粒マスタードのお互いの風味を損ねることはなく、魚はもちろん鳥などの肉料理の味付けにも便利に利用できることでしょう。
乾燥品
エストラゴンの葉は食用としても利用されますが、古代から鎮痛や整腸を整える効能があるといわれてきました。そのため、ハーブティーとしても楽しまれるのもよいでしょう。スープなどを調理するときも、乾燥したエストラゴンは便利だといえます。パッケージを開封した時から日が経つと香りが弱くなるといわれていますので注意しましょう。
タラゴンビネガー
エストラゴンは、フランス料理での香りづけにはなくてはならないハーブだといっても過言ではないでしょう。しかし、香りを基調とするフランス料理に限らず、エストラゴンは食欲増進や整腸効果があるため、欧米料理などなんでも合う食材です。エストラゴンの葉をビネガーに漬け込んだものをソースに調理し、アレンジすることができるので用途も豊富です。
まとめ
ジビエ料理に使用する野生動物の肉は、脂肪が少くヘルシーだと人気が高まってきていますが、野生独特の匂いがあるため調理に工夫をこらし美味しくする必要があります。エストラゴンは、この野生がもつ独特の匂いさえも消し、料理の味を引き立たせるハーブですので、これからもいろいろな料理でも活用でき、挑戦ができるハーブであるといえます。
出典:写真AC